犯罪に関する国際比較を目的として、「国際犯罪被害者調査」が国連地域間犯罪司法研究所(UNICRI)と国連薬物・犯罪局(UNODC)によって実施されている。すでにこの調査によるOECD諸国間の犯罪率の比較を図録2788で紹介しており、調査の詳細についてもそこでふれている。ここでは同調査の対象犯罪として取り上げられている主要な犯罪の被害者率を日本とOECD平均について、グラフにあらわした(データはOECD Factbook 2009による)。

 犯罪の各国比較は、犯罪に対する法制度や統計制度の違いから、難しい。この調査は、同じ調査票で各国国民にそれぞれの犯罪の被害にあったかを直接きく方式で行われている。

 対象となった12犯罪のうち最も被害者率が高いのは、日本では、自転車泥棒であり、5.1%、すなわち20人に1人の割合である。次ぎに多いのは、消費者被害(詐欺等)の1.9%であり、女性に対する性犯罪が1.3%、車上荒らしが1.1%で続いている。

 OECD平均では、消費者被害が10.4%と格段に多く、在来型犯罪では、私物盗難(置き引きなど)・すり被害が3.7%で最も多くなっている。途上国ばかりでなく欧米への海外旅行においても、日本国内の習慣のままうっかりしていて置き引き・ひったくりにあった経験をもつ者は多いが、日本0.3%と比較して、フランス3.3%、ドイツ3.0%、米国4.8%と日本と海外では私物盗難・すり被害率の違いは大きいのである。

 OECD平均で私物盗難・すりに次いで多い犯罪は、車上荒らしであり、さらに自転車泥棒、暴行・脅迫、汚職、女性に対する性犯罪と続いている。

 日本がOECD平均を上回っているのは、自転車泥棒とオートバイ泥棒の2犯罪のみであり、他はいずれもOECD平均を下回っている。

 ただし、女性に対する性犯罪については、他の犯罪と比較してOECD平均との差が余り大きくない点が目立っている。

 自転車泥棒やオートバイ泥棒が日本で多いのは、自転車やオートバイの普及台数自体が多いからである。自転車普及台数と自転車泥棒被害率とが見事なまでに正の相関を示している図を図録6371に掲げたので参照されたい。オートバイについても同様の相関が示される(図録6376)。クルマ(乗用車)の場合は相関はそう明かではない(図録6375)。

 接触型犯罪の各国比較については図録2788d、消費者被害、汚職の各国比較については、それぞれ図録2788e2788fを参照。泥棒(侵入窃盗、私物盗難・すり、車上荒らし)については図録2788g参照。

(2009年4月14日収録、11月27日自転車普及台数との相関図への参照情報追加、2015年8月27日調査票を確認し、窃盗未遂、恐喝を侵入未遂、脅迫に用語変更、(注)の補訂、8月29日置き引きを私物盗難に用語変更)


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