前者については、家計消費の中の「被服・履物」への支出比率で見ることができる。各国GDP統計はこんなデータを示している。 被服・履物の消費支出割合〜先進国のみ〜(2010年)
これではイタリアが一番おしゃれ、2位が英国で、その他ヨーロッパ諸国が続く。日本はシンガポールなどと並んでかなり下位となる。 そして、後者の身の回りの用事の時間にかける時間の長さでおしゃれ度を見たものを上のグラフに掲げた。 身の回りの用事の内訳は、「洗顔、入浴、トイレ、身じたく、着替え、化粧、整髪、ひげそり、理・美容室でのパーマ・カットなど」である。ここでは国際比較のため療養静養もこれに加えている。この中にはトイレのような生理的な部分とおしゃれや清潔好きといった文化的な部分とが両方含まれている。時系列的な変化や各国の違いは、「おしゃれ」など文化的な部分の差異が大きな影響を与えていると考えられる。そこで成人女性の「身の回りの用事時間」の長短をおしゃれ国ランキングの指標とした。 データは1985〜1990年と少し古いが、その後も日本人女性の身の回りの用事時間は増える一方であるので(図録2325)、差はさらに広がっている可能性が高い。 日本は、韓国と並んで、おしゃれ国ランキングは最上位にある。特に20代女性の他国との差は著しい。日韓に続いて、英国、米国が来ており、オランダ、カナダがこれに次ぎ、フィンランド、デンマークといった北欧の国はおしゃれ度が低い。 以下に成人女性の年齢別の身の回りの用事時間を比較したグラフを掲げた。これを見ると、@各年代で日韓が欧米を上回っている点、A日本は韓国と比べ中年女性のおしゃれ度が高い点、B欧米では年代による差が小さいのに対して(20歳代と50歳代が同じ53分)、日韓では20代で特におしゃれ度が高い点などが目立っている。 日韓を比較すると、この調査が行われた1990年の段階では、韓国はまだ日本より経済発展度がかなり低かった(韓国のOECD加盟は1996年)。30代や40代の女性の身の回りの用事時間は日本の方が先行して高くなっていたといえよう。この段階でも20代女性の身の回りの用事時間はほぼ日本に匹敵していたということは、それだけ韓国の若い女性のおしゃれにかける情熱は高かった(高い)といえよう(韓国には入浴に関し湯船につかる習慣がなく日本女性の方が入浴時間は長いと思われるだけになおさら)。この点については美容整形の国際比較についての図録2485参照。 被服・履物への支出のおしゃれ度がそう高くなかった点を考え合わせると、日本(及び韓国)の女性は、グレードの高い衣服を身にまとうというより、身体に磨きをかけ(スリムな身体を維持し)、どう美しくおしゃれに着こなすかに力を入れているということも言えよう。日本と韓国では肥満女性が他の先進国と比較してずっと少ない点については図録2220参照。日本女性のスリム度が高くなってきている点については図録2200参照。
なお、時点の新しい生活時間一般の欧米との比較は、図録2322参照(ここでは身の回りの用事時間が食事時間と一緒になっていたのでおしゃれ度が比較が不可能だった)。また、平日と土日のおしゃれ時間の差が余りない点については図録2378参照。 (2011年9月19日収録、2013年8月12日被服履物費更新)
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