特定の宗教を信じていなくとも聖なるものや霊的なものには関心をもつ場合がある。そうした人の割合を国際比較調査で比べた結果を見てみよう。すでに、図録3971d「無宗教だが宗教心は大切にする日本人」でこの点を調べているが、別の調査からも同様の結果をうかがうことができるのである。

 宗教をテーマとする2018年のISSP調査(注)の結果から、この点に関する設問の選択肢と各選択肢の回答率の高い上位国の結果を掲げた。 

(注)1984年に発足した国際比較調査グループISSP(International Social Survey Programme)は約40の国と地域の研究機関が毎年、共通の調査票を使って世論調査を実施している。「政府の役割」、「宗教」、「社会的不平等」など同じテーマの調査を10年毎に実施するのが特徴で、国同士の比較とともに過去の結果と比較する時系列変化の把握も目的としている。各国とも原則18歳以上の全国の住民を母集団とし、無作為抽出による1,400人程度、最低1,000人のサンプルで調査を行っている。

 選択肢1の英語原文は以下である。

 I follow a religion and consider myself to be a spiritual person interested in the sacred or the supernatural.

 日本は宗教を信仰する割合(選択肢1+2)が世界1低い点、及び選択肢3、すなわち特定の宗教は信じていないが、霊的なものに関心がある人の割合が世界1多い点が目立っている。日本人は「宗教的信仰をもたないが霊的なメンタリティを有する国民」だと言えよう。

 無宗教だが霊的な国民が多く国として日本に次いでいるのは、ニュージーランド、チリ、フィンランド、スロベニアといった国々である。

 逆にそうした国民の少ないのは、リトアニア、タイ、フィリピン、南アフリカといった国である。

 リトアニア、タイは選択肢2、すなわち宗教は信じるが霊的ではない国民が多いからであり、フィリピン、南アフリカは宗教を信じており、同時に霊的でもある国民が多いからである。

 同じ儒教国である韓国も8.1%と日本とは対照的にこの割合が小さくなっている。これは宗教を信じるにせよ信じないにせよ、霊的なものには関心がない国民が多いからである。孔子は「鬼神を敬して之れを遠ざく」と言い神や先祖の霊に対しては距離をおいたが、それを文字通りに信奉している点で儒教に忠実と言えるかもしれない。日本と韓国は同じく儒教国の伝統を有するとはいえ、宗教観がこのように大きく異なっているのである(この点については図録9525、図録9528参照)。

 このほか、霊的なものへの無関心という点ではブルガリアが目立っている。

 日本の結果について年齢別の結果を見てみると、若いほど宗教を信仰している者は少ないが、霊的なものへの関心は年齢に関わりなく4割前後を占めている。


 ISSP調査では、10年前にも同じ設問で調査を行っているので、日本について、回答結果の変化を下図に示した(わからない、無回答を含む総数に占める割合なので冒頭図とは値は一致しない)。


 宗教を信じる(1+2)は24.9%から19.8%へと5.1%ポイントの減、霊的なものに関心(1+3)は34.4%から28.4%へと6.0%ポイントの減とどちらも減少している点が目立っている。

 各国の分布の全体像を得るための参考図として、下に、2018年結果について、宗教を信じる(1+2)をX軸、霊的なものに関心(1+3)をY軸にとった散布図を掲載した。日本はもっとも無宗教の国だが霊的なものへの関心は中間の位置にあることがうかがえると思う。

 韓国の位置が日本とは対照的である点、ジョージアや米国の国民の霊的感度がけっこう高い点なども目立っている。


(2022年8月19日収録、8月20日日本の年齢別結果、2024年12月13日グラフ形式改良)


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