OECDが整理している各国の睡眠時間のランキングを低い方から図にした。出所はタビジン・サイトである。最近の2021年版データに加えて、2006年版のデータも特定国に限られるが掲げている。

 各国の睡眠時間はけっこう差がある。最も良く眠る南アフリカ人(9時間13分)と最も眠らない日本人(7時間22分)の間には2時間近いの差があるのである。

 日本人は韓国人とともに最も眠らない部類に属する。日本やEUの生活時間調査によれば一般に睡眠時間は高齢者ほど長くなる傾向がある(図録2325参照)。日本の高齢化率はOECD諸国の中で最も高いので、最も睡眠時間が長くても良いはずなのに、逆に最も短いという点はやはり驚異的である。

 日本人は多忙なので睡眠時間が少ないという見方もあろうが、日本人と同じように多忙国民と見なされる米国人は南アフリカ人、中国人に次いで睡眠時間が長くなっており、単純な要因論では解釈しがたいようだ。性生活時間はどの国の生活時間調査でも調べられていないのでおそらく睡眠時間に含まれていると考えるとその影響も無視できないだろう(図録2319参照)。

 こうした国際比較からは、日本人は忙しいように見えて、実は起きているときにそれほどテンションが高くない時間の過ごし方をしているので睡眠がそれほど必要ないが、米国や中国などは起床時のテンションが高いために、夜は疲れて長く寝る必要があるというような論を立てたくなる。

 現代人は夜も必ず灯りが点灯しているような都会生活の中で忙しい毎日を送っているので睡眠時間が短くなりがちだと考えられているが、それでは、原始人に近い生活を送っている人々はどれだけ眠っているのだろうかと調べた研究チームがある。自然の中で狩猟採集を中心として暮らすアフリカとボリビアの3つの未開部族の94人に調査のための器具を装着してもらい、延べ1,165日のデータを集めた結果では、彼らの睡眠時間は5.7時間から7.3時間であり平均すると約6.5時間だったという(The Economist October 17th 2015)。案外のものなのである。

 南アフリカ人やインド人の睡眠時間が長いのは国民の中に未開部族に近い側面があるからかもしれない。

 こうした未開部族の短睡眠傾向は、上述の日本と米国・中国との対比論とも整合している。

 2006年版からの変化で目立っているのは、日本人とフランス人の睡眠時間が短くなっている点、及び、オーストラリアを除く米国、ニュージーランド、カナダといった旧英領植民地でもともと長めの睡眠時間がさらに長くなっていいる点、この2点である。

 日本人の睡眠時間の短縮化傾向は社会生活基本調査データの推移を追った図録2320からも明らかである。その要因をそこでは、仕事ではなく、おしゃれ、外出、ネットに割く時間の増加と関連づけている。

(更新前2006年版のコメント)

 以下には、高齢化率との相関を含めて更新前の2006年版のコメントを、上にそのまま再録した部分を除いてそのまま掲げておく。なお2006年版のデータは上図に参考として示している。

 OECD諸国の睡眠時間を比較したグラフを掲げた。出所は、OECD, Society at a Glance 2009: OECD Social Indicators

 各国の睡眠時間はけっこう差がある。最も良く眠るフランス人(8時間50分)と最も眠らない韓国人(7時間49分)の間には1時間の差があるのである。

 日本人は韓国人とともに最も眠らない部類に属する。日本やEUの生活時間調査によれば一般に睡眠時間は高齢者ほど長くなる傾向がある(図録2325参照)。日本の高齢化率はOECD諸国の中で最も高いので、最も睡眠時間が長くても良いはずなのに、逆に最も短いという点はやはり驚異的である。

 日本人は多忙なので睡眠時間が少ないという見方もあろうが、日本人と同じように多忙国民と見なされる米国人はフランス人に次いで睡眠時間が長くなっており、単純な要因論では解釈しがたいようだ。性生活時間はどの国の生活時間調査でも調べられていないのでおそらく睡眠時間に含まれていると考えるとその影響も無視できないだろう(図録2319参照)。


 高齢者の方が睡眠時間が長いから(図録2325)、睡眠時間と高齢化率とは当然相関があるのではとX軸に65歳人口比率、Y軸に睡眠時間を取って描いた相関図を上に掲げた。

 図を見ると、想定外であったが、両者の間には相関が見られない。日本のように高齢者の多い国でも睡眠時間が短い国もあれば、トルコやメキシコのように高齢者は多くないにもかかわらず睡眠時間は長い国もある。

 トルコ、メキシコ、韓国といった途上国、あるいは少し前まで途上国の国を除いて先進各国の分布を鳥瞰すると、むしろ、高齢化率の高い国ほど睡眠時間が短くなるというような傾向も認められないでもない。これはいったいどうした事態か?謎である。

 アジア太平洋諸国の睡眠時間比較は図録2329a参照。

(2010年9月21日収録、2012年8月25日コメント加筆、2015年12月3日未開人についてのコメント追加、2024年3月16日2021年版データに更新)


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