日本の大企業ランキング


 

 2023年6月における世界の大企業ランキング上位50位を掲げた(51〜100位は表示選択)。順位は、企業価値を示す時価総額によっている。参考までに平成時代の初年次である1989年のランキング上位20位を併載した。

 1960年当時のランキング・トップ4企業との収益動向の対比は図録5412参照。日本の大企業ランキングは図録5441参照。営業利益による2007年度の世界の大企業ランキングは図録5410x、世界の金融保険会社ランキング上位30位は図録5415

 世界の大企業の上位は、アップル、マイクロソフト、アルファベット(グーグルの持株会社)、アマゾン・ドット・コム、メタ(旧フェースブック)という「ITビッグ5」、すなわち米国で起業し、国際的に展開しているIT関連の巨人企業5社、及び石油のサウジアラムコ、電気自動車のテスラなどで占められている。

 アマゾン・ドット・コムは、2018年9月に、株価の上昇により、アップルに次いで2社目の時価総額1兆ドル越え企業となったのが注目を集めた。1994年にジェフ・ベゾス氏が書籍のネット通販会社として創業したアマゾンは、近年、企業にサーバーやデータ保管などのサービスを提供するクラウド事業も収益の柱に成長し、また、米高級スーパーのホールフーズの買収による実店舗展開や「アレクサ」と呼びかけることで起動するスマートスピーカー「エコー」の成功などを含め、事業の幅を急速に拡大している。

 ネット通販のアマゾンは物流の整備にも多額の資金を要し、アップルやグーグルなど他のIT大手とは異なり低収益企業とみられてきたが「低収益ならばライバルの参入も少ない」として事業拡大を続け、この分野で独走態勢を築き上げたといわれる(毎日新聞2018.9.6)。

 上位IT企業の順番の入れ替えが激しい。2019年1月7日にはアマゾンがマイクロソフトを抜いて初めて世界首位に立っている。また、アップルは同年1月2日にiPhoneの中国での販売不振を理由に業績予想を下方修正したことが響き4位に沈んだ。しかし、その後、3月末には、マイクロソフトが首位に返り咲き、アップルも2位にまで順位を回復している。さらに、世界的なネット企業の個人情報利用への規制の動きを受け、グーグルやメタ(フェースブック)の時価総額順位が後退し、2021年12月にはアップル、マイクロソフトが最上位となっている。2022年になると石油高騰を受けサウジアラムコが1〜2位に浮上、それ以外ではアップルがトップ企業となっている。メタ(フェースブック)はSNSの新手の登場やメタ事業が思った通り伸びないことから22年末には24位、23年6月には8位とランクを落としている。


 2020年に入ると新型コロナの流行により旅行やエネルギー関連企業などの業績が落ち込む一方で、リモートワークなどを通じたデジタル化の追い風を受けて巨大IT企業は成長が加速。株価も株式相場の上昇基調を主導している。

 アップルの時価総額が米国企業として初めて2兆ドル(約212兆円)を超えたのは2020年8月19日だったが、2022年1月3日には3兆ドル(約345兆円)の大台を超えた。コロナ禍の在宅勤務やリモート授業に伴うデジタル化、エンターテインメント需要が安定した収入の伸びを支えており、仮想現実(VR)や自動運転車向けの新たな製品投入への期待も株価上昇の背景にあるとされる(下図参照)。


 その後、2022年6月にはウクライナ戦争の影響で資源価格が高騰し、その結果一時期サウジアラムコが首位となっている。22年には、また。コロナ特需の収束から巨大IT企業は肥大した組織の整理をはじめ一時期時価総額も低下したが、23年に入ってその効果からか再度回復している。

 なお、米IT大手企業を指す用語として、グーグル、アマゾン、フェースブック、アップルという4社の頭文字をとった「ガーファ」(GAFA)、あるいはこれらにマイクロソフトを加えた「ガファム」(GAFAM)という呼び方が有名だが、フェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、グーグルという5社の頭文字をとった「ファーング」(FAANG)という呼び方もある。

