同じように就職(内定)率が低かった2000年と2011年とで第一志望の会社に入った新入社員の割合は、それぞれ、51%、74%と大きく異なる点については図録3176参照。 〇2025年3月卒業者(予定者)の状況について 10月1日現在の内定率は72.9%と前年から1.9%ポイント・マイナスの4年ぶりの低下となった。低下の理由について文科省の担当者は「大学へのヒアリングによると、売り手市場の中、複数の内定を得て就職先を決めかねている学生が多い影響とみられる」と話したという(朝日新聞2024.11.15)。 〇2024年3月卒業者(予定者)の状況について 10月1日現在の内定率は74.8%とコロナの影響の残っていた前年から0.7%ポイントの改善となった。12月1日現在の内定率は86.0%と前年から1.6%ポイントの改善となった。2月1日現在の内定率は91.6%と前年から0.7%ポイントの改善となり、この4年では最も高く、2020年の92.3%に迫る結果となり、コロナ前の水準までほぼ回復した。 3月卒業の就職率(4月1日現在)は98.1%となり、前年同時期に比べ0.8ポイント増となり、過去最高を記録した。企業の深刻な人手不足を背景に「売り手市場」が続いていると言えよう。 〇2023年3月卒業者(予定者)の状況について 10月1日現在の内定率はコロナ禍の影響により74.1%とコロナの影響の強かった前年から2.9%ポイントの改善となった。12月1日現在も1.4%ポイントの改善。 3月卒業の就職率(4月1日現在)は97.3%となり、前年同時期に比べ1.5ポイント増とかなり改善した。コロナ禍からの回復基調に新卒採用枠を戻す企業が多かったためと見られる。 【過去年次の卒業者の状況】 〇2022年3月卒業者(予定者)の状況について
10月1日現在の内定率はコロナ禍の影響により71.2%とコロナの影響の強かった前年から1.4%ポイントの改善となったが、なお、18〜20年の水準よりかなりの低下である。その後、12月1日現在も22年2月1日現在も同様である。 3月卒業の就職率(4月1日現在)は95.8%となり、前年同時期に比べ0.2ポイント減で2年連続の低下となった。内定率は昨年から上昇していたが最終の就職率はマイナスだったのである。 〇2021年3月卒業者(予定者)の状況について 10月1日現在の内定率はコロナ禍の影響により69.8%と前年から7.0%ポイントのマイナスだった。この低下幅は、リーマンショックの余波による2010年のマイナス7.4%ポイント減に次ぐ大きさである。就職戦線は激震に見舞われたといってよい。12月1日現在の値、2月1日の値も同様にかなり落ち込んだ。 「前年との差は、昨年12月1日時点の前回集計に続いて縮まっており、厚労省の担当者は「企業は新型コロナによる採用活動の遅れを取り戻しつつある」と指摘した。ただ、足元では1月に再発令された緊急事態宣言で打撃を受けた企業もあり、最終的に近年並みの90%台後半に届くかは不透明だ」と報じられている(時事通信)。 3月卒業の就職率(4月1日現在)は96.0%となり、前年同時期に比べ2.0ポイント低下した。1997年に調査を開始して以来、リーマン・ショック後の10年卒(3.9ポイント低下)に次ぐ過去2番目の下落幅を記録。新型コロナウイルス感染拡大が直撃した観光・航空業界などの企業が新卒採用を抑制し、希望する職種に就けない学生が増えたためと考えらる。 〇2020年3月卒業者(予定者)の状況について 10月1日現在の内定率は76.8%と前年の77.0%よりは低下したが、調査開始以来2番目に高い値となった。12月1日現在の内定率も同様。2月1日については、過去最高の値となり、4月1日も最高タイとなった。新型コロナウイルスの影響で内定取り消しが相次いでいると報じられているが、なお、4月1日の段階では影響が出ていなかったといえよう。 ○2019年3月卒業者(予定者)の状況について 10月1日現在の内定率は77.0%と前年の75.2%から上昇したばかりでなく、調査開始以来最も高い値となった。12月1日現在、2月1日現在の内定率も、それぞれ87.9%、91.9%と、やはり、前年より上昇したばかりでなく、調査開始以来最も高い値となった。最終の就職率(4月1日現在)は97.6%と前年よりやや低下したが、就職率についてはほぼ上限に達しているためと思われる。 ○2018年3月卒業者(予定者)の状況について 10月1日現在の内定率は75.2%と前年の71.2%から大きく上昇したばかりでなく、調査開始以来最も高い値となった。12月1日現在、翌2月1日の内定率も調査開始以来最も高い値となった。最終の就職率(4月1日現在)も98.0%と過去最高となった。 ○2017年3月卒業者(予定者)の状況について 10月1日現在の内定率は71.2%と前年の66.5%から大きく上昇したばかりでなく、調査開始以来2番目に高い値となった。