妙な話だが生活時間調査の生活行動の中には「性生活」の時間が明示されていない(図録2325の生活行動一覧参照)。多くの場合、性生活の時間は睡眠時間に含めて回答が行われているのではないかと想像される。そうであれば性生活時間と睡眠時間は相関しているはずである。

 上に掲げた図はDurex社の国際インターネット調査によるセックス頻度(年間回数)と各国及びEUの生活時間調査をとりまとめたOECD報告書の睡眠時間のデータを、それぞれ、X軸とY軸にとって相関図を描いたものである。

 これを見るとアジア諸国と欧米諸国を別々にとってみるとセックス頻度と睡眠時間の間にはかなり相関があるようである。図録2318では信憑性の疑われるDurex社データとはいえ、セックス頻度と性生活の満足度の散布図に民族別、文化別のグルーピングが可能な点からデータの信憑性が逆に感じられるとしたが、ここでは、全くソースの異なるデータが相関していることから、やはり、データの真実性を感じざるを得ない。アジア諸国と欧米諸国の断層は回数重視か時間重視かの違いのようにも見える。

 問題は性生活に時間をかけるから睡眠時間も長くなるのか、それとも睡眠時間を長く取れるから性生活にも時間がかけられるのか、という因果関係の方向である。前者の考え方では、日本人のセックス頻度が世界でも稀なほど少ないから睡眠時間も少なくて済んでいる、となるし、後者の考え方であれば、日本人は忙しくて睡眠時間が短いので性生活にも時間を割けないという脈絡となる。これらのいずれであろうかという点は、余りおおやけに議論されない少子化対策の重要な側面について関わりがあると考えられる。日本人の睡眠時間が短いという点については図録2329参照。


 性生活の時間の大小が睡眠時間の大小を決めているとしたら、未婚者より有配偶者の方が睡眠時間が長い筈である。上に配偶関係別・年齢別の睡眠時間を掲げたが、20代前半までは有配偶者の方が睡眠時間が長いがそれ以降はむしろ逆となる。特に子どもがいる年齢となると有配偶者の睡眠時間はかなり短くなってしまい、それほど睡眠時間の減らない未婚者との差も開く。性生活との関連を大胆に推測すると結婚していれば20代前半までは性生活に時間をかけられるが、20代後半以降になると仕事上の責任も大きくなり、また子どもが生まれて子育てに追われるようになるので睡眠時間も短くなり、性生活にも時間を割けない。そこで2子目以降の出産がますます少なくなる。ということではなかろうか。

 上記の因果関係の方向については年齢ごとに置かれた状況によって変化する複雑な関係ということになろう。国際的にはこうした脈絡が総合化され、結果、高い相関関係としてあらわれるのであろう。セックス頻度の高い国は30歳代以上の有配偶者でも睡眠時間が長いのではなかろうか。

 睡眠と一緒に眠る夫婦の関係は共寝が安眠を促すかどうかやいびきによる睡眠障害の面でも、また性生活との係わりの面でも重要であるが研究されていない。統計データがきちんと取られていないばかりでなく、臨床医学上でも研究されていないらしい。睡眠医療の専門家は次のように言っている。「寝床では、睡眠のほかにも重要な営みがある。睡眠とどのような相関があるか。どうバランスを取るべきか、重要な研究テーマだと思う。残念ながら、論文を見かけたことはまだない」(中山明峰名古屋市立大病院睡眠医療センター、東京新聞「ぐっすりGood Sleep」第46回、2016年3月1日)。中山医師の記事によれば、睡眠医療の受診者はいびきが悩みの中年のカップル連れが多いそうであるが、彼らをカルテ上で記載する際、夫婦とは限らないため、何と呼べばよいか悩んでいたら海外の論文で「ベッドパートナー」(寝床仲間)とされていたのを知って、これなら正確だと妙に感動したという。

 相関図で取り上げた国は19カ国、具体的には、ブルガリア、フランス、英国、ポーランド、ニュージーランド、米国、トルコ、オーストラリア、カナダ、ベルギー、イタリア、スペイン、ドイツ、フィンランド、ノルウェー、中国、スウェーデン、インド、日本である。

(2013年1月5日収録、2016年3月1日睡眠医療中山医師記事引用)


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