 電気自動車のテスラは2022年6月にはこれらIT大手に次ぐ6位だったが、創業者のイーロン・マスク氏が民主主義の維持のために投稿の制限などを受けるべきではないとの持論から、莫大な個人資産を背景にツイッター社を買収し、大掛かりな改革に乗り出したが成功しているとは言えず、また同氏が「売却を予定していない」と言いながら、4月、8月、11月、12月とTesla株を売却していることが投資家の懸念を呼ぶなどして株価が大きく下落しているため、12月のランクは10位、22年6月は9位に下がっている。

 多くの中国企業が一時期上位を占めたが、企業への中国政府の関与が嫌われ、最近はやや後退している。

 日本の企業としては、22年末には、唯一、トヨタ自動車が48位に位置していたが、22年6月には50位外の52位に後退した。なお、トヨタ自動車とともにキーエンス、ソニーが100位以内に食い込んでいる。

 図には、参考までに1989年(平成元年)の世界の時価総額ランキング20位までを併載した。

 また、以下に世界の時価総額ランキング50位の国別数を1989年(平成元年)と2019年(平成31年)、2022年(令和4年)で比較した表を掲げた。

世界の時価総額ランキング上位50社の国別会社数
1989年 2019年 2022年
日本 32社 1社 1社
米国 15社 30社 32社
英国 3社 2社 2社
フランス 0社 1社 2社
中国 0社 10社 4社
スイス 0社 3社 3社
ベルギー 0社 1社 0社
(注)(資料)図と同じ

 バブル経済さなかの1989年には銀行などを中心とする日本企業がランキング50位までに32社が登場しており、米国の2倍の数となっていた。それが、今や、ランキング50位までがトヨタ自動車1社のみとなり、また当時の日本企業の多くが合併等で今はもう存在しない点に、「平成時代」における大きな状況変化を見て取ることができる。

 世界的には、この間に、日本企業が地位を大きく低下させたこと、IT・ネット企業がトップに躍り出たこと、中国企業の躍進が目立つこと、などの大変化が生じていることが明らかであろう。

 時価総額の比較は各国の為替レートや株価水準に左右される。1989年のランキングは、当時の日本の株式市場の非常に高い水準を反映している(株価の長期推移をあらわした図録5075参照)。そうであるなら現在の時価総額ランキングも同じように将来性のある企業かどうかで一喜一憂する人びとの評価で決まっていると考えられよう。時価総額ランキングはそうした意味で客観的な企業価値というよりは時代の趨勢を反映している側面が大きいといえる。

 最近のランキングの特徴はデータ参照の時点が少し異なるが「日本脱落と米中覇権争い、時価総額「トップ100」企業が示すビジネスの主役」(野口悠紀雄、ダイヤモンド・オンライン2021.12.23)を読んでも明らかなので以下に引用しよう。

「旧来型の企業に代わってトップ100位に入っているのは、どんな企業だろうか?製造業のうちトップ100社に入っているのは、ファブレス(工場がない)製造業が多い。ランキング世界1位のアップルがその典型だ。半導体のNVIDIA(8位)も設計に特化しているファブレス製造業だ。日本にもファブレスが登場している。キーエンスは世界ランキング48位。伝統的な製造業であるトヨタや日立に比べてビジネスモデルが大きく違う。しかし、キーエンス以外には日本では目立ったファブレス企業が出てこない。トップ100社には、金融機関として銀行が10社、保険が2社入っている(いずれもほとんどがアメリカと中国の企業)。これら以外に、クレジットカード会社やペイパルなど、さまざまな金融サービスがある。

(中略)

 従来の産業分類に収まらない企業はほかにもある。テスラはファブレスとは言えないが、製品の価値がソフトウェアにあるという点で従来の製造業とは異質だ。そのような企業が、自動車産業でいまや時価総額のトップになっている(全体のランキングで6位)。時価総額50位までの企業で、従来型の製造業企業はサムスン(14位)、ナイキ(32位)、トヨタ(35位)、シスコ(44位)しかない。

