月刊『創』篠田博之編集長は最近の週刊誌の誌面変化についてこう言っている。

「週の前半発売の『週刊現代』『週刊ポスト』『週刊朝日』は概ね高齢者向け実用情報へ誌面をシフトさせ、木曜発売の『週刊文春』『週刊新潮』『女性セブン』はニュースに力をいれるというふうに、週刊誌は大きく二つの方向に分かれつつある」。紙とデジタルの役割分担も最近の傾向だ。「今や『週刊朝日』は実用情報とアイドル路線にシフト。事件ものはデジタルサイト「AERA dot.」で、と社内で棲み分けがなされている」(東京新聞「週刊誌を読む」2020年7月12日)。

 こうした変化の背景として週刊誌の読者層の変化がある。これを毎日新聞社が行っている読書世論調査からデータで示そう(なお、コロナを機にこの調査は廃止されたので2019年が最終データとなる)。

 週刊誌の読者層はさまざま。要約すると、中高年層が読む週刊現代、文春、新潮、朝日、ポスト(現代、ポストは男性向け)。女性30代以上が読む女性週刊誌。若者向けの男性誌と女性誌。30代〜50代が読むビジネス誌。

 パーセンテージの最高は、2019年では、男性の場合、「週刊文春」、「週刊新潮」を読む70歳以上の27%、女性の場合、「女性自身」を読む70歳以上の30%である。

 毎日新聞社が1947年から行っている読書世論調査の2019年結果によって、主要週刊誌をこの1カ月に読んだことのある回答者の割合(読書率と呼ぶことにする)から、性・年齢別の読者層を探ってみよう。参考のため2013年の結果も数字なしで示した。新聞の広告や電車の中吊り広告で、主要な週刊誌の見出しが嫌でも目に付くが、それらの週刊誌の読者層に合わせた記事であることを理解しながら見ると興味深い。

 各誌の年齢計の読書率は図録3969h参照。コミック誌については図録3969e参照。また各週刊誌の発行部数については図録3968、図録3969参照。

 発行部数の多い主要な週刊誌として、週刊現代、週刊文春、週刊新潮、週刊朝日、週刊ポストなどがあるが、これらの読者には中高年層が多い。

 これら5誌のうち、週刊現代と週刊ポストは男性の読者が女性の読者を圧倒しており、オジサン週刊誌という名が適切な雑誌となっている。中高年の性関連記事、ヌード写真がこの2誌に多く、その他には少ないのもうなづける。この2誌では表紙に肌も露わな美女の写真が多いのに対して、その他3誌の表紙は、週刊文春と週刊新潮は絵柄、週刊朝日は男女いずれかのタレントの写真とかなり趣を異にしている点も読者層の違いを反映している(末尾新聞広告例参照)。

 また、年齢的には、週刊ポストは60代及び70歳以上の割合が最も高いのに対して、その他4誌は、70歳以上が最も高くなっており、全体として最も読書率の高い週刊文春と週刊新潮は年齢傾斜が非常に高いことも特徴となっている。いまや主要な週刊誌は老人向けのメディアなのである。

 読者率を2013年と比較すると全体的に週刊文春の上昇と週刊現代、週刊ポスト、週刊朝日の低下が認められる。年齢ピークの変化としては、週刊現代が60代から70歳以上にシフトし、週刊ポストが50代から60代〜70歳以上へとシフトしているのが目立っている。

 30代〜40代に愛読者となったサラリーマン層がそのまま高齢化していって、愛読者層の年齢更新がなされていないものと見られよう。

 ただ、週刊文春だけは40代以下の読者層が増えており例外となっている。文春砲と命名された政治家、芸能人等の電撃スクープが功を奏しているのであろう。

 全体として、中高年というより高齢者の読者が増えているためか、シルバー層向け性関連記事、あるいは健康記事だけでなく、「いかに死ぬか」というような高齢者には関心が低かろう筈もない話題を最近はあからさまに取り上げている(末尾新聞広告例参照)。

 2014年の当図録掲載当初では、なお、めずらしかった死への準備に関する記事が、だんだんと多くなり、ついに2019年には、各雑誌が「終活」特集を競い合うに至っている。
  • 週刊朝日2月15日号「葬儀をせずに幸せに逝く」
  • 週刊ポスト2月15・22日号「親が『死んだ時』にいちばん大変な『葬式』と『相続』の手順」
  • 週刊文春2月14日号「『死後の手続き』35問 あなたの悩みに答えます!」
  • 週刊現代2月16・23日号「『最期の手続き』本家本元第8弾」
 これらを紹介した月刊『創』篠田博之編集長が次のように言っているのはもっともなことだろう。

「各誌とも大きな見出しを掲げており、それが新聞や車内のつり広告に毎週のように躍っているという、考えてみれば異様な光景だ」。(高齢化した)「読者の需要に応えるのは当然とは言え、各誌の紙面を見ながら、これではますます若い人が週刊誌を読まなくなってしまうのではと、つい心配もしてしまう」(東京新聞「週刊誌を読む」2019年2月10日)。

 週刊現代元編集長の元木氏は政権批判の気概を失った現状に対して「高齢者向け年金遺言雑誌になった現代やポストを見るたび、ため息が出る」と言っているそうだ(同2020年7月12日)。

 女性週刊誌の老舗である女性自身と女性セブンは女性の中高年の読者が多い。ただし、女性自身は70歳以上、女性セブンは60代の割合が最も高い。an・anは10〜30代の読者が中心の若年向き女性誌である。

 一方、男性向け青年週刊誌ともいうべきは、SPA!や週刊プレイボーイである。前者は30代、後者は20代の割合が最も高くなっており、やや年