ある国の社会実情を理解する基本は男女別年齢別人口の分布であり、従来からこの点については人口ピラミッドで表現されている。以前に比べると我が国にとって近くて親しい国になった韓国について人口ピラミッドを図録として収録した。参照のために日本の人口ピラミッドも付した。北朝鮮の人口ピラミッドについては図録8901参照。

 韓国の男女別5歳階級別人口の分布で目立っているのは、2020年の状況では、男女ともに50歳代前半の人口が最も多い点である。

 日本でも40歳代後半の人口は団塊ジュニア層としてかなり人口の多い層を形成しているが、最も多いのは、団塊世代の70歳代前半であり、それ以上の年代の人口も韓国とは比べものにならないほど相対的に多い。

 高齢化比率(65歳以上人口比率)でも韓国は15.8%と日本の28.7%と比較して約半分である。

 こうした違いが生じたのは、日本では敗戦後の一時期出生率が大きく上昇し団塊の世代を生んだもののその後急速に出生率が低下したのに対して、韓国の場合は、最近は日本以上に出生率が低下する事態が生じているものの戦後長い間非常に高い出生率が継続していたためである(図録1550参照)。

 こうした人口分布上の特性から、日本では最近まで団塊の世代以上が現役世代として企業や官僚組織、各種団体で大きな力を有していたのに対して、韓国では、これらの世代の数的なウェイトは比較にならないほど小さいため、40歳代〜50歳代の中堅世代にかなりの程度社会の実権があるのではないかと想像される。

 韓国では、97年のアジア通貨危機により、それまでの国際エリート、財閥による国づくりが挫折し、その後大統領に就任した金大中は、経済再建の柱としてIT普及を掲げて大きな投資を行った結果、ブロードバンド世界一という状況を生みだした(図録6300参照)。これを支えたのがいわゆる386世代という2010年には40歳代から50歳代になっている世代である(1990年代に「30」歳代、「80」年代に大学生で、「60」年代生まれのインテルの386MPUに馴染んだコンピュータ世代のこと。日本の全共闘世代より10年若い)。ネティズンとしての自負をもった386世代は経済構造の変化とともに社会の実権を握り、政治の世界では廬武鉉大統領、ウリ党の支持基盤となった(呉善花「「ウリナラ民族主義」に呑み込まれた韓国」中央公論2004.6参照)。また最近では日韓のテレビ産業、IC産業比較から、韓国の意思決定のスピードが日本を大きく上回る点が指摘されることが多い。

 日本より相対的に若い人口構成が韓国におけるこうした経済社会、政治、産業の変化の早さの基礎となっていると考えられる。なにしろ、2004年の韓国第17回総選挙においては、有権者数では40歳代以下が69.9%であり、当選者の60%が40歳代なのである(呉2004)。日本で韓国と同じような手法により事を運ぶにはよっぽどの工夫がいる。

 なお、人口ピラミッドとともに描くことが出来る年齢別の性比をグラフにしてみると以下の通りである。一般に性比は出生時は106と男児の方が少し多いが年数を加え高齢化するにつれ男性の死亡率が相対的に高くなり性比は低下する。日本の年齢別性比が典型である。

 韓国では、急速な出生率の低下と平行して、年少人口の性比が20代で1割をこえるにいたっている点が目立つ。儒教的伝統の中で一人っ子が増加した結果、生み分けが行われていたのではないかと想像される。嫁不足が顕在化しつつあるとも予想され、韓国ドラマで女性優位の内容が目立つのも年頃の男女のおいて男が多いからではないかと考えられる。

 もっとも10歳以下ではなお性比が高いものの一時期ほどではない。日本と同じようにむしろ女の子の方がよいという考え方も拡がってきているのではないかと想像される(図録2477参照)。最近の出生性比の世界ランキングにおける韓国の位置は下図参照。

 なお、韓国の場合、70歳代より上の世代で男が日本より相対的にかなり少なくなっている。これは1950〜53年の朝鮮戦争が半島全土で過酷に戦われて軍人、民間人を問わず犠牲者が多かったことが影響していると考えられる(図録5228、図録8870参照)。


(中国の人口ピラミッド、性比は図録8220参照)

(2004年8月22日収録、2005年4月30日性比追加、2012年4月28日更新、2017年4月16日出生性比ランキング図、2019年6月11日更新、2023年1月21日更新)


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