インド起源の思想である輪廻(reincarnation、命あるものが何度も転生し、人だけでなく動物なども含めた生類として生まれ変わること)は、仏教やヒンズー教で主流の教えである。現代においても仏教やヒンズー教の国で輪廻を信じている人が多い。 他方、イスラム教は輪廻を信じていない宗教である。 種々の宗派がそろっているスリランカでは、仏教徒の70%、ヒンズー教徒の63%が輪廻思想を抱いているのに対して、キリスト教徒は47%に止まり、イスラム教徒では17%しか輪廻を信じていない。 仏教国であるスリランカやタイではそれぞれ国民の62%、48%が輪廻を信じている。ヒンズー教の国であるインドでは48%が輪廻を信じている。 日本では仏教徒の47%が信じているほか、無宗教の者の37%もが信じており、国民の40%が輪廻を信じているという結果である(注)。 (注)地元の女性友人グループの生まれ変わりを描いたドラマ「ブラッシュアップライフ」(脚本バカリズム、2023年)が話題となった。日本には、徳を積むことで、来世の輪廻におけるより良い境遇を得られる、あるいは輪廻からの脱却(解脱)に近づくという考え方があるが、ドラマでは、前者が前提となっていた。 ただし、仏教徒もヒンズー教徒も輪廻を信じている者が半数に過ぎない場合も多く、皆が信じている訳でもない点には注意しておく必要がある。 キリスト教徒の場合、ケニヤ、ナイジェリア、ガーナと言ったアフリカ諸国では半分以上が輪廻を信じており、フィリピンや中南米でも4割台の人が信じている国があるのに対して、北米やヨーロッパなどその他の地域ではキリスト教徒で輪廻を信じている者は少ない。スウェーデンでは10%に止まり、ブラジルでも27%である。 本来はイスラム教と同様、キリスト教には輪廻の考え方はないはずであるが、輪廻を信じているキリスト教徒は、日本の神仏習合のように、キリスト教伝来以前からの土俗的な信仰の影響を深く受けているのだろう。 年齢間の差が統計的に有意な結果の国について、年齢別の輪廻思想のデータが原資料に掲げられているので、これを下図に示した・ ![]() まず、目立っているのは、例外の1か国を除いて、信仰を抱く者が少ない若年層の方が進行を抱く者が多い高齢者より輪廻を信じている者が多いという点である。 これは、世界的な霊的感受性の高まりを示しており、また、全世界的な啓示宗教から自然宗教への回帰現象のあらわれと見ることもできよう(図録3971a)。 例外の1か国はアフリカのナイジェリアである。ナイジェリアでは伝統宗教の考え方として輪廻思想があると考えられる。 ページ末尾には調査結果から対象国の無宗教を含む宗教構成を掲げておいた。ほとんどの国が、何らかの宗教を多数としているが、シンガポールは中華系、マレー系、インド系の住民が暮らし、宗教においても多様性が目立っている。無宗教比率がもっとも高いのは日本である。 ![]() 調査対象国は35か国、すなわち図の順に、ケニア、スリランカ、ガーナ、ナイジェリア、インド、タイ、南アフリカ、フィリピン、チリ、コロンビア、アルゼンチン、メキシコ、ペルー、シンガポール、日本、イスラエル、ハンガリー、ブラジル、米国、オーストラリア、カナダ、英国、イタリア、スペイン、フランス、ドイツ、ギリシャ、韓国、オランダ、マレーシア、バングラデシュ、インドネシア、スウェーデン、ポーランド、トルコである。 (2025年7月12日収録)
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