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 男女別年齢別の体格指数(BMI)の推移は非常に興味深い日本人の変化を示している。BMIは体重(kg)を身長(m)で2回割ると得られる指数である。

 年齢別の分析の前に、年齢調整BMIの推移によって、男女別の大きな変化を見ておこう(下図を参照)。


 男性は一貫して太めになって来ている。女性は1970年代前半、高度成長期が終わるとそれまでの体格充実の方向から痩せの方向へと変化し、その後も一貫してスリム化の方向をたどって来ている。戦後から高度成長期までは男性の方が女性より痩せていた。食料や保健が十分でなかった時代には男性は出産の安全を考えて女性に栄養を多く分けていたといえよう。男女が明確に逆転したのは1983年である。

 日本人の体格の変化が日本だけの状況かを探るため、世界各国の男女別の年齢調整BMIの推移を図録2200cに掲げた。

 次に本題の年齢別の推移に移ろう。

 戦後直後には20歳以上の男女の体格は年齢による差が余りなく、おおむねBMIが21〜22程度であった。

 戦後50年の体格の変化は男女によって大きく異なっている。

 男は、各年齢とも、太っていった。40歳代が先行していたが、現在では30歳以上の各年齢ともBMIが23の後半あるいは24以上となっており、太りすぎが懸念される。唯一、17歳、20歳代は体格はよくなったが太りすぎというほどではない。

 戦後日本の文明の姿を特徴的に示しているのは女の年齢別の動きである。

 まず、戦後直後には、20歳代の若い女性がもっとも体格がよく、60歳代の高齢者層はもっともやせていた点を確認しておこう。中高年が若年層に優先的に栄養を分けていたとも考えられる。

 現在では、まったく逆であり、20歳代はどんどん痩せていきもっとも痩せた年齢となり、60歳代はどんどん太っていったためもっとも太った年齢となりBMIで3以上の差が生じている。吉行淳之介のエッセイに「若い女性は決まって可愛いのに、我々の女房達はいったいどこから来たんだろう」というセリフがあるが、この体格の大きな差は驚異的である。年齢別の体格の差は例えば年齢別の衣服の多様性などにつながっていると考えられる。

 女性20歳代の痩せへの転換は高度成長期にはじまっており、その後も一貫して痩せの方向へ進んだ。いわゆるダイエット・ブームである。17歳(高校3年生)の体格は痩せでないので、20歳代にかけて痩せていくのである。30歳代、40歳代も10年、あるいは20年遅れて、痩せへの方向に転じている。40歳前後(35〜44歳)の女性を意味するアラフォー世代という言葉が2007年から使われるようになったが、40歳代女性の痩身志向が最近特に目立つ。あたかも30歳代と同じ体型を維持しようとしているように見える。さらに40歳代ばかりでなく50〜60歳代でも痩身化への反転が起こっているようにみえる。

 この傾向を、やせ過ぎ女性の割合から見た図録を2202に掲げた。また世代別のおしゃれ時間とパラレルである点については図録2329dを参照。また、時代変化の例として、日本人ミス・ユニバース女王のBMIが1959年は19.5と「標準」だったのに対し、2007年には17.6と「やせ」の領域に入った点については図録9440の女王写真参照。

 若い女性がこれだけ痩せてきている背景には精神的な要因を想定するしかないが、いいわるいは別にして、精神が肉体にこれだけの影響を及ぼしうるのである。しかし、何故、男性はまったく異なるパターンをたどっているのであろうか。精神と肉体の関係についていろいろ考えさせる事実である。

 日本女性が10代から20代にかけて痩せることが他国と比較して特異である点が研究者の研究結果から明らかになったと毎日新聞が以下のように報じた(2009年4月7日配信)。

「日本人女性の肥満度を示す体格指数(BMI)が、10代後半から20代にかけて減少に転じ、他国では見られない特有の傾向であることが、菅原歩美・筑波大研究員(内分泌代謝科)らのチームの研究で分かった。米疫学誌の5月号に発表する。菅原さんは「やせていることのイメージは良いが、実際は健康や出産への悪影響が指摘されている」と話す。

 一般に、BMIは6歳ごろから増加する。日本の国民健康・栄養調査と、同様の調査を持つ米国、韓国のデータを調べたところ、米国男女と韓国、日本の男性は、10歳以降はBMIが増え続け、韓国女性は18歳ごろ増加が止まり、20代は横ばいだった。一方、日本女性は、15歳ごろ増加が止まり、20代は年齢とともに減少した。

 また、58年以降の日本女性のBMIを解析した結果、50〜59年生まれの女性が10代後半から20代前半だった70年ごろ、一斉にBMIが減り始めた。

 若い女性のやせは、摂食障害やうつ傾向、骨密度の低下を起こしやすく、出産時に低出生体重児になる確率が高い。曽根博仁・同大教授は「やせることを勧める風潮が強いが、若い女性のやせは深刻だ。70年ごろを境にやせ願望が強まった背景を探りたい」と話す。」

 なお、2000年から政府がやせ過ぎ女性の比率の目標値を掲げて取り組んだため(図録2202)、あるいはやせ過ぎの弊害への認識が高まったためか、20代女性のBMIは最近は反転上昇し、バブル期以前の水準まで回復してきているようにも見える。30代女性も同様だろう。

 男女30歳代の平均身長と平均体重の動きは図録2182参照。女性の痩せ傾向は身長の伸びに対して体重が横ばいであることから生じていることがうかがえる。

 なお、肥満比率をBMIが30を超える者の比率として算出した結果を日本と諸外国とで比較したグラフを図録2220に掲げたので参照されたい。さらに、BMI18.5未満をやせ過ぎとし各国比較を行った図を図録2205に掲げたので参照されたい。

(2004年9月28日・2005年9月30日データ更新・10月4日データ訂正、2006年10月31日・2008年3月5日更新、2009年4月8日毎日記事引用、2010年7月22日更新、2011年6月25日更新、2012年2月1日更新、2012年6月28日更新、2013年5月27日更新、2014年6月23日更新、2015年4月2日更新、2016年5月22日更新、2017年3月22日更新、2018年2月7日更新、2月9日年齢調整BMIの推移、12月11日更新、2020年4月18日更新、12月30日更新、2021年4月23日表示選択で年齢別推移図)


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