世界数十カ国の大学・研究機関の研究グループが参加し、共通の調査票で各国国民の意識を調べ相互に比較する「世界価値観調査」が1981年から、また1990年からは5年ごとに行われている。各国毎に全国の18歳以上の男女1,000〜2,000サンプル程度の回収を基本とした個人単位の意識調査である。ただし、最新年調査は前回から5年以上経過した2017〜2020年であった。

 ここでは、世界各国の宗教構成をこの調査の結果から図示した。調査方法による制約を考慮に入れて結果を判断することが必要であるが、「無宗教(宗教を持っていない)」という区分があるのは、宗教団体の所属人数などからまとめた調査結果に比べて、新規の知見を与えるものであるし、また、結果から見ると宗教種類ごとの構成も調査対象数が少ない割に全国的な状況がかなり反映されていると思われる。

 日本の特徴については、まず、無宗教が63.0%と6割り以上を占めている点が目立っている。世界的には、社会主義国・旧社会主義国で無宗教の比率は高く、第1位は中国の86.1%、第2位はエストニアの80.7%、第3位はチェコの76.0%となっている。社会主義国・旧社会主義国以外では、日本の割合が一番高く、オランダの62.2%%が日本医に次ぐ地位を占めている。

 日本の特徴の第2は、仏教が28.4%と多い点である。これは、図中の国の中では8〜9割を占めるタイ、ミャンマーに次いで多い。神道は「その他」に入ると考えられるが、2.8%とそれほど多くない。

 日中韓、及び中国の影響が大きかったという点で共通のベトナムを含む東アジアの宗教的特徴は、無宗教の比率が高い点と仏教の比率が高い点であり、世界の中でも特異なパターンを示している。

 韓国も日本と同様、社会主義国・旧社会主義国以外であるのに無宗教が64.0%と多い。もっとも、韓国の場合は、長らく英国統治下になった香港と並んでキリスト教の信者が多い点で他の東アジアと異なっている。下図のように韓国のキリスト教は第二次世界大戦後に大きく拡大したものである(原資料はここ)。


 台湾は道教など現世利益的な信仰が多く、そのため「その他」が62.2%と世界の中でも例外的に多くなっている。私的な経験では台湾の寺院で願掛けくじを良い結果が出るまで引き直せたり、お供え物に霊力をうつらせて自宅に持ち帰るのが慣例となっているのを知って驚いたことを思い出す(図録9530参照)。

 その他では、インドネシア、マレーシアなどの東南アジア、バングラデシュんど南アジア、そして中東、中央アジアなどでイスラム教が大きなシェアを占めている。イスラム教は、この他、エジプト、チュニジア、ナイジェリア等のアフリカ諸国、あるいはそれほど大きなシェアでないが東欧にも広がっている。

 西欧諸国でもイスラム教の比率が3〜5%程度となっている。これは更新前の2000年期調査の際には目立たなかった特徴である。この10数年の間にイスラム教を信じる移民が西欧にも多く流入したためである。

 中東に位置するとはいえ、イスラエルは特殊であり、ユダヤ教が85.3%と多数を占める。この他、ユダヤ教は米国で1.3%とイスラエルに次ぐシェアをもっている(図録9038参照)。

 ヨーロッパ、大洋州、北米、中南米では、国によって無宗教がかなりのシェアを占めているのを除くと、全体的には、キリスト教の勢力が強い。宗派的には、フランス、南欧や中南米で「カトリック」が多く、英米、ドイツ、北欧では、「プロテスタント」が多く、東欧、ロシア、旧ソ連諸国で、「キリスト教(その他)」に区分される「ギリシャ正教」が多くなっている。ロシア人の宗派としてギリシャ正教が大きく増えている点については図録9458【コラム】「ロシア人の揺れる価値観」参照。

 アフリカでは、イスラム教、キリスト教の影響が強いが、旧来の民俗宗教もかなりの勢力を保持していると考えられ、南アフリカでは「その他」のシェアがかなりある。

 宗教観・神観についての国際比較、日韓比較については、図録9528に掲載した。

 また、日本国内の信仰の地域分布については図録7770参照。ここでは無宗教が宗教史上の新興地域である東日本で多いことが示されている。

(2006年6月9日収録、2014年9月3日韓国キリスト教の推移追加、2021年2月1日更新)


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