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(2020年代−年齢差)

 2021年のOECD調査によると、OECD調査国では若年層の方が高年層と比較して投票率が低いのが一般的となっている。

 その中でも、若年層(22〜29歳)の投票率がもっとも低かったのは日本であり、また若年層と高年層(50歳以上)との年齢差の大きさでは日本がオーストラリア、エストニアにつぐ3番目だった。

(2010年代)

 2010年代のOECD諸国の国政選挙への投票率は90%代の国から50%前後の国までかなりの幅がある。日本は56.0%と韓国、米国、フランスと並んでかなり低い水準にある。上位3位のオーストラリア、ルクセンブルク、ベルギーでは投票が法的に義務づけられている。

 1990年代の投票率と比較すると全体的に低下傾向にあることが分かる。OECD平均では75.3%から67.5%への下落である。現状の投票率が低い韓国、日本、米国、フランスはいずれも投票率がかなり低下している。ドイツ、イタリア、英国といったその他の主要西欧諸国でも投票率は低下している。チリは投票の義務づけが廃止されたので投票率も急落している。

 こうした低下傾向の例外となっているのはデンマーク、スウェーデン、ノルウェーといった北欧諸国であり、むしろ、投票率が上昇している。
(2000年代前半と2018年の比較〜更新前のコメント〜)

 もうすぐ参議院選挙である。

 日本の選挙において、投票率が低下してきている点、及び、若者の投票率が下がって、世代間の投票率の差が拡大し、政治に若者の声が反映されにくくなっている点がしばしば指摘される(年代別投票率の推移は図録5230c参照)。ネット選挙の解禁もこうした観点から関心を集めている。ここでは、国政議会選挙に関して、日本の投票率を世界各国と比較してみよう。

 OECD諸国及び中国を除くBRICS諸国の39か国について、最新と1980年を比較した投票率を掲げておいた(日本の最新は図では2005年衆議院選挙。(財)明るい選挙推進協会によると、2009年、2012年の衆議院選挙の投票率は、それぞれ、69.3%、59.3%)。

 投票率水準は、韓国、米国、スイスで50%を下回る低水準である。一方、ベルギー、ルクセンブルク、オーストラリアでは90%以上の高水準である。1980年段階と比較すると世界全体で投票率が低下する傾向にあることがうかがわれる。日本の投票率水準や低下幅は世界的には中位である。

 投票が法的義務かどうかは余り関係ないようだ。OECDの報告書(Society at a glance 2011)によれば「議会選挙の投票はオーストラリア、ベルギー、ギリシャ、ルクセンブルク、メキシコ、及びスイスとトルコの一部では法的義務となっている。これらの中で投票率が低い国も多い。」

 また、第2の図には、年齢別投票率のデータが得られる30か国について、若年層(16〜35歳)の投票率と中高年・高齢者(55歳以上)の投票率の差を示している。これを見れば分かる通り、いずれの国でも高齢者の方が若者より投票率が高いことが分かる(若者の方が投票率が高い国はイタリアなど4か国のみ)。特に日本の世代間の投票率格差は、世界の中でも最も大きな部類に属する(英国に次いで第2位)。(日本の2007年参議院選挙の投票率は、(財)明るい選挙推進協会によると、20歳代36.03%、30歳代49.05%、この2つの若年層の単純平均42.5%、また50歳代69.35%、60歳代76.15%、70歳以上64.79%、この3つの中高年以上の単純平均70.1%であり、両者の差は27.6%ポイントとなる。)

 同報告書によれば、「国政選挙における高齢者の高い投票率は、人口に占める高齢者割合の拡大とあいまって、政治過程に影響を与え、高齢者に過当に利益を与える社会政策をカットしようとする政府に対して、選挙による制裁を課すというリスクの拡大にむすびつく可能性がある。」

 若い層の方が投票率が低いという傾向があるため、選挙権年齢の引下げによって投票率自体は下がる場合が多い点については図録5230f参照。

 シルバー民主主義ともいうべきこうした状況の是正策については図録1587の「【コラム】シルバー民主主義の是正方策」参照。シルバー民主主義とともに伸張しているシルバー資本主義については以下のコラム参照。

