ピューリサーチセンターでは2024年春に世界における様々な宗教的・霊的な信念や慣習の普及状況を探る調査を36か国で実施している。この調査の報告書のテーマのひとつは、世界的に信仰心が弱まる一方で、霊的感度は高まっている傾向の指摘である。報告書では、これを年齢別のギャップとしてあらわしている。
信仰心(宗教心)と霊的感度の国別比較についてはISSP調査によって図録9527でもふれたので参照されたい。 信仰心や霊的感度の指標であるが、報告書にならって以下を取り上げた。 「信仰心」については、神を信じるか、あるいは宗教儀式に参加しているかなどの指標がありうるが、ここでは、宗教が生きていく上で非常に重要と答えた人も割合を採っている。「霊的感度」についても、死後の世界を信じるか、輪廻を信じるかなどの指標がありうるが、ここでは、動物が魂・霊力(spirits or spiritual energies)をもっていると答えた人の割合を採っている。 18-34歳を若年層、35-49歳を中年層、50歳以上を高齢層と呼んでおこう。信仰心を示した左図と霊的感度を示した右図のどちらも中年層の値の高い順に国を並べた。 世界的に信仰心が弱くなっていることは、左図のほとんどの国で高齢層より若年層の方が宗教を重要視していないことから明らかである。 ただし、例外的に高齢層より若年層の方が宗教を重視している人が多い国が3つある。イスラエルと英国とフランスである。パレスチナ紛争があるイスラエルは別にして、そもそも信仰心が低くなっていた英国とフランスについて、若年層の値が高くなっているのは宗教回帰現象が生じているためと言えるかもしれない。 なお、左図の国順を見ると、信仰心が高い方から低い方に大きな差があり、大陸別には、ほぼ、アフリカ、アジア、南米、米国、ヨーロッパ、東アジアの順に並んでいる。日本は最も信仰心が低い国となっている。 信仰心とは逆に霊的感度については、右図を見ると、高齢層と比較して若年層ほど値が高くなっており、世界的に霊的な感応度が高まっていることが分かる。左図と異なり、こちらの方は、若年層から高齢層への世代別の傾向がすべての国できれいに揃っている。例外は日本の若年層が中年層より低くなっているだけである。 日本については、信仰心は最低レベルであったが、霊的感度はむしろ高い方に属している。もっとも高齢層はむしろ低い方だが。 日本のデータはないが死後の世界があると思うのは若年層の方が高齢層より多い国が多い(米国、カナダは逆だが)のも霊的感度の傾向と言えよう。 ![]() 輪廻(reincarnation、命あるものが何度も転生し、人だけでなく動物なども含めた生類として生まれ変わること)を信じている人の割合の年齢別の傾向について図録9546から以下に再録したが、動物に魂・霊力を感じるのと同じように若年層の方が輪廻を信じている者が多い傾向が認められる。 ![]() (2025年8月21日収録)
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