米国では肥満比率が上昇傾向にある。図録によれば1978年に15.0%、1991年に23.3%だった肥満比率が2010年には35.9%と大きく上昇しているのである。肥満は先進国一般の傾向であり、英国や日本でも肥満比率は上昇傾向にある。しかし、米国の場合は、極端なまで肥満者(太りすぎ)が多くなっている点が問題であり、肥満に起因する健康上の問題が深刻な社会問題化している点に特徴がある。 なお、2008年には2年前より若干この比率が下がり、国をあげての対策が若干成果をあげているかに思われたが、2010年には再び比率は上昇した。 米国の年齢別、人種・民族別、教育程度別、地域別の肥満比率は図録8802参照。 日本については、男性は肥満傾向にあるが、女性は、若い層から中高年に痩せ傾向が及んでおり、平均すると肥満比率はそう上がっていない(図録2200参照)。 ここでの肥満(obese)はBMIが30より大きいとしている。170pの身長なら体重86.7s超の人が肥満である。国際的にはこの定義が一般的であるが日本ではBMI25以上を普通肥満としている。 図録の2番目に米国の疾病対策センターが発表した「死亡の実際原因」(Actual Causes of Death、疾病学上の死因とは異なる「実際上の死因」と訳すべきか)では、事実上、肥満を意味する「不適切な食生活と運動不足」が40万人とタバコに次ぎ、それを追い越す勢いであることが判明した。 こうした米国の深刻な状況を紹介した農林水産省の海外農業情報(2004年)が興味深いので以下に紹介する。 「 米国では、従来から国民の肥満・体重過多が深刻な社会問題となっているが、ここにきてこれをさらに裏付けする報告が政府により発表され、併せてその対策も打ち出されることとなった。 3月9日のトンプソン厚生長官の発表によると、肥満や運動不足を原因とする死亡が、過去10年間で33%も増加し、現在の米国人の予防可能な死因のトップであるタバコの喫煙を追い抜き、近い将来、肥満が首位になるであろうということである。 2000年に米国内で過食や運動不足により死亡したとされる人は40万人に達し、これは全体の死亡原因の17%を占めているという。 また、肥満人口の増加に伴い、糖尿病や心臓病、様々なタイプの癌、その他障害を伴う病気を患う人が増える危険性も増加している。肥満による直接的、間接的な社会的損失(医療費の増加と生産性の減少)は2000年で、1,170億ドルに上るとされている。 肥満に関しては、企業訴訟の面からも問題となっており、肥満になったのは食品業界に問題があるとして企業が訴えられることも少なくない。 下院では、肥満を理由とした食品業界への訴訟を防止するための法案(The Personal Responsibility in Food Consumption Act:通称チーズバーガー法案)が276対139の賛成多数で可決されるなど、肥満の問題はまさに全米的な大きな社会問題となっている。」 日本では自殺率が過去最高となり、社会問題化しつつあるが(図録2740参照)、米国では自殺率は日本の半分以下と低い(図録2770参照)。しかし、自殺も肥満による死亡も、ともに社会的ストレスが1つの要因であるとすれば、競争社会の問題が別のかたちであらわれているとも考えられる。 米国では、肥満問題とともに、お金がなくて食料を十分に調達できない食料不足世帯の存在が社会問題となっている(図録8780参照)。 (2004年8月10日収録、2005年10月12日更新、2008年7月29日更新、2011年2月7日更新、2012年9月20日更新、2013年7月16日更新)
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