国の並びは各地域ごとに乗用車普及率の高い順である。これは乗用車の普及率は所得水準との相関が最も明確であるため、グラフの見通しが最もよいからである。 乗用車の普及率は欧米先進国では70%台〜80%台となっており、中東のレバノン、イスラエル、アジアの韓国、マレーシア、日本でも、同等の普及率に達している。日本は高齢化の影響で乗用車の普及率がやや頭打ちとなっているので、アジアトップの座にはないのだととらえられる(日本の乗用車普及率の推移を掲載した図録6380参照)。発展途上国的な性格の強い国ではなお普及率が50%に満たない国も多い。近年、世界の自動車市場をリードするようになった中国であるが、普及率はなお17%に止まっており、今後の伸びの可能性も大きい。 乗用車は高所得国で普及率の低い国はなく、いわは高所得国の必需品としての性格が強いといえる。 バイクは所得水準とは余り関係なく、特にアジアの特定の国で普及率が特に高いという特徴がある。世界一のバイク国である台湾(図録6376)は対象国となっていないが、アジアのマレーシア、タイ、インドネシア、ベトナムでそろって80%を越えており、一家に一台の水準となっているのが目立っている。アジアでも韓国や日本ではバイク普及率はそれぞれ9%、21%と低く、差が激しい。 バイク普及率はアジア以外では20%台に達する国はそう多くない。欧米ではイタリア、ギリシャといった南欧で高い。中東・北アフリカでは乗用車普及率の低いチュニジア、エジプトの普及率が高く、両者は代替財としての性格を有していると思われる。 ラテンアメリカではチリのバイク普及率は低いがブラジルでは高い。サハラ以南アフリカではナイジェリアだけが35%と特段にバイク普及率が高い。 バイクは所得水準といううより、好きか嫌いかという国民性によってかなり左右されている印象である。 自転車は中東・北アフリカでは普及率が低いが、その他の地域ではバイクと異なり比較的まんべんなく普及しているという特徴がある。70%以上と普及率が高い国としては、欧米ではドイツ、ポーランド、アジアでは日本とタイが目立っている。 こうした特徴を相関分析で見てみよう。以下の図には、3つの乗り物の普及率と所得水準と各地域ダミー(0か1)という各変数相互の相関係数のうち、各乗り物と所得水準との相関、及び相関係数の絶対値が0.3以上のものを掲げた。 所得水準との相関は乗用車が0.907と目立って高く、また、自転車は0.454とやや相関しているという状態であるのに対して、バイクはむしろマイナスの相関となっている。所得水準が高くなると、一部のバイク好き国民を除いて、乗用車に乗り換えていく傾向があるのであろう。日本でもかつては35%ほどの普及率だったときもある(図録6380)。 乗り物に関しては地域ごとの相性が大きく影響する。バイクとアジアダミーとの相関が0.710と最も高いのが目立っている。その他、自転車普及率と中東・北アフリカダミー、サハラ以南アフリカダミーとのマイナスの相関も目立っている。 図録で取り上げた44カ国は、具体的には、米国、イタリア、ドイツ、フランス、スペイン、ギリシャ、英国、ポーランド、ロシア、ウクライナ、レバノン、イスラエル、ヨルダン、トルコ、パレスチナ、チュニジア、エジプト、韓国、マレーシア、日本、タイ、中国、インド、フィリピン、インドネシア、パキスタン、バングラデシュ、ベトナム、チリ、ブラジル、アルゼンチン、ベネズエラ、メキシコ、エルサルバドル、コロンビア、ペルー、ニカラグア、南アフリカ、ナイジェリア、セネガル、ガーナ、ケニア、タンザニア、ウガンダである。 (2015年7月6日収録)
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