基本的には景気がよいためだが、「面接などの採用選考の開始時期が8月から6月に前倒しされた結果、内定を出すのが早まっている」(毎日新聞2016.1119)影響もあると考えられる。 12月1日現在の内定率は85.0%と前年から大きく上昇したばかりでなく、調査開始以来最も高い値となった。要因としては、企業側の景気のよさに加えて、「文科省は「希望する就労条件を満たし、早めに就職先を決める学生が多い」(学生・留学生課)と分析。採用面接の解禁が大学4年生の6月に2カ月前倒しされたことも、内定率を押し上げた可能性がある」(時事通信2017.1.20)。 2月1日現在の内定率は90.6%と2月1日現在を調査するようになった2000年卒調査以来最高となった。「改善は6年連続。厚労省は「景気回復から企業の採用意欲が強い」(若年者雇用対策室)と分析している」という(時事通信2017.3.17)。 4月1日現在の就職率も97.6%と調査開始以来最高の値となった。 ○2016年3月卒業者(予定者)の状況について 10月1日現在の内定率は66.5%と前年の68.4%から5年ぶりに減少した。これは、2008年秋のリーマンショックの後の低下とは異なり、景気低迷によるものではない。「企業の面接など選考活動の解禁時期が従来の4月から8月にずれた影響で、企業が内定を出す時期が地方を中心に遅れていることや、大学生が内定先を絞っていないことなどが背景にあるとみられる。経団連は来年は2カ月前倒しして6月にする方針」(毎日新聞2015.11.20)。実際、地方別には、関東、中部では内定率が対前年同期で上昇し、それ以外の地方で下落している(図録3161参照)。 12月1日現在の内定率は、選考解禁時期の繰り下げの影響が薄れ、前年より0.1ポイントの改善となり、就職状況が悪化しているわけではないことがはっきりした。2月1日現在の内定率では対前年で1.1ポイント改善し、この点がさらにはっきりした。4月1日現在の就職率も97.3%と0.6ポイントの改善を見ており、しかもこの就職率は調査開始以来最高の値となっている。 ○2015年3月卒業者(予定者)の状況について 10月1日現在の内定率は、68.4%と4年連続で改善し、リーマンショック前に近いレベルまで回復している。12月1日現在、2月1日現在も80.3%、86.7%と同様の動きである。4月1日現在の就職率も96.7%と同様の改善を見ている。 ○2014年3月卒業者(予定者)の状況について 10月1日、12月1日、2月1日の内定率は、それぞれ、64.3%、76.6%、82.9%とリーマンショック前と比較するとまだ低いが、それでも3年連続の改善となった。そして4月1日現在の就職率は93.9%と前年対比でわずか0.5%ポイント増に止まった。 ○2013年3月卒業者(予定者)の状況について 12月1日現在の内定率は75.0%と2年連続で改善となっている。2月1日現在の内定率は81.7%とやはり改善したが改善度はやや落ちてきている感触がある。そして4月1日現在の就職率は94.4%と前年対比でわずか0.3%ポイント増に止まった。 ○2012年3月卒業者の状況について 「<就職率:震災前水準に回復 今春大卒は93.6%>男女別に見ると、男子94.5%(前年度比3.4ポイント増)、女子92.6%(同1.7ポイント増)。...全体では最も高かったのが07年度の96.9%で今春は6番目。就職率上昇について厚労省は、大学生と大学卒業から3年以内を対象に就職相談や中小企業の求人情報を提供する「新卒応援ハローワーク」を10年に設立したことを挙げ、「中小企業を選択する学生が増えたため」と説明している。」(毎日新聞2012.5.15) 「今春卒業予定の大学生の就職内定率(2月1日現在)は80.5%で、前年同期を3.1ポイント上回ったことが16日、文部科学、厚生労働両省の調査で分かった。96年の調査開始以降では前年が最低だったが、今回は過去3番目に悪く「就職氷河期」と呼ばれた00年(81.6%)を下回る水準が続いている。 厚労省は「企業業績の回復に加え、個別支援策が功を奏してきたが、依然として厳しい水準だ」と分析。年度末へ向けた支援を強化している。」(毎日新聞2012.3.16) 「今春卒業予定の大学生の就職内定率(昨年12月1日現在)は71.9%で、前年同期を3.1ポイント上回ったことが17日、文部科学、厚生労働両省の調査で分かった。96年の調査開始以降最低だった前年に次いで過去2番目に悪い水準だが、昨年10月1日現在の内定率も59.9%(前年同期比2.3ポイント増)で3年ぶりに上昇。文科省は「改善の兆しが見えてきた」とみる一方、厚労省は「円高や欧州の財政危機で景気の動向は不透明感を増しており、予断を許さない」と指摘する。」(毎日新聞2012.1.17) ○2011年3月卒業者の状況について 12月1日現在、2月1日現在の内定率は、それぞれ、68.8%、77.4%と昨年に引き続き大きく低落し、1996年の調査開始後最低となった。就職戦線の厳しさがうかがえる。 4月1日現在の就職率は、91.0%と2000年の過去最低を下回り(当初、東日本大震災の影響で東北地方3大学(220人)が未集計の暫定値が91.1%で過去最低値タイ)、厳しい状況にある。ただし、10月1日現在から2月1日現在までの就職内定率は2000年の値を大きく下回っていたのと比べるとやや持ち直したともいえる。 ○2010年3月卒業者の状況について 2010年の就職戦線については、予想通り09年10月1日現在の就職内定率は62.5%へと急落した。新聞各紙は下落幅が96年の調査開始以来最大となったと指摘している。昨年については年の前半は景気が良かったので企業も内定を多く出し、後半になって取り消すわけには行かなかったので、その分、今年にしわ寄せされていると考えられる。 12月1日現在の内定率は73.1%と図の中で過去最低の水準となった。10月1日現在では過去最低ではなかったので状況は悪化しているといえる。 2月1日現在でも過去最低となり、しかも12月1日現在では過去最低を0.4ポイント下回るに過ぎなかったのに対して、過去最低を1.6ポイント下回るに至っており、状況は一層深刻となった。 4月1日現在の就職率については、91.8%と過去最低の2000年91.1%に次ぐ低さとなった。非常に厳しい状況であるが、最終的には過去最低ではなくなったので少し持ち直したともいえる。 ○2009年3月卒業者の状況について 2009年の卒業生については、派遣労働者の契約解除(いわゆる派遣切り)と並んで、新卒者の内定取り消しが雇用情勢の急速な悪化の象徴的な事象として取り上げられた。 2009年の内定率(就職希望者に占める内定取得者の割合)は2月1日現在では86.3%と前年から2.4%ポイントの悪化となっており、内定が全然得られない学生の増加の他、内定取り消しも影響しているのではないかと考えられる。また2月1日現在の対前年の悪化幅は、2カ月前の12月1日現在の内定率の対前年悪化幅1.1%ポイントの2倍以上となっており、刻々と情勢が厳しくなっている様子がうかがわれる。 ただし、内定率の水準自体は、2000年〜05年のレベルよりは高くなっており、GDP成長率等に見られるかつてないほどの経済状況の悪化にもかかわらず、数字を見る限り、新卒者の就職困難がかつてないほどの状況だとはいえない。すでに10月の段階で1999年以降最も高いレベルの内定を決定しているので企業側としても今更そう易々と内定を取り消すことができないためとも考えられる。そうであるとすると景気が回復しない限り来年の就職は今年以上に厳しい状況となることが予想される。 09年4月1日の就職率は95.7%であり、戦後最悪とも言える経済状況の悪化(図録4400参照)にもかかわらず、対前年1.2%ポイントの低下に止まった。落ち込みの激しい非正規雇用を犠牲にして正規雇用が維持されていると考えるべきであろう。 なお、大卒の就職率(卒業者に占める比率であって、当図録のように就職希望者に占める比率ではない)の推移については図録3165参照。 ○長期推移についての留意点
報道される場合には、普通は、特定の月のデータについてのみ、前年より高まっているかどうか、あるいは過去のピーク時と比べて高いか低いかが報じられるのみであり、また、グラフ化されるとしても3〜8年分ぐらいの結果であることが多いが、ここでは、データが得られる限りの1996年以降のすべての調査月の推移を示している。 こうした網羅的なデータを見ると2つの重要な点が分かる。 第1に、就職が内定しない人は多くなっても、就職が決まらない人は内定が決まらない人ほど多くはならない。内定率の年毎の変動は大きいが、4月時点の実際の就職率の変動幅は内定率ほど大きくないことからそれが分かる。2017年までの実績では、10月1日現在の内定率は良いときと悪い時とで16.0%ポイントの差があるが、4月1日現在の就職率は6.6%ポイントの幅に収まっている。 第2に、10月1日から4月1日までの6カ月間の動きに変化が見られる。10月1日の内定率と4月1日の就職率とのレベル差がかつての20〜25%ポイントが2010年代前半には30〜35%ポイントへと大きくなった(下図参照)。採用側がなかなか内定を出さないのか、それとも応募者側の要求水準が高くなって、本命企業の内定が出るまで、なかなか内定が出たとしないのか、いずれにせよ、内定が最後まで決まりにくくなってきていた訳である。これが、就職戦線をこれまで以上に厳しいものと感じさせる大きな要因の1つだったといえるだろう。ただ、この点は、2018年以降には、再度、かつての状況に戻りつつある。 (2009年3月13日更新、2017年3月18日画面構成変更、就職率内定率乖離推移、2023年1/21・3/17・5/26・11/17更新、2024年1/26・3/15・5/24・11/16更新)
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