1.年齢別失業率の推移

 失業率は低下しているが、若者の失業率は依然として高いといわれる。ここでは年齢別の失業率の推移を追ってみよう。年齢計の失業率の推移は図録3080を参照。

 15〜24歳の若者層はかねてより一貫して、他の年齢層より失業率が高いことで目立っている。2020年には4.6%と平均の2.8%の1.64倍となっている。これは、学卒者が安定した就職先を決めるまでの比較的長い就職活動期間や若年層における転職の多さなどが原因となっていると考えられる。一時期10%を越えたことがあったぐらいである(2003年)。またリーマンショック後にも一時期9.4%まで高まった(2010年)。

 かつて15〜24歳に次いで年齢計より高い失業率で目立っていたのは、定年後の高年層が中心の55〜64歳だったが、現在では、この年齢層の失業率は平均以下となり、むしろ、25〜34歳の失業率の高さが目立つようになっている。かつては25〜34歳の中堅層になると従業先で雇用が安定したのに、今では、この年齢層は若者の年代の延長の性格を強めているといえよう。一方、55〜64歳の失業率の相対的低下の背景としては、年金制度の充実による職探しの必要性の低下(図録1320参照)、定年年齢の上昇、定年後再雇用制度の導入による高年失業者の減少などが考えられる。

 失業率そのものの値の推移に代えて、次に、年齢合計の失業率を100とする各年代の失業率の水準値の推移を見てみよう。どの程度、各年齢層の失業率は平均と比較して高いのか低いのかを見てみようという訳である。

 これで見ると15〜24歳の若者の失業率の水準は、1991年のバブル崩壊時のピークからやや低下傾向となっている。若者の失業率が最近になって特段に高くなったという状況ではないことが分かる。

 一方、かつて年齢平均とほぼ同水準だった25〜34歳の失業率は1990年代以降、平均と比較して上昇傾向にあり、そのもう一つ上のかつてはかなり低かった35〜44歳あるいは45〜54歳の失業率も2000年代から上昇し、年齢平均に近づいている。

 このように失業率の年齢差は狭まる方向に変化しているといえる。

2.若者の失業率の国際比較

 欧州では若者の失業率の上昇が社会問題となっている。この場合、日本と同じように若者の失業率は平均より高いので失業率が一般的に上昇すると若者の失業率が特に目立つようになるだけなのか、それとも平均と比較して若者の失業率が特に高まっているのであろうか。この点を確かめるために、各国の労働力調査(LFS)の結果をまとめているOECDのデータベースにより、1990年以降の若者の失業率の水準値(平均を100とする値)の推移を調べた(上図参照)。

 これを見ると欧州各国では、概して、若者の失業率は平均と比較して特に高くなる傾向にあることが分かる、米国はほぼ横ばいである。韓国は、日本と同様に水準値が低下傾向にあったが最近はまた上昇している。

 なお、水準値のレベルは以前ドイツが特に低かったのが印象的である。労働力需給に即応して職業教育がかなりコントロールされているからなのではなかろうか(図録3929参照)。一方、欧州の中でもイタリアの若者の失業率の水準値は3倍以上と特段に高く、スウェーデン、英国がこれに続いている。

 ドイツの若年失業率はその後上昇を続けている。ICT化の進展の下で従来型の職業教育の有効性が減じているためかもしれない。

 日本の場合は、唯一、下がってきており、2016年にはついにドイツの水準も下回るに至っているのが特徴である。リストラや雇用制度改革により中高年の雇用上の既得権が打ち破られ、若者にも雇用上のチャンスが与えられている(非正規雇用の拡大という犠牲を伴いながら)ためなのであろうか。

 欧州各国で若者失業率の相対水準が高まり、日本や韓国で高まらないのは、移民人口比率の動きとパラレルである(図録1171)。

 両者の間に因果関係があるとしたら3つの解釈が可能である。1つめは移民の若年層の高い失業率が若者の失業率を高めているという解釈がありうる。2つ目は、自国生まれの若者が、贅沢になって、きつい、危険、きたない職場(いわゆる3K職場)を嫌うようになったのが、若者の高い失業率、移民人口の増加の両方の原因となっているという考え方である。さらに、もう1つ、移民によって若者の職場が奪われ、結果として若者の失業率が上昇したという考えもありうる。最後の考え方から欧州における移民排斥の右派運動が力を得ていることは確かだろう。

 日本では移民の受け入れの代わりに非正規雇用者の増加で対処しているともいえる(非正規雇用者の拡大は図録3240、図録3250)。日本の若者は失業と非正規雇用という選択肢を前に後者を選んでいるといえよう。もっとも、上で失業率の年齢格差が縮小していることを考え合わせると、労働組合の強い欧州と異なり(図録3817)、産業・職業構造の変化の中で中高年の雇用既得権を守るため矛盾をもっぱら移民や若者にしわよせするのではなく、一部は中高年の既得権の打破(リストラ)でも対処している点に日本社会のバランスの取り方を見ることも可能であろう。

(2015年4月20日収録、2018年5月29日更新、2021年3月25日更新)


[ 本図録と関連するコンテンツ ]



関連図録リスト
分野 労働
テーマ  
情報提供 図書案内
アマゾン検索

 

(ここからの購入による紹介料がサイト支援につながります。是非ご協力下さい)