柔道 | 空手 | 卓球 | 水泳 | 競歩 | 体操 | 重量挙げ | バスケットボール | レスリング | ボクシング | バドミントン | アーチェリー | フェンシング | 自転車 | 野球 | ソフトボール | ゴルフ | クライミング | スケートボード | サーフィン | 計58 | |
金 | 9 | 1 | 1 | 2 | 2 | 5 | 1 | 1 | 1 | 1 | 3 | 27 | |||||||||
銀 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 14 | |||||||
銅 | 1 | 1 | 2 | 1 | 2 | 1 | 1 | 2 | 1 | 2 | 1 | 1 | 1 | 17 |
1年延期となった東京オリンピックが2021年7月23日〜8月8日の日程で開催された。 7月30日の柔道女子78kg超級とフェンシング男子エペ団体の金メダル獲得で、金メダル数合計17個と1964年東京、2004年アテネの16個を上回る過去最多に達した。 8月5日の競歩男子20kmで銀と銅のダブルメダルの獲得で前回リオ大会の41枚を上回る過去最多のメダル合計43枚に達した。 最終的には、金メダル27個、総メダル数58個と過去最多となった。金メダルはJOCの目標30個には及ばなかったが、グレースノートの予想26個は上回った。 メダル数が過去最多となった背景としては、日本と比べると欧米のコロナ禍の方が深刻だったことや強化体制や事前準備などで地元有利な面があったためである(こうした点は図録3983tも参照)。 新競技や新種目で活躍が目立った。スケートボードでは、ストリート男子の堀米選手ら3個の金を獲得。日本発祥の空手は男子形で喜友名諒、野球・ソフトボールも期待通りにそれぞれ金メダルを手にした。卓球の混合ダブルスでは、水谷隼、伊藤美誠組が世界王者の中国ペアを破って頂点に立った。 競技種目によってメダル数の成績で明暗が分かれている。これにはやはりコロナ禍の影響が考えられる(以下、東京新聞2021年8月11日、12日「延期五輪の足跡」中・下による)。 柔道とレスリングは、対人格闘技という性格から練習で感染する可能性が高いとされ、思うように強化を進められなかったが、ふたを開けてみれば、柔道は金9個、レスリングも金5個と期待以上の好成績だった。ともに直前まで味の素ナショナルトレーニングセンターで調整を続けられたのが幸いした。 逆に、バドミントンは金メダル確実と期待が高かったのに終わって見れれば混合ダブルスの銅メダル1個にとどまった。コロナ禍で国際大会での実戦不足が影響しているとみられる。 マラソンも国内を拠点とする中村、服部両選手はそれぞれ62位、73位と振るわなかったが、延期により代表決定から2年もの間、重圧を背負い続けたことに加えて、これまで大会前に実施してきた米国での高地合宿ができなかったのも要因のひとつである。一方、米国を拠点とする大迫選手はケニア合宿で十分に練習を積んだ効果や海外では周辺の期待の声などのプレッシャーも小さかったことが幸いして6位入賞を果たせた。 コロナによる一年延期が世代交代を進めることができて比較的好成績だったのが体操競技である。メダルには届かなかったがバレーボール男子にも同様なことがいえる。 逆に、競泳陣は世代交代が一年延期で遅れた。個人種目で決勝に進んだ6人のうち男子200メートルバタフライ銀メダルの本多灯選手を除けば、全員20代中盤から30代。個人メドレー2冠の大橋選手も25歳とベテランの域にある。 なお、東京大会のメダル記録のひとつとして47都道府県すべてに金メダリストが誕生した点が挙げられる。ボクシング女子フェザー級で鳥取県出身の入江選手、空手男子形の喜友名選手と野球の平良選手が沖縄県出身者として初の頂点にたったからである(東京新聞2021.8.14)。 (メダル数予想) 米データ会社グレースノートの東京五輪の各国・地域のメダル獲得数予想によれば、日本は金26、銀20、銅14の計60個である。金メダル数は過去最多となるものの、日本オリンピック委員会(JOC)が目標に掲げた30個には届かないとしている。