学歴別の失業率については、大卒など高学歴者ほど失業率が低い点がよく指摘される。米国やEUのデータを見ても同様の点が裏づけられることから、世界共通の傾向とされ、知識社会化の1つのあらわれであると考えられている。すなわち社会が複雑化、IT化、スピード化する中で、高学歴者がより求められているという訳である。

 もちろん基本的にこうした傾向であることに間違いはないが、高学歴者も実際のニーズを越えて供給されれば過剰になる面もある。

 図に毎年の大卒以上の失業率を学歴計の失業率とともに1960年から示した。1980年までは国勢調査データであり、1986年以降は毎年の労働力調査データ(特別調査、ないし詳細集計)によっている。

 まず、毎年のデータを得られる1986年以降の推移であるが、2002年からは労働力調査特別調査は労働力調査と一本化され、これまでの2月現在データと比較できるのは、1〜3月平均データとなった。2017年の大卒以上失業率は2.2%であり、総数3.0%の0.76倍と7割台の水準となっている。

 この大卒以上の失業率の相対レベルを1986年から追ってみると興味深いことにバブル崩壊後の1992年から急に上昇したことが分かる。そしてそれ以後の動きはほぼ横ばい傾向の中で6割程度の水準を保っていたが2004年以降7割台へと上昇した。

 2008〜2012年には両者の相対比も6割台へと落ちたが、その後は、再度7割台となっている。

 学歴別の失業率は労働力調査の中で調べられるようになる以前には国勢調査の中で、しかも2回に1回の頻度で調査されるのみであった。1960年以降の10年おきの大卒以上失業率の相対レベルを見ると、1960年の1、すなわち学歴別格差なしの状態から1980年の0.61へと低下傾向が続いていたことが分かる(ちなみに1990年国勢調査では0.46と労働力調査と同等レベルである)。

 高度成長期から安定成長期を経てバブル期に至るまでの我が国は、社会経済の発展に伴い、一貫して、高学歴者をますます必要とする傾向が深まってきていたのである。我が国の学歴社会がこうした傾向の中で形成されたことは想像に難くない。

 1990年前後はまさに学歴に関するターニングポイントだったことが以上の動向から確認できる。それ以降、大卒の失業率は一般に近づいているのである。その理由及び背景としては、以下の3点をあげることができよう。

 第1に、成長率の鈍化により学歴に関し供給が需要が上回り、また大卒が一般化したこと(大学進学率の推移は図録3927参照)。

 第2に、高齢化に伴い学歴を要しないケア・サービスの需要が急拡大していること(図録3500参照)。

 第3に、終身雇用制などの見直しとIT革命によって管理職への需要が相対的に縮小していること(図録3150参照)。

 今後の雇用対策や教育政策、社会政策を考える上で、これらについてなお立ち入った分析が必要と考えられる。

 この点についての国際比較は図録3905参照。

(2005年6月7日更新、2007年11月7日更新。2008年8月14日更新、2009年5月20日更新、2011年7月11日更新、2017年5月10日更新、2021年3月3日更新)


[ 本図録と関連するコンテンツ ]



関連図録リスト
分野 教育・文化・スポーツ
テーマ  
情報提供 図書案内
アマゾン検索

 

(ここからの購入による紹介料がサイト支援につながります。是非ご協力下さい)