東北大の研究チームは古文書の調査と遺伝子解析により、約3000年前に中国から九州に渡来し、日本社会の発展と歩調を合わせるように時代ごとの海上交通ルートなどをたどって生息域を東へと拡大したことを突き止めた(東北大学プレスリリース)。 以下、原文の順序を多少入れ替えたが、この研究を紹介した東京新聞(2023年12月16日夕刊)からの引用である。 「東北大チームが描いた渡来と分布拡大の歴史はこうだ。縄文時代から弥生時代への変わり目に中国から長崎県の五島列島経由で九州本島に到達。約二千年前には古代出雲(島根県)に進み中国地方に拡大した。同じころ瀬戸内海を渡って四国にも進出した。 長きにわたり都が置かれた近畿地方には遅くとも平安時代末に定着。平安時代の文献でトカゲという言葉が「戸の陰にいるもの」を意味し、ヤモリを指していた可能性があるという。 鎌倉時代以降は、幕府が置かれた関東と近畿の都をつなぐ東海道の往来が移動を助け、徐々に東海地方へ広がった。江戸時代の薬学書「本朝食鑑」には「西日本に生息するが関東ではみられない」との記述があり、西から東への生息域拡大が示唆された。 富士山など険しい山に阻まれたのか、関東への定着は江戸時代後期から明治時代初期。鉄道の開通が自然の障壁を乗り越える助けになった可能性がある。 温暖な地域を好むため東北ではほとんど見られないが、山形県酒田市周辺に飛び地的に生息することが知られている。東北大の研究チームは、戦国時代に北陸に移住したニホンヤモリが北前船に乗って酒田にたどり着いたとみている」。 北前船ルートは図中の黄色の「400年前」、「(8)西廻り海運」として表示されている。北前船ルートについては図録7809、図録7810参照。 以下のような事例にも見られる通り、島国日本の生活領域や経済領域の拡大は弥生時代から近世まで海上交通を中心とした輸送ルートの展開に沿って基本的には西から東へ歴史的に拡大してきた。 そしてここでは、外来生物の定着もニホンヤモリの例で同様の分布拡大が確認された格好である。 (2023年2月23日収録)
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