金最多は米国の40個としているが、新型コロナウイルスの影響を受けた東京五輪について「通常よりも予測のできない大会になる」と指摘しているという(時事2021.7.20)。 他方、“コロナ下の五輪”で開催国の利が増しているとして、スポニチ紙のメダル予想では、金メダルは32個、メダル総数は86個と金メダル数は過去最多の64年東京、04年アテネの16個の2倍となるとしている(スポニチ2021.7.21)。 1a.東京オリンピック(コロナ前の段階) (メダル数予想) 今後、内外で数多くメダル予想が発表されるであろうが、1月の段階での東京新聞の予想は金24、銀28、銅30、計82というものである。金メダルは1964年の東京五輪、2004年のアテネ五輪を上回ると見通されている(下表参照)。
(メダル数目標) JOCは東京五輪の金メダル数の目標を過去最多の16個を大きく上回る30個に設定した。JOCの山下泰裕強化本部長(当時)によれば、「一部でその数字に驚かれたようだが、各競技団体が分析した上で出してきた数字」という(東京新聞2018.7.25)。 金メダル目標30個について聞かれた山下泰裕JOC会長は直近の世界選手権で獲得したメダル数は若干足りないが(下表参照)、銀、銅をうまくやっていけば達成できる。(中略)そのためには地の利を生かすことが重要になる」と答え、食事、調整における地元大会の優位性と日本国民の応援を挙げた(東京新聞2020.1.5)。
2.金メダル(種目別)と金銀銅メダル(主要競技別)
3.柔道と全体のメダル数
日本のメダル獲得総数に大きく寄与している柔道男子・女子のメダル数の推移を以下に掲げた。 1992年バルセロナ・オリンピック以後、アテネまでは、金メダル数では柔道における獲得数がいずれの大会でも5割以上となっていたが、北京では44%と5割を下回り、ロンドンではついに金メダル1個で14%となった。リオデジャネイロでは、25%まで回復したがかつてほどの比率ではない。リオデジャネイロでは、金メダル数は多くないが、総数では男子では全階級でメダルを獲得し男女計とともに過去最多のメダル数となった。ただし総メダル数でも全体の3割は越えていない。 リオデジャネイロ大会で柔道のメダル総数は過去最多となった。これには、他の競技と同様、施設、人材面の強化対策が功を奏しているとされる。「ロンドン五輪で史上初めて金メダルゼロに終わった柔道男子を全階級メダルで復活させた井上康生監督は現役引退後の09年1月から2年間、JOCの制度を利用し、英国へコーチ留学。身につけた科学的知見を生かし、国際化する柔道の潮流も踏まえて改革した」(毎日新聞2016.8.22)。 さらに東京大会では総数では過去最多タイ、金メダル数では最多の9個となった。
4.金メダル推移(男女別獲得数)
以下に金メダル数の推移を男女別に掲げた。シドニーまでの金メダル数は男子が女子を上回っていたが、アテネ、北京、ロンドン、リオデジャネイロ、東京と最近の5大会では、女子が男子を上回っている(女子選手比率推移については図録2710も参照)。 メダル数の女性優位は米国の方が顕著である。女子のメダル総数は過去最高の66個と男子の41個よりも多く、3大会連続で女子が男子を上回っている(毎日新聞2021.8.8)。 参加選手女性比率が50%を越える場合があるのは女子チーム競技の参加が大きい。ロンドン・オリンピックの女性選手比率は53.2%であるが、日本選手団の選手293人のうち、女性のみの競技である水泳のシンクロ9人、体操の新体操6人、及び女子チームのみの参加のバレー12人、ホッケー16人、計43人の女子選手の参加が影響している(毎日新聞2012.7.25)。これは日本だけの傾向ではなかった。ロンドンにおける「メダル数上位の米国、中国、ロシアはいずれも参加選手数、獲得メダル数とも女子が男子を上回った。」(毎日新聞2012.8.13夕) ![]() 【過去の記事】2016年リオ〜2004年アテネ 2016年 リオデジャネイロ・オリンピック(各国メダル数は図録3983v)
リオデジャネイロ大会の金メダル数は12個と世界順位は前回の10位から6位へと躍進、過去の大会の金メダル数と比較すると04年のアテネを除くと76年のモントリオール大会以降最多となった。公式メダルランキング(金銀銅順の優先ランキング)でも北京8位、ロンドン11位から6位に回復。また、金銀銅のメダル総数では41個と過去最多となった。 こうした成果については、やはり、オリンピックへ向けたこれまでの長年の強化策が功を奏したという見方が主である。 「出発点は1996年アトランタ五輪の惨敗にある。本格的強化が始まった64年東京五輪以降で最少タイのメダル総数14個(金3、銀6、銅5)だった。92年バルセロナ五輪で、プロ選手の出場が全面解禁され、競技水準が劇的に上がった。危機感を覚えたJOCは01年、国際競技力向上戦略「ゴールドプラン」を作成し、ジュニア選手の育成や、指導者の養成に着手して、国にも支援を働きかけた」(毎日新聞2016.8.22)。 「日本は2000年以降、選手を医・科学の側面からサポートする国立スポーツ科学センターや、各種トレーニング施設と宿泊所が完備されたナショナルトレーニングセンター(いずれも東京都北区)を設置した。競技団体は強化合宿を定期的に実施できるようになり、練習場所の確保などに四苦八苦することがなくなった。08年にはメダル獲得の可能性が高い競技を重点的に支援する制度も立ち上がり、用具・用品やトレーニング機器の開発、映像による分析などが選手らと一体となって行えるようになった。また、前回のロンドン五輪から選手村の近くに「マルチサポートハウス」を設置し、施設内のジムやプール、体育館を選手が自由に利用できるようにしている。これらの選手支援は米国などが以前から取り入れていたが、日本もようやく追い付き、実をつけてきた」(東京新聞2016.8.22社説)。 国は次の東京オリンピックでは世界3位(金メダル数20〜33個)を目標にしている。このため橋本聖子・日本選手団長は総括記者会見の中で強化予算の拡充を求めた。 2016年リオデジャネイロ大会の女子レスリングは金メダル4個という快挙となった。「ピリオドごとに得点をリセットできたロンドン五輪に比べ、攻め続けないといけない現在のルールはスタミナのある日本選手に有利な印象」(東京新聞2016年8月19日「小原日登美の目」)。これが結果として証明されたようだ。 2016年リオデジャネイロ大会の女子レスリング58キロ級金メダルを獲得した伊調馨選手は女子個人種目で全競技を通じてオリンピック史上初の4連覇を達成した。オリンピックでの個人種目4連覇は以下の4選手に続いて5人目となる。
2012年 ロンドン・オリンピック(各国メダル数は図録3983z)
世界にならってオリンピックに対し国家支援が強化されるようになっている。スポーツ基本法(2011年制定)ではスポーツを国家戦略として推進することとされ、2012年春策定のスポーツ基本計画(文科省)では日本の五輪での金メダル順位の目標が「夏は5位以内、冬は10位以内」と設定された。オリンピックの強化策としてはJOC経由で各競技団体に配分される強化費に加えて2008年度から文科省のマルチサポート事業という国の直接支援が実施され、5年目の2012年度にはメダルが有望なターゲット競技に重点配分されるマルチサポート事業の予算(27.46億円)がJOC補助(25.88億円)をはじめて上回った(毎日新聞2012.7.22)。 JOCはロンドンで政府の目標を達成するためには金メダル15〜18個が必要と考えている。そしてJOCの皮算用では、柔道6〜7、レスリング4前後、体操2〜3、競泳2、ハンマー投げ1、サッカー女子1で達成可能とみていた(同上)。ちなみに日本の金メダル順位は前回北京では8位、前々回アテネでは5位であった。 結果は、金メダルは7つにとどまった。日本選手団のメダル目標は上記のとおり金メダル5位以内であったが実際の順位は10位であり、目標達成はかなわなかった。これは旧ソ連各国など外国勢が力を伸ばしてきた結果、柔道の金メダルが女子1個に止まったことが大きく影響している(上段参照)。 しかし、メダル総数は過去最多の38個となった。これは実施競技の半数の13競技でメダルを獲得したからである。練習環境の充実も背景の1つであった。「今回は味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)、文部科学省のマルチサポート事業が本格的に稼働した五輪だった。NTCの効果が表れたのが、フェンシング、アーチェリー、バドミントン、ボクシング、卓球、レスリングなど。これまでは練習拠点に苦慮していたが、NTCの整備により年間で活用することができるようになった。」(毎日新聞2012.8.14) 今後、選手へのさらなる支援が必要という考え方もある。日本選手団の「橋本聖子副団長は「(外国に比べ)日本のスポーツに掛ける予算はまだまだ少ない。(スポーツ予算に対する)メダル獲得率は世界一に匹敵するのでは」とたたえた。また、躍進の一因として橋本副団長はマルチサポートハウスを挙げ、「(現地入り後は)激しいトレーニングが既に終わっているので、コンディショニングが一番大事。ご飯などの日本食や炭酸泉が良い効果を上げた」と分析した。」(毎日新聞2012.8.13) 2008年 北京オリンピック(各国メダル数は図録3984)
オリンピック北京大会における金メダル数は9個、メダル総数25個となった。金メダル、メダル総数ともに前回を大きく下回る結果となった。もっとも一回前の2000年シドニーと比較すると金メダル数、メダル総数とも北京の方が上回っている。 北京の日本選手団はよくやった方だという評価が一般的である。「アテネ以降の世界選手権の実績を加味すれば、ほぼ実力通りだ。」(毎日新聞2008.8.25)という訳である。メダル数の減少を福田日本選手団長はこう説明しているという。「日本の実力はアテネの時点と変わらないが、世界の競技レベルが上がった。」(同上)この「実力」自体が世界と比較すると問題である点は、図録3984の人口比を考慮した評価を参照。 北京オリンピックでの特徴は、アテネで活躍した選手がそのまま力を維持したことである。競泳男子平泳ぎで連続2冠を達成した北島康介選手をはじめ金メダルのうち7個が連覇だった。 なお、北京オリンピックのメダル数が関心を集めている中、「「金」10個なら株高?−五輪効果に市場も期待」という新聞記事で、ロサンゼルス五輪(1984年)以降の6大会の開催期間中の日経平均株価を調べると金メダル10個のロスで3.5%高、16個のアテネで1.4%高、一方、5個以下の4大会でいずれも下落だった点から、株式市場からも「頑張れニッポン!」コールが高まってきたと報じられた(東京新聞2008.8.15)。 2004年 アテネ・オリンピック(各国メダル数は図録3985)
オリンピック・アテネ大会における金メダル数は16個と過去8大会を上回り、過去最高の東京大会と同じであった。メダル総数は、過去最高のロサンゼルス大会を上回り、過去最多の37個であった。 どうしてアテネ・オリンピックでメダルが増えたかについては、政府の支援策強化、若者のマインド変化、女性力の向上、訓練方法の改善、個人種目選手の海外高地特訓、ドーピング検査強化の影響などがあげられていた。 (2004年8月22日収録、2008年8月16日メダル数ジンクス記事追加、8月17日柔道メダル数の表追加、8月25日更新、8月26日種目集計、コメント追加、2012年6月27日男女別金メダルのグラフ追加、7月23日ロンドン・オリンピックの項作成、7月25日女性選手比率コメント追加等、7/31・8/2・8/6・8/10・8/12・8/13更新、2012年8月14日コメント追加、2016年8月13日柔道結果、8月17日更新、8月18日・19日・20日・22日・23日更新、9月20日図にランキング推移追加、2018年7月29日金銀銅メダル(主要競技別)の表、2020年1月5日2019年世界選手権メダル数、1月24日メダル数予想、2021年7月24日直近のメダル予想、7月25日2021東京五輪の日本メダル数表、8月8日最終結果、8月14日コメント拡充)
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