学歴(教育達成度)別の人口は各国人口の基本属性のひとつである。ここでは、大学卒業者が人口に占める比率(大卒比率)を国際比較した。データをとりまとめているのはOECDの教育白書ともいうべきEducation at a Glanceである。

 最近の大学進学率(厳密には大学進学率マイナス大学退学率)を反映しているのは若年層の大卒比率であり、中高年層の大卒率は数十年前の大学進学率を反映している。

 若年層(25〜34歳)の大卒比率が最も高い国は、アイルランド(70.0%)、第2位は韓国(69.8%)である。アイルランドは最近になって若年層の大学比率が上昇した点で目立っている(2008年には45.1%、第7位だった)。アイルランドと韓国は経済成長の持続を教育投資に賭けているともいえよう。

 またこの2国に続くのは、カナダ(63.0%)、ロシア(62.1%)、日本(61.5%)である。若年層の大卒比率が6割を越えているのはこの5カ国だけである。

 図で取り上げた45カ国の中で最も若年層の大卒率の低いのは南アフリカ(5.6%)である。その他の途上国もなお大卒比率は低く、経済が躍進している中国も17.9%と2割以下である。

 西欧主要先進国の中では、イタリアが2割台、ドイツが3割台と低いのが目立っている。こうした国では、大卒が少ない一方で、専門職な職業訓練機関が大学に代わって国民の高い知的レベルを底支えしているという側面も無視できないと考えられる。

 中高年層(55〜64歳)の大卒率と比較すると、アイルランド、韓国、日本などこの数十年の経済発展度の高かった国で大きく大卒率が上昇している点が目立っている。特に韓国では大卒率が中高年層から若年層へと2.9倍も上昇しており、世代間の格差が著しい(2008年データでは同じ値が4.8倍とさらに大きかった)。

 日本と韓国については、儒教的伝統を背景とする親の強い意向と経済発展・所得向上が結びついてこうした大卒率の急上昇がもたらされているといえよう。ただし、大学教育の中味が劣化しているとしたら見かけ上の大卒率の上昇が国民の知的レベルの上昇に直結しているとはいえないだろう。

 若年層と中高年層の大卒率が余り大きくない例もある。米国、イスラエル、エストニア、フィンランド、ドイツなどである。これらの国で国民の知的レベルが落ちているとは必ずしもいえないので(米国は?)、こうした伸び悩みには、以前から大卒率が高かったという側面と大学に頼らない高度な教育システムが存在しているという側面があると考えられる。

 米国の大卒比率が増えないのは学費高騰のせいだとも言われる。「アメリカでは、子供1人が生まれて大学に入るまでにかかる生活費や学費の合計がおよそ2000万円程度だといわれています。公立大学の学費が、日本の私立よりも高いからです。各地方自治体の財政が破綻して、大学に予算が割けないせいで学費の高騰が止まらないんです」(町山智浩「町山智浩の「アメリカ流れ者」」スモール出版、2018年、p.91)。「アメリカでは学費が大幅に値上がりしていて、現在国民の29%は親より学歴が低くなっているという問題があります。親は大学に行けたのに、子供は大学に行けないというケースが29%。国民の3分の1に迫っています」(同書、p.83)。

 ドイツと米国で大卒が増えていないせいもあって大卒の失業率が高卒と比較して高まる傾向にない点については図録3905参照。

 こうした教育レベルの変化が知力の年齢格差に影響している点については図録3938参照。また子どもの学力と大人の知力の相関に影響している点については図録3937参照。

 大学進学率の国際比較については図録3928、大学退学率の国際比較については図録3928a参照。

 グラフの対象となった45カ国は、若年層の大卒率の高い順に、アイルランド、韓国、カナダ、ロシア、日本、リトアニア、ルクセンブルク、スイス、オーストラリア、英国、米国、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、フランス、ベルギー、デンマーク、アイスランド、イスラエル、スペイン、スロベニア、ラトビア、ニュージーランド、ポーランド、エストニア、ギリシャ、フィンランド、オーストリア、アルゼンチン、スロバキア、ポルトガル、トルコ、チリ、ドイツ、チェコ、コスタリカ、ハンガリー、コロンビア、イタリア、メキシコ、ブラジル、中国、インドネシア、インド、南アフリカである。

(2011年3月7日収録、2020年9月10日町山引用、2021年1月6日更新)


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