国民の生活時間の変化の中で「身の回りの用事」の時間の増加が最も目立っているという点については図録2320でふれた。そして、トイレなど生理的な時間がそうのびていく筈もないから、身の回りの用事時間の長短で「おしゃれ時間」の長短が測れるのではないかという点については、図録2325(時系列)、図録7320(都道府県)を見られたい。ここでは、年代別の変化を1981年から5年おきに追ったグラフを掲げた。

 各世代の女性のおしゃれ時間(身の回りの用事時間)が長くなってきていることが明瞭である。

 若い世代、特に20代でおしゃれ時間が長く、中年で一度短くなり、60代以降の高齢者ほど、再度、こちらはおしゃれだけでなく入浴などの動作に時間がかかることにより、身の回りの用事時間が長くなるという世代構造の基本は変わっていない。

 5年ごとのテンポについては、50代以上が2001年〜2006年に伸びが止まったのを除くと2011年前では、ほぼ、全年齢で上昇傾向をたどっていた。ところが2011〜16年には、30代以下で縮小、40代〜60代前半で拡大と対照的な動きになっている。おしゃれ時間の伸びの最前線が30代から40代、さらに50代へシフトしており、アラフォー、美魔女といった流行語が登場した社会風潮がうかがわれる。

 2021年も基本的には上昇傾向にあるが、20代後半と30代ではこれまで最多だった2011年と比較して、むしろ、低下している。これはコロナ禍の影響でリモートワークする者の割合が特にこの年代で多かったためと考えられる(下図参照)。通勤が減ったのでその分、おしゃれに要する時間も減ったのである。


 1981年からコロナ前の2016年までの25年間の変化を見てみると、最も上昇幅が大きいのは、70代以上の37分増であり、これに40代の32分増、50代の29分増が続いている。かつて家事に追われて身のまわりの用事の時間が最も短かった40代〜50代が今では前後の世代よりその時間が長くなり、世代構造の基本を崩している点に時代の変化を感じざるをえない。

 社会生活基本調査ではなくNHKの国民生活時間調査で同じことを確認したデータによるダイヤモンド・オンラインの連載記事「日本の女性がどんどんキレイになっている理由をデータで確かめる」(2017.3.29)も参照されたい。

 こうした動きが、女性の体格(BMI)のスリム化の世代別進展とパラレルである点は図録2200参照。

 次に、参考までに、男性の方の身の回りの用事に関する世代別の時間推移の図を下に掲げた。


 男性の場合は、女性のように20代前半のピークがない点からおしゃれとしての要素は女性よりは薄いと考えられる。しかし、女性と同じように所要時間は全ての世代で増加している。若い世代では、女性同様、身づくろいに時間をかけるようになったのであろうし、30代以上では、配偶者の女性の入浴時間(一週間の回数が増えれば週平均も増える)の増加と連動している側面も大きいのではないかと、想像される。

 個人的な感想をいえば、かみさんや子どもが清潔好きにどんどんなってきたのに付き合って、洗濯でも入浴でも、かつてと比べると、不必要な程度まで頻度が高くなっており、私がムダだと言うと臭いと対抗され、なすすべがないというのが実態である。

 なお、2021年については、コロナ禍で通勤が減っているにもかかわらず、男性の身の回りの用事時間は各年代でかなり増加となっており、女性の動きと比較しても違いが目立っている。「美容男子」という言葉をはじめ、メンズコスメやメンズ脱毛なども浸透してきて、男性でも美容を意識する割合が上昇していると言われるが、まさにそれをデータで裏づける結果と言えよう。

 結婚相手の条件として男性だけでなく女性も「容姿」を重視するようになっていることが明らかになっている(図録2406参照)。このことも美容男子増加の一因だろう。

 60代前半の高い上昇幅にはこの年代の就業率の上昇が反映していると思われる(図録1339参照)。職の保持や再就職のため若く見えようと美容整形に走る中高年もいるときく。

(2014年10月27日収録、2017年9月25日更新、2022年10月29日更新)


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