【コラム】シルバー資本主義のゆがみ

 資本主義がシルバー層の膨張により大きなバイアスがかかるようになっている点については、いろいろな論者が指摘している。ドラッガーは「ポスト資本主義社会―21世紀の組織と人間はどう変わるか」(ダイヤモンド社、原著1993年)で、いまや主たる資本家は年金基金であり、そういう意味でシルバー資本主義に変身したと強調している。また、フランスの人口学者・社会思想家のエマニュエル・トッドは「シャルリとは誰か? 」(文春新書、原著2015年)で、既得権を有する高齢者層が経済と政治をゆがめている点について悲憤慷慨している。トッドによれば、シルバー資本主義における経済政策の方向は以下である。

 西洋諸国民の高齢化によって、いたるところで高齢化した有権者集団が生れており、この集団の好む方向へと政治的決定が導かれている。自由貿易もそうした政治的決定の一つだ。また年金の優先的な安定化もそれであって、その定義からして文字通り、高齢者によって好都合な政策だ。物質的な福利を保障するのに、「保障された年金+自由貿易」、換言すれば「安定所得+消費財価格の低下」は無敵である。米国でも、イギリスでも、フランスでも、それが今日まで最も高齢な市民層の所得中間値を上げてきたのであり、最も若い市民層のそれを下げてきたのだ。我らが年金生活者にとっては、物価の抑制を確かにしてくれる市場と、所得を護ってくれる国家の間に、いささかの対立も存在しない(p.248)。

 そしてイスラム教信仰を冒涜する権利を普遍的な世俗主義の衣をまとって主張する「私はシャルリ」デモに見られるような以下のような政治的なゆがみも生じているとしています。

 西洋のどの国の社会にも、シャルリが眠っています。西洋のどの国の社会にも、高学歴者たちと高齢者たちから成る支配的な階層、すなわちグローバリゼーションから利益を引き出す中産階級が存在して、社会の周縁に追いやられている人びと、すなわちその国の労働者たちや移民二世たちに対して、いざとなればいつでも自分たちの特権を、とりわけ、自分たちは何も悪くないという意識を護る構えでいます。(中略)西洋のどの国の社会でも、市民としての実際の権利を享受するこの特権的集団は、不安におびえ、熱に浮かされ、日々増大する経済的不安定によって、また、宗教的価値の代わりに株価を追いかけたり、通貨を偶像化したりする文化の空虚さによって蝕まれています。いたるところにシャルリが君臨していますが、シャルリは自らがどこへ向かっているかを知りません。ポジティブな普遍的価値を意識的に標榜するときさえ、無意識にスケープゴートを探しはじめているのです。いたるところで、かつては民衆層に特徴的だった外国人恐怖症が社会構造の上半分に浸透し、人心がイスラム恐怖症とロシア恐怖症の間で延々揺れ続ける現象が始まっています(p.11〜12)。

 なお、「私はシャルリ」ムーブメントへのトッドの批判がフランス国内で総スカン状態となり、むしろ日本からの共感を得てトッドが救われた気分になった点については図録9528のコラム参照。

 更新前の投票率水準の図で取り上げた39か国は、図の並び順に、韓国、米国、スイス、ポーランド、スロバキア、メキシコ、カナダ、ポルトガル、フランス、英国、エストニア、スロベニア、ハンガリー、チェコ、イスラエル、フィンランド、アイルランド、日本、ギリシャ、スペイン、ノルウェー、ドイツ、ニュージーランド、オランダ、イタリア、オーストリア、スウェーデン、アイスランド、トルコ、デンマーク、チリ、ベルギー、ルクセンブルク、オーストラリア、インド、ロシア、インドネシア、南アフリカ、ブラジルである。

(2013年7月18日収録、19日コメント補填、2016年2月24日コラム追加、2019年9月22日更新、2022年8月12日2021年調査結果追加)


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