 ところで、時価総額は万能の指標ではない。株価が将来を正しく予測しているかどうかは確かではないからだ。実際、1990年代には、世界時価総額ランキングのトップを日本の金融機関が独占したが、それらの企業のほとんどはいまや見る影もない。これはバブルにすぎなかったのだ。いま時価総額について最も大きな不確実性があるのは中国企業だろう。この1年間、中国政府の政策変更によって株価は大きく変動した。その典型がアリババとテンセントだ。前者の時価総額は2020年10月22日の8380億ドルから21年12月1日の3540億ドルにまで下落した。また、最近の株価には、原油価格の高騰や半導体不足が影響を与えている。こうした短期的要因と長期的なトレンドを区別することが必要だ」。

 下には、表示選択で、参考に別資料から2011年以降のトップ10企業の変遷を示した。この10年ぐらいの間の変化の激しさをうかがうことができる。



 検索が可能となるようトップ100の企業名を掲げておくと次の通り。アップル、マイクロソフト、サウジアラムコ、アルファベット(グーグル)、アマゾン・ドット・コム、NVIDIA、バークシャー・ハサウェイ、メタ(旧フェイスブック)、テスラ、TSMC、ビザ、ユナイテッドヘルス・グループ、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン、エクソン・モービル、イーライリリー・アンド・カンパニー、騰訊(テンセント)、ジョンソン・エンド・ジョンソン、JPモルガン・チェース、ウォルマート、サムソン電子、ノボ ノルディスク、マスターカード、P&G、ブロードコム、ネスレ、貴州茅台酒、ホーム・デポ、シェブロン、オラクル、メルク、ASML、コカ・コーラ、ロシュ、ペプシコ、アッヴィ、インターナショナル・ホールディング、中国工商銀行、ロレアル、コストコ・ホールセール、バンク・オブ・アメリカ、アストラゼネカ、ファイザー、アリババ・グループ、エルメス・アンテルナショナル、ノバルティス、マクドナルド、シスコ・システムズ、セールスフォース・ドットコム、リライアンス・インダストリーズ、サーモフィッシャーサイエンティフィック、アドビ、トヨタ自動車、シェル、アクセンチュア、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ、中国石油天然気、中国移動、アボット・ラボラトリーズ、ネットフリックス、リンデグループ、中国農業銀行、ダナハー・コーポレーション、中国建設銀行、ウォルト・ディズニー、コムキャスト、ナイキ、ティーモバイル、テキサス・インスツルメンツ、SAP、中国銀行、ウェルズ・ファーゴ、HSBC HD、クリスチャン・ディオール、ネクステラ・エナジー、BHPグループ、ベライゾン・コミュニケーションズ、ユナイテッド・パーセル・サービス、タタコンサルタンシーサービシズ、トタルエナジーズ、プロサス、レイセオン・テクノロジーズ、モルガン・スタンレー、フィリップモリス、ブリストル・マイヤーズ スクイブ、寧徳時代新能源科技、シーメンス、ハネウェル、ユニリーバ、サノフィ、カナダロイヤル銀行、ボーイング、クアルコム、インテル、アメリカン・エキスプレス、インテュイット、コノコフィリップス、中国平安保険、キーエンス、中国人寿保険、ソニー。

(2007年10月15日収録、2008年10月5日更新、2018年8月29日更新、9月9日アマゾンのコメント追加、2019年1月8日上位順位変動コメント、1月29日図修正、5月16日更新、12月21日上位4位表更新、2020年8月21日上位4位表更新、2021年6月23日トップ10企業の変遷表、12月25日更新、12月26日野口悠紀雄引用、12月30日表示切替で51〜100位企業の図、2022年1月4日アップル株価推移図、6月29日更新、年2回更新方針、12月21日更新、12月28日テスラコメント補訂、2023年6月6日更新)


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