米国人の肥満比率は世界1であり(図録2220)、米国では肥満が社会問題となっている(図録8800)。それでは、米国人のどのような属性の人々、どのような地域で肥満が深刻なのであろうか。ここでは、こうした点についての図録を掲げるものとする。

 属性別データは、米国の統計年鑑ともいうべきStatistical Abstract of the United States、および地域分布図は米国のCDC(Centers for Disease Control and Prevention)によっている。

 年齢別以外の属性別のデータについては、年齢別のバイアスを除くため年齢調整後のデータ(基準年の年齢構成で統一してデータを再計算したデータ)で比較している。肥満比率はBMI(体重sをメートル単位の身長で2回割った数字)が30以上の者の比率である(日本の基準では25以上だが国際的には30以上)。

 米国計の肥満比率は、33.0%(年齢調整後32.6%)となっている。日本で同じ基準の肥満比率は3%台であるので、約10倍肥満が多いという勘定となる。

 年齢別には、45〜64歳と65〜74歳、すなわち中高年の肥満比率が3割台後半と高くなっている。

 男女別では、男が30.8%であるのに対して、女が34.5%であり、女性の方が肥満が多い。

 人種・民族別には黒人男女(特に女性)とメキシコ系男女(特に女性)の肥満比率が高いのが目立っている。黒人女性の48.1%と約半数が肥満である。学歴別では高卒の肥満比率が38.3%と高く大卒は32.3%とやや低い(といってもそれほど低いわけではない)。総じて貧困層の方が肥満比率が高いといってよいであろう。ただ、白人、あるいは大卒でも肥満比率が30%以上と高率になっているのであり、総じて米国人には肥満が多いといっても誤りではないであろう。

 地域分布図をみると、黒人層が多い地域の肥満率が高くなっている(米国の地域別の人種・民族構成については図録8600参照)。

 所得水準別の肥満度のデータを探ってみると下図の通りである。1990年前後から2005〜08年にかけて、全ての所得階層で肥満度は上昇しているが、所得水準別の構造は余り変わっていない。すなわち、女性について、所得が低い層ほど肥満度が高いという特徴が見て取れる。男性の場合は、所得水準との相関は薄く、2005〜08年では、高所得層の方が低所得層より肥満度がやや高くなっているほどである。なお、米国と比較すると、日本は、肥満度のレベルはずっと低く、また女性より男性の方が肥満が多いのであるが、所得との相関では米国と同様の構造が成り立っている(図録2218参照)。

 データの出所であるStatistical Abstract of the United Statesは、運動やフィットネスについての調査結果も掲載している。これを見ると米国人の36.2%は「運動する時間がない」(少なくとも一度に10分以上の中程度あるいは激しい運動をしていない)と回答している。人種・民族別に見ると、非ヒスパニック白人は、同じ値が、31.9%、非ヒスパニック黒人は47.9%、ヒスパニック系米国人は47.4%となっている(2008年、年齢調整後)。教育程度別でも運動しているかどうかは2倍以上の開きがある。すなわち、貧困層は、食生活もさることながら、運動する時間が取れないのが肥満の要因となっていることがうかがわれる。


(2011年2月7日収録、2013年7月16日所得水準別肥満度データ追加)


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