高度技術社会が進展するに伴って教育程度の高い者への社会のニーズが高まってくる。人材養成がこうしたニーズに追いつかないため、図録3900でふれたように日本の高度成長期から1980年代のハイテクブームまでは、大卒の失業率は一般の失業率と比べて相対的に低まる傾向にあった。ところが、その後、1990年代に入って、高卒が減少するとともに大卒が増え続けた(図録3165)結果、大卒の失業率の相対的なレベルは横ばい、ないし上昇へと転じた。

 ここでは、こうした大卒の失業率の相対水準を各国比較した図録を作成した。データはOECD資料である。

 ここでは大卒の失業率を高卒の失業率に対する比率で見ている。1.0であるなら両者は同じレベル、0.5なら大卒の方が高卒の半分の失業率ということである。

 日本の場合、このデータでは、0.7と約3割低いレベルでほぼ横ばいとなっている。

 各国全体として1を下回る水準であり、全体としては大卒へのニーズはなお高卒より高いといえる(大卒が長期継続雇用の大企業に就職する比率が高く高卒は中小企業や職人など転職が多い職業に就職するする比率が高いという要因もあろう)。

 この中で、毎年ではないものの、1を越える年が時々ある国としては、韓国とイタリアが目立っている。この他、フランスやスウェーデンでは相対レベルの上昇傾向がやや目に付く。OECD平均でも上昇傾向が認められる。こうした諸国では高学歴の若者の就職難がニュースにも出てくるようだ。

 資本主義社会では、循環的に生じる生産の過剰、資本の過剰が、景気循環を生むが、人材の過剰(失業)もそれに伴う重要課題となる。現代では、知的人材の過剰養成が社会不安の一材料となるリスクは高まっているといえよう。

 なお、米国やドイツでは、大卒失業率の対高卒失業率のレベルは、0.5程度で、低いまま推移している点が目立っている。これは、この2国では、以前と比較して大卒の若者を増加させていないからだと思われる(図録3929に若年層と中高年層の大卒比率の各国比較あり)。

(2011年7月11日収録)


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