データはNHKが行った県民意識調査の第1回(1978年)の調査結果である。この設問は2回目(1996年)には調査票から外されたので、少し古いが第1回の結果を示した。 図に示した8つの選択肢の中では、概して、「気候」や「自然の風景や名所」をあげる県が多く、「人情」や「歴史や文化財」をあげる県が次に多かった。それ以外の項目は全体としては回答者がそう多くない。 トップの地域は、気候は「静岡」、風景・名所は「長野」、人情は「新潟」、歴史・文化財は「奈良」、行事・芸能は「青森」、食べものは「富山」、文化と活気は「東京」である。文化と活気で「東京」がダブっているのを除くと、ダブりはなく、それぞれの地域のお国自慢がよくあらわれていると思われる。 それぞれの選択肢についての特徴以下である。 @気候 気候をあげた者が多かった県は、静岡、岡山、千葉、香川、愛媛といった太平洋や瀬戸内海に面した暖かい地域である。その中でも、静岡が58.1%と2位の岡山の45.1%を大きく引き離している点が目立っている。静岡県人の温厚でのんびりした性格が恵まれた立地条件と関連づけられて語られることが多いが、そのことを思い出させる結果である。 自然や気候の厳しさの地元意識については図録7228参照。 下位3位は京都、東京、石川であるが、特に気候が厳しいから回答率が低いというよりは、他の項目への回答率が高いために低くなっているのであろう。 気候が特に好きな県民割合を見ると、秋田と岩手の対を唯一の例外として、低い日本海側と高い太平洋側(瀬戸内海側)とが対照的である(下表)。日本海を渡ってきた湿った風がもたらす降雪とそれがもたらす生活上の困難の違いが大きいと思われる。 「気候」が特に好きな県民割合(%)
A自然の風景や名所 上位5位は、長野、奈良、栃木、京都、滋賀となっている。長野は山岳を背景にした高原や盆地の景観を好んでいる結果といえよう。栃木は日光、滋賀は琵琶湖の存在が効いているのであろう。奈良、京都、滋賀は名所が多く、Cと共通の側面が感じられる。 この項目の下位3位が東京、大阪、愛知という3大都市圏の中心であるのには自然の良さを売りものにする地域でもなかろうという意識がうかがわれる。 B人情 地元の人情が特に好きと感じている地域の上位3位は、新潟、島根、鹿児島であり、秋田、山形がこれに続いている。鹿児島を除くといずれも日本海側に立地している県であり、気候が好きと言えない降雪地域が多い(上表参照)。 人情の下位3位は、奈良、京都、東京である。東京は他県からの移住者の多いからと理解できるが、京都、奈良はやはり古都ならではの排他性が影響しているのであろう。 京都人の精神的特徴の「いけず」については図録7776、図録7304参照。 C歴史や文化財 上位5位は奈良、京都、山口、長崎、滋賀であり、いずれも史跡の多い地域である。山口以外は、他県人からも明らかにそうだと見なされているのに対して、山口はやや意外である。明治維新の際の長州藩の事跡や下関、萩、山口の歴史を県民が高く評価しているあらわれといえるが、調査の前年1977年のNHKの大河ドラマが、大村益次郎を中心に長州藩の維新の志士たちを描いた「花神」だった影響もあろう(図録3967参照)。 D伝統行事や郷土芸能 以下の4項目は、これまでの4項目と比べると、全体的に回答率が落ちるが、各地域の特徴をうかがわせている点では同じである。 上位3位については、青森のねぶた祭り、秋田の竿燈まつり、徳島の阿波踊りがすぐに思いつくだろう。 E食べものや特産品 食べものや特産品を自県の特に好きな点と考えている上位3位は、富山、大阪、山形である。大阪は食い倒れという言葉があるぐらい、食に特色がある地域であるが、富山、山形も、以前から大阪に劣らず地元の食べものに特別にこだわりがあったといえよう。県庁所在都市別消費額における全国トップ食品を図録7724、地域ブランドについては図録7787に掲げたので参照されたい。 F新しい文化 新しい文化と経済的活気では、首都である東京がトップである点が目立っている。新しい文化では、東京から文化が生み出されるという点もあろうが、むしろ、東京を通じて海外の文化が流入してくるという側面が大きかったのではないかと考えられる。 2位以下は5%未満と東京と比較すると極端に低い回答率となり、最下位の4つの県で回答者がゼロとなっているのも目立っている。1970年代の調査なのでこうした結果になっていたのであって、現在では、地域発の文化に対する意識がもっと高くなっているのではないかと想像される。 G経済的活気 経済的活気では東京に次いで、大阪、愛知、そして神奈川、福岡と大都市圏の中心地域の回答率が比較的高い点が目立っている。
(2018年2月15日収録、2月16日原データ、分類表追加)
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