キプタム選手(24)は2024年4月のロッテルダムにエントリーしており、公認レースで人類初の2時間切りが期待されていたが、同年2月11日、ケニア・エルドレッドのカプタガット・ロードにおいて自身が運転する車がコントロールを失って巨木に衝突する単独事故で同乗していたコーチとともに亡くなった。 2022年9月25日のベルリンマラソン2022において、世界記録保持者のエリウド・キプチョゲ(37=ケニア)が、自身の記録を更新し、2時間1分9秒で優勝した。6度目の出場で4度目の優勝となった。 2018年9月16日、ベルリンマラソンで、16年リオデジャネイロオリンピック(五輪)金メダルのエリウド・キプチョゲ(33=ケニア)が2時間1分39秒で世界記録を樹立した。従来の世界記録の2時間2分57秒を1分以上短縮し、史上初の2時間1分台に突入する快挙を達成した。 なお、参考記録では2019年10月12日に同じキプチョゲ選手が2時間を切っている。複数のペースメーカーが何度も入れ替わって引っ張り、自転車から飲み物を受け取るなど特殊な補助を受けてウィーンで行われた特別なレースで、エリウド・キプチョゲ(34)がフルマラソン史上初の2時間切りとなる1時間59分40秒で走った。記録は非公認(毎日新聞2019.10.13)。 シューズに関して従来は軽さを求めた薄底シューズが良いとされてきたが、日本記録を出した設楽悠太選手をはじめ、ナイキの厚底シューズを履いた内外の選手に高記録が相次いでいるという。今回もそうだ。「キプチョゲはトラック種目でも5000メートルで12分46秒53、1万メートルで26分49秒02の自己記録を持つスピードランナー。履いているカーボンプレートが入ったナイキの厚底シューズは、地面から高反発を受けて推進力を生むとされる。給水では炭水化物濃度が高い「モルテン」と呼ばれるスポーツドリンクを飲用する。河野ディレクターは「若いころのスピードをベースにマラソンのトレーニングを積んできた。それに科学の力を合わせ、人類ができる最高レベルのマラソンをしている」と評した」(東京新聞2018.9.17)。 男子マラソン界は、ベルリン・マラソン、東京マラソンなど主要6マラソン大会による「ワールドマラソンメジャーズ」(WMM)の創設(2006年−東京は2013年から参加)で高速化に一層の拍車がかかっているといわれる。これは、各大会5位までに入賞すると1位25点、2位15点、3位10点、4位5点、5位1点が付与され、2年のシリーズ期間における合計得点を競い、男女ともに、最高得点の選手へ賞金50万ドルが贈られるというもの。
2014年9月28日、ベルリン・マラソンで、男子のデニス・キメット(ケニア)が2時間2分57秒の世界新で優勝した。ウィルソン・キプサング(ケニア)が昨年のこの大会で出した2時間3分23秒を26秒更新し、史上初めて2時間2分台に突入した。2位のエマニュエル・ムタイ(ケニア)も従来の世界記録を上回る2時間3分13秒だった。 2013年9月29日に行われた第40回ベルリンマラソンが行われ、男子で昨夏のロンドン五輪銅メダルのウィルソン・キプサング(31)(ケニア)が、2時間3分23秒の世界新記録で初優勝した。一昨年の2011年9月25日に行われた第38回ベルリン・マラソン大会では、パトリック・マカウ(ケニア)が2時間3分38秒の世界記録を樹立して2連覇を果たしたが、これに次ぐ2年ぶりの男子マラソン世界記録である。 ◇ ◇ ◇ 毎日新聞は、2008年10月29日(夕刊)の特集ワイドにおいて、「人類の夢2時間の壁突破へ〜「あと4分」に何年」と題し、男子マラソンのハイレ・ゲブレシラシエ選手(エチオピア)が9月に叩き出した2時間3分59秒の世界記録を踏まえ、人類が2分の壁を破る日はいつかという特集記事を掲載している。 記録樹立の条件として、ベルリンなど起伏の少ないレース環境、またウエアやシューズの機能性、そして高額の優勝賞金があるというような話題が記載されているが、掲載された過去の世界記録のデータを図示してみると、そう間近に2時間を切るような記録が出るとは思われない。 「ゲブレシラシエ選手は世界記録を出した9月のレース後、2時間の記録の壁を越えるには「あと20年はかかるだろう」と話した。...山地教授(新潟医療福祉大学)もほぼ同じような見方をする。「世界記録と樹立された年の関係から算出してみると、2時間の壁が破られるのは、2030年ごろというのが妥当だろう。」(同紙) 図の傾向線を直線的に先に伸ばせばこのような結論となることは明らかだろう。いくつか新記録が重なる時期と何年も新記録が出ない時期とが交互に訪れることもうかがわれる。 ただ人間の体力の限界を想定するなら直線的に2時間に近づくとは必ずしもいえない。記録の更新幅が小さくなっていくことがあり得るのである。何が真実かは実際の記録が出てみないことには分からないと言うのが妥当なところかも知れない。 以下に戦後の世界記録の一覧表を掲げる。戦前は2時間26分台だったといわれる。別の記事によると1939年には2時間35分が世界記録であり、その後、第二次世界大戦をはさんで高速度化が進んだが、最近は伸びしろが狭まったという(The Economist July 18th 2015)。世界記録がどこまで速くなるのかという点については図録3988k(人間はどこまで速く走れるのか)を参照。結論はマラソン女子の記録は限界に近づいているが男子の場合はなお若干の伸びしろがあるというもの。限界の予知値は2時間1分程度とされている。 なお、女子マラソンの世界記録・日本記録の推移については図録3989k参照、また短距離100m走の世界記録については図録3988p参照、競泳100m自由形の世界記録については図録3988s参照。
(2008年11月5日収録、2011年4月21日ジョフリー・ムタイ記録コメント(のち削除)、2011年9月25日更新、2013年9月29日更新、2014年9月29日更新、2015年7月27日補訂、2018年9月16日更新、17日ナイキ厚底シューズ、2019年1月6日ヒートリー、アベベ追加、10月13日1時間台の参考記録、2022年9月25日更新、2023年10月9日更新、2024年2月12日キプタム選手交通事故死、2月13日キプタム選手写真)
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