非正規雇用の増加の正体については、年齢別の増加数構成をグラフにした図録3242参照(正規雇用の増減の中身についてもふれている)。 非正規雇用者はパート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託などからなる。労働力調査は事業所ではなく世帯が対象の調査であり、ここでの集計は職場での呼称にもとづく回答者の選択によっている。なお、ニュース等で公表される非正規雇用者の数は農林業を含んだデータであり、ここでの人数より多い(例えば2009年1〜3月期は非正規雇用者1,699万人と22万人多い)。ここでは時系列のなるべく長い接続のため、非農林業を対象としている。 正規雇用者は1997年までは増加していたが、それ以降、2006年まで減少し、07年以降ほぼ横ばいとなっている(図録3150参照)。これに対して非正規雇用者は2009〜10年に一時期減少したがほぼ一貫して増加してきた。 この結果、非正規雇用者比率は1990年の20.0%から2014年の37.9%へと大きく上昇した。いまや3人に1人以上は非正規雇用者となっている。 2009年(1〜3月期)の特徴は、正規雇用者は前年の採用状況が良かったためやや増加しているのに対して、非正規雇用者がはじめて42万人の減少に転じた点であり、このため非正規雇用者比率は33.3%へと低下した。2008年後半からの世界的な経済危機の中で行われた派遣切りなどの影響が端的に出ているといえる。この20年間続いてきた傾向から大きく逸脱する事態となったため派遣やパートの雇用者もパニックに陥り、非正規雇用者の問題が社会問題として大きくクローズアップされるに至ったことは改めて指摘するまでもない。 その後、景気が回復するとともに非正規化がそれまでのように傾向的に進んだ。 ところが、2015年〜17年は雇用環境が改善し正規雇用者もかなり増加したので非正規比率は連続して低下している。 2018年は雇用環境がなお改善する中で非正規比率が再度上昇し、過去最大の38.1%となった。これは、ますますウエイトが高まっている高齢層の非正規雇用が拡大しているためと考えられる(図録3242参照)。 1〜3月の結果なのでコロナの影響は2021年に出ていると考えられる。2021年は非正規雇用者が減少しているのが目立っているが、これは飲食業や宿泊業における主に女性の雇用喪失によるものと思われる。 男女別の非正規雇用者の各区分別の人数を掲げると以下の通りである。非正規雇用の多くは女性パートであることが分かる。日本が他国と比較して男女異型の労働時間構造を有している点については、図録3132参照。 非正規雇用者となった主な理由別(2013年から調査項目として追加。統計用語上は「現職の雇用形態についた主な理由別」)の非正規雇用者数の構成を男女別に見ると、「不本意型」(「正規の職員・従業員の仕事がないから」)は、最新年では、男で13.3%、女で6.4%であった。男は2番目の理由、女は4番目の理由となっており、位置づけに男女差がある。近年の推移を表に掲げたが、不本意型は低下傾向にある。やはり高齢層の非正規雇用が拡大が背景となっていると考えられる。就労時間を増やしたいパート労働者を非自発的として、もう少し長い時系列動向を図録3210で追ったので参照のこと。 なお、非正規雇用の拡大は世界的な傾向である。以下にEUにおける状況を掲げる。「先進工業国で支配的だったフォーマルな経済は、かつては、進歩的な労働市場政策、強い労働組合の影響力、そして永続的であることが普通のフルタイム雇用によって特徴づけられる傾向があった。こうした状況は大きく変わってしまった。」(図のWHO報告書) (2008年4月16日収録、2008年5月30日更新、9月1日EU非正規雇用図追加、2009年5月20日更新、2010年5月18日更新、10月22日読者からの指摘によりグラフ凡例の正規、非正規が逆だったのを修正、2011年5月18日更新、2012年8月31日更新、2013年5月15日更新、非正規となった理由追加、2014年2月4日図形式変更、2014年5月13日更新、2015年5月12日更新、2016年5月11日更新、2017年5月10日更新、2018年5月11日更新、2019年4月27日更新、2020年11月11日更新、2021年11月22日更新、2022年5月15日更新、2024年5月14日更新)
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