中国の出生率の推移には出生率が上昇した3つのピークがある。 第1に、一律に人頭割で土地を配分した土地改革(1946〜52年)、そして人民共和国成立後、1950年に制定された婚姻法をきっかけに、それまで身分的に結婚できなかった階層まで含んだ結婚ブームが生じ、その後、出生率が急増した。 第2は、1959〜61年の「今世紀最大の飢饉」に伴う死亡率増加・出生率低下の反動で起こった1963〜71年の出産ブームである。 第3は、この第2次ベビーブームの親たちが子供を産むことから生じた1980年代の第3次ベビーブームである。1979年から一人っ子政策が実施されていたので出生率水準自体は頭が抑えられていたと言える。 1959〜61年の死亡率上昇についてふれておこう。上記グラフの死亡率推移では、この3カ年に通常よりそれぞれ0.5%ポイント、1.5%ポイント、0.5%ポイント程度死亡率が高くなっている。これが天災・人災の飢餓による死者と考えると、当時の人口が65億人(図録8280)だったので、6.5億人×(0.5+1.5+0.5)÷100=1,625万人ほどの死者数が出たことになる。 この飢饉の状況とその理由については後段の「【コラム1】大躍進政策がもたらした1959〜61年の飢饉」に記した。 1973年からの計画出産政策、1979年からの一人っ子政策の結果、中国の出生率は、大きく低下してきているのが特徴である。合計特殊出生率も2017年をピークにどんどん下がってきている。 こうした出生率の動向は、現在の人口ピラミッドに端的に反映している(図録8220参照)。 一人っ子政策は当初適正人口を10億人から6.5億人に減らすなどという過激なものであったが、急速な高齢化進展問題に気づいて「再修正を迫られた..これが84年以降、農村で行われた実質上の緩和策であった」(若林敬子「中国人口超大国のゆくえ」岩波新書1994) 近年の中国の出生率の低下には、日本や韓国と同様の要因の側面が出てきている。「【コラム2】中国の出産事情」はこの点についての読売新聞の報告である。 こうした動きの中で、全人代は2015年12月27日の常務委員会で、すべての夫婦が2人の子どもを持つことを認める人口・計画出産法の改正案を採択し、2016年1月1日から施行した。将来の高齢化の行き過ぎを心配し、政府は、ついに、長く続けてきた一人っ子政策を終らせ、二人っ子政策に転じたわけである。 このため、2016年の出生率は前年の1.21%から1.30%へと上昇した。ところが、国家統計局の発表によると、中国の2017年の出生率は2016年と比べて0.52パーミル減少して12.43パーミル(1.24%)となったという。 出生率の低迷は政策のためというより、他の東アジア諸国と同様な教育熱や教育費の高さなどによるであることが明らかになってきたので、政府では、二人っ子政策も廃止し、出生数の完全自由が検討されているという。 中国社会科学院で人口・労働問題を研究する王広州氏は、「中国はすでに超少子化の時代に突入した」と指摘する。中国では出生数、労働人口の減少に続いて、総人口も減少に転じる日が近づきつつあり、多くの専門家が懸念を表明している。 (最近の状況:歯止めがかからない出生率の低下) 「一人っ子政策」の廃止にも関わらず2020年に0.852%と中国の出生率の低下には歯止めがかからない状況が続いている。 「中国政府は8年前から、「一人っ子政策」として知られる人口抑制政策を段階的に緩和することで、人口減少に歯止めをかけようとしてきた。2013年に打ち出された、夫婦のどちらかが一人っ子の場合に第2子の出産を認めるという、条件付き「二人っ子政策」がその第一歩だ。2年後の2015年には、夫婦どちらも一人っ子でなくても第2子の出産を認める、全面的な二人っ子政策に移行した。さらに、2021年には「三人っ子政策」の推進が発表され、認められた人数を超える出産に数十年にわたって科されてきた罰金が廃止された。にもかかわらず、政府が期待する「出産ブーム」の兆しは一向に見えない」(東洋経済オンライン、2021.12.7)。
(2005年4月30日収録、5月30日更新、2009年11月19日更新、A.センのコメント追加、2011年4月20日張競引用追加、4月21日逸見引用追加、コラム1,2に整理、2018年9月26日更新、2021年12月8日更新、2023年1月18日更新、10月9日合計特殊出生率推移図)
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