世界の主要国・地域における食肉消費の推移を牛肉、鶏肉、豚肉、羊肉と言った肉の種別に追ったグラフを掲げた。

 以下に、国・地域別、そして肉種別に、食肉消費量推移の特徴を整理した。
世界 〜牛豚時代から鶏豚時代へ〜
戦後しばらくの時期には、肉を食べられたのは先進国であり、途上国ではあまり食べられなかった。そこで欧米先進国の肉消費の特徴が反映し、牛肉の消費がもっとも多く、豚がこれに次いでいた。その後、低コスト肉の消費が多い途上国のウェイトが増すとともにBSEの影響が加わって牛肉は消費量が減少傾向となった。牛肉に代わって消費が増えたのは、豚肉と鶏肉である。特に鶏肉は1961年当時の1人年間2.9キロから2021年の17.0キロへと6倍近い大きな増加となっている。飼料要求率の違いから肉の値段は牛肉、豚肉、鶏肉の順であり、しかも鶏肉の相対的な価格低下が顕著であることもあって(図録0219)、いまや、世界的に肉消費の最大アイテムとなっている。欧米や東アジアでは少ない羊肉も乾燥地域などで好まれており、世界的にはけっこう消費量が多い。
米国 〜ステーキからフライドチキンへ〜
米国は植民地時代から牛ステーキの国だった。処女地で肥った牛が多かったからだ。そのせいで米国人は世界一背の高い国民だった(図録2195、図録2196)。20世紀に入ると、黒人貧困層の食べものだったフライドチキンがファーストフード文化の一部として広まった。一方、ステーキ人気はBSEの影響などで衰えて行った。かつて米国では、チキンは育てるのが難しく牛肉より贅沢な料理だったが、鶏を育てて加工するための技術的に進歩した新しい方法が開発され、安価で健康にもよい肉として国民食となったのである。近年は、鶏肉を使ったグリルチキンやフライドチキンをバンズ(パン)に挟んだチキンサンドが人気となりチキン店にバーガー店が加わって外食産業が競い合う「チキンサンド戦争」が起きているという(ここ)。
ヨーロッパ 〜ハム・ソーセージなど豚肉地域〜
米国とは異なり、ハム・ソーセージといった伝統加工品を含む豚肉消費が特徴の地域である。戦後も1980年代ぐらいまでは鶏肉より豚肉の消費の方が伸びていた。1990年代以降は豚肉消費が横ばいに転じる一方で鶏肉が伸び続けている。
日本 〜食の洋風化の中で肉食が全般的に普及〜
戦後になって、それまでの米食中心の食生活から、肉食など食の洋風化が一気に進んだ。豚肉、鶏肉、牛肉、そして羊肉(ジンギスカン)まですべての消費が一時期増勢にあった。羊肉は高度成長期を過ぎると、牛肉はBSE以降、低迷に転じたが、豚肉と鶏肉は伸び続け、最近鶏肉が首位となった。
中国 〜豚肉の国〜
何といっても豚肉の消費が多く、また肉類消費の伸びの大きな部分を占め続いている。経済成長で所得水準が向上した1990年代以降は、鶏肉、牛肉、そして羊肉すべてが伸びている(中国人が消費する食材の世界シェアの推移は図録0300)。
韓国 〜経済成長とともに肉爆食化〜
経済成長とともに豚肉、鶏肉、牛肉の消費がすべて大きく拡大している。その中でも豚肉消費の伸びが特に大きい。豚肉消費と言えば、豚の三枚肉の焼肉料理であるサムギョプサルが韓国料理屋で人気があるのを思い起こさせる。
牛肉 〜BSEの影響が大〜
牛肉の消費については、BSE(ウシ伝染性海綿状脳症、通称狂牛病)が大きな影響を与えている。BSEは、1986年英国で初めて確認され、1990年に英国でBSEの牛から作られたペットフードを食べて猫が死亡など牛だけではなく他の動物にも感染牛組織を介して伝播されることが明らかにされた。1996年英国保健相がが人間に感染する可能性を認めた。その後、2001年9月日本でも千葉県で乳牛1頭、国内初の狂牛病。2003年12月米国がBSE感染牛発見と発表し、日本は輸入禁止。こうした経緯が、米国、ヨーロッパ、日本、韓国において次々と牛肉消費を停滞させる要因となったことが明らかである。
豚肉 〜アフリカ豚熱の影響〜
中国では2018年8月以降に国内で発生したアフリカ豚熱の影響を受け、19、20年の生産量・消費量はともに大きく落ち込んだ。ただし、その後、21、22年と大きく回復している。中国は世界の半分近く豚を消費しているので(図録0300)、これが世界全体の動きにも影響している。
鶏肉 〜低コスト化及びタブーと無縁で大躍進〜
鶏肉は牛肉、豚肉と異なり、食のタブーに触れることが少ない食肉でもあり、世界中で広く消費されている。世界各国で食べられており、揚げる、煮る、蒸す、焼くなどさまざまな方法で調理されている。栄養学や抗生物質の研究の進歩により大量飼育が可能になり、生産費用が下がったのは1950年代で、世界的に消費が伸びる要因となった。戦後大きく躍進したフライドチキンは、カーネル・サンダースが1940年代に創業したケンタッキーフライドチキンが特に有名で、フライドチキンをアメリカ全土に普及させたほか、フランチャイズとして世界各地に展開することに成功したことで、フライドチキンは世界中に広がった。

(2025年2月21日収録)


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