主要工業県の工業出荷額(製造品出荷額等)の動きを見てみると、1970年代までは東京、大阪、神奈川、愛知の4都府県がトップグループでほぼ同規模であったが、1980年代以降、大きく変化している。

 東京圏、大阪圏に属する諸県(東京、埼玉、大阪、兵庫)の工業が低減傾向を辿っているのに対して、愛知県や静岡県といった自動車産業の比重の高い県では、比較的に堅調を保っているのが目立っていた。特に世界一のメーカーになりつつあるトヨタを抱える愛知の伸びが著しかった。

 愛知は対全国シェアが1983年から1割を越え、2007年に14.1%にまで達した後、2011年には13.0%に低下したが、2016年には14.9%と過去最高となっている。

 2007〜8年段階では、愛知が40兆円後半と群を抜いて多く、その他の工業県は15〜20兆円のレベルに収斂する傾向にあった。その後、下でも述べるとおり、2008年秋のリーマンショック以降、各県で大きな落ち込みとなったが、特に、愛知の落ち込みは大きかった。最近は、こうした落ち込みから回復し、2007〜8年段階の状態の戻りつつあるといえる。こうした工業県が同時に1人当たりの県民所得が高い高所得県である点については図録7450参照。

 東京都の工業出荷額は2002年にそれまでの減少率を超えて急減しているが、これは、産業分類の変更により、出版・印刷のうち出版(新聞を含む)の部分が、製造業から離れ、情報通信業に移行したからである。

 1991年まで全国6位であった静岡県は2002年以降は愛知、神奈川に次ぐ全国第3位に浮上しており、2009年には、ついに全国第2位となり、愛知に次ぐ工業県となった。しかし、その後、ふたたび順位は神奈川、大阪に次ぐ全国4位に低下し、最近は、両県とほぼ同じ水準で推移している。

 こうした都道府県順位変動の1要因となっている業種別の出荷額の動きについては、図録5250参照(製造品出荷額等の定義も)。

 2008年9月のリーマンショックに代表される世界金融危機が世界同時不況への引き金となり、輸出業種から波及して日本の製造業は大きな打撃を受けた。2009年の各工業県の対前年変化はこれまでにない大きな落ち込みとなった。

 全国で70兆円の落ち込みの中、愛知は12兆円、25.8%の減少となった。愛知は、減少幅、減少率ともに主要工業県の中で最大であった。減少率が愛知の次に大きかった神奈川であり、静岡、東京がこれに続いていた。

2009年の対前年変化
  全国計 愛知 神奈川 大阪 東京 静岡 埼玉 兵庫 その他
増減幅(兆円) -70.3 -12.0 -4.6 -3.4 -2.2 -4.1 -2.9 -3.1 -38.1
増減率(%) -21.0 -25.8 -23.7 -18.5 -21.4 -21.5 -19.7 -18.7 -19.9
増減寄与率(%) 100.0 17.1 6.6 4.8 3.1 5.9 4.1 4.4 54.1

(2004年10月12日更新、2008年11月7日・12月2日更新、2011年4月15日更新、2013年3月22日更新、2014年5月16日更新、2016年2月29日更新、2017年9月26日更新、2018年3月2日更新、5月31日更新、2019年6月1日更新)


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