各国の働き方を労働時間の側面から見る場合、長いか短いかと同時に多様な労働時間の働き方が成立しているかも重要である。長短は平均労働時間、あるいは長時間労働者の比率で判断できる(平均労働時間については図録3100、長時間労働者比率については図録3130参照)が、働き方のパターンや多様性はここで取り上げたような男女別の労働時間分布によって観察することができる。データの出所はILOのILOSTATである。

 9つの主要国をX軸方向には労働時間の長さ(男の週40時間以上比率)で3区分し、Y軸方向には男女の労働時間分布のパターン差で3区分し、方陣に並べ、それぞれ、男女の労働時間帯分布を示した。

 どの国でも40時間は重要な区切りである。標準労働日とされてきた1日8時間労働で週休2日の5日稼働で40時間となるからである。かつてのような土曜日半ドン4時間を足すと44時間となる。日本の労働基準法では休憩時間を除く週40時間を法定労働時間と定めている。残業のない標準的な働き方であれば40〜48時間にほぼ収まると判断できる。

 労働時間の長い国としては、韓国、米国、日本があげられる。その中で韓国は男女ともに労働時間が長い点が特徴となっている。日本は男性だけだと長時間労働が目立っているが女性はパートターム労働が多いため15-29時間に大きなピークがあり、男女差が目立つパターンである。米国は基本的に男女ともに40-48時間という標準的な労働時間に集中している点が特徴である。

 労働時間の短い国としては、フランス、英国、オランダがあげられる。男性のピーク時間帯のシェアはいずれも30%台と低く、働き方の多様化が進んでいることも分る。その中でフランスは男性のピークが35-39時間と英国やオランダのピークが40-48時間であるのと比べて目立って短時間労働が多い。男女差については、フランスの場合は、男女のピークがともに35-39時間で同じなのに対して、英国とオランダはどちらも女性のピークが15-29時間と男のピークから大きくズレており男女差が顕著という違いがある。オランダは短時間労働を正規労働として認知した国として知られているが(オランダ・モデルについては図録3080参照)、女性の短時間労働者が多いほか、男も40-48時間を除くと分散的である。

 日本の働き方を労働時間の長さでなく男女のパターンの違いから見るとイタリアの働き方がもっとも近いといえよう。また、ドイツは方陣のちょうど真ん中に位置しており、労働時間の長さや男女の働き方のパターンの両方において先進国の平均的な姿を示しているといえよう。

 全体として、男は労働時間分布が集中的であり、女は分散的ともいえる。日本のほか、オランダ、英国、イタリアなどで15-29時間の割合が高くなっている。

 短時間労働が多い労働時間分布であったとしても、もっと働きたいのに短時間の非正規な職しか得られないのか、自由な選択で短時間労働なのかの判断は、この図では得られない点には十分留意する必要がある。

 週30時間未満をパートタイム労働者として、その割合の推移を男女別に示した図を図録3200に掲げているので参照されたい。

 なお更新前の旧図録(2005年データ)では、Y軸を労働時間分布の分散度で並べていた(図録3132xで保存)。

(2009年5月14日収録、2015年4月22日更新)


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