地域別の内定率、就職率の動き 最新の10月1日内定率は、高い順に関東、近畿、中部、北海道・東北、中国・四国、九州であり、東京大都市圏と関西大都市圏での早い内定がうかがわれる。もっとも以前より地域差は小さくなっている。 2021〜22年にはコロナ禍の影響で内定率、就職率が落ち込んだが、23年にはおおむね回復傾向にある。 2017〜19年には内定率、就職率ともにおおむね順調に推移している。 2016年の10月1日内定率は、全国的には値が低下しているが、関東、中部では上昇し、それ以外で下落している。これは、リーマンショックによる景気後退の影響で各地方ともに内定率が低下した2010年3月卒業者の動きとは異なっている。すなわち、「企業の面接など選考活動の解禁時期が従来の4月から8月にずれた影響で、企業が内定を出す時期が地方を中心に遅れていること」(毎日新聞2015.11.20)が影響していると考えられる。 2017年の10月1日内定率は、全国的には、上昇傾向にあるが、中国・四国のみ低下した。2017年は就職率も中国・四国で低下している。厚生労働省はこれをサンプルの偏りによるものと見ている(毎日新聞2017.5.19)。 10月1日内定率と翌年4月1日就職率を比べると、地域ごとのバラツキが、内定率で大きく、就職率で小さい点が目立っている(下図参照)。企業の採用までの流れに地域差が認められるのである。 地方圏では低い内定率から出発する傾向にある。三大都市圏のなかで名古屋大都市圏を抱える中部では、内定率の段階では関東や近畿より低い水準ではじまる。名古屋など中部地域は、新卒採用に当たって、他地域より慎重で用心深い(あるいは抜け駆けをしない)という地域性があるといえよう。名古屋の大卒は東京と比べ内定がなかなか出ないからといって、そう慌てることはないのである。 もちろん、このデータは地域別の大学を卒業する学生が対象であり、大学がある地域の企業に必ずしも就職するわけではないので、各地域の企業というより、各地域の大学生の特色が反映されていると見て、名古屋など中部地方の大学生は就職活動がのんびりしている(慎重である)と解することも可能かもしれない。しかし、学生の行動が地域によりそれほど異なるとは考えにくいので、やはり、採用する側の地域企業の特徴の反映と見たほうが妥当だろう。
地域別の浮沈を見ると内定率も就職率も関東が1位である年が多いが、2007〜10年の時期には内定率で近畿が関東を上回っていた。また、2006〜09年の時期には就職率で中部が関東を上回っていた。中部の就職率が関東を上回っていた時期は、自動車産業に牽引されて中部経済が好調だった時期であり、その後に2008年秋のリーマンショックの影響で中部圏が大きく経済が低迷すると中部の就職率も大きく落ち込んでいる(図録5250、図録7500参照)。 地域差は広がっているのか、縮まっているのか 就職率、内定率の地域別推移を長期的に見ると、いずれも比率のバラツキ(大小の幅)は小さくなっており、地域差が縮小傾向にあることが分かる。変動係数で地域格差を見ても徐々に縮小しつつあることがうかがわれる(下図参照)。内定率、就職率ばかりでなく、失業率の地域格差も縮小傾向にあり、雇用指標は全体的に地域格差縮小、全国均質化の方向をたどっているといえよう。(2010年代後半の内定率のみ上昇しているが上記の通り一部地域のサンプルの偏りによるものだろう。)
これはいかなる理由によるものなのだろうか。図録7673では長期的に人口の県間移動が少なくなっていることを示し、その理由として、サービス経済化による産業集積の平準化、あるいはITの発展による情報流通の円滑化を挙げた。政府であれば、地域格差縮小へ向けた施策実施を理由として挙げるかもしれないが、多分、施策効果よりこうした経済構造の変化によるものだろう。 (2014年12月28日収録、2015年5月13日更新、11月20日更新、2017年5月19日更新、2019年5月17日更新、11月17日更新、2020年7月1日更新、2023年11月1日更新、2024年5月24日更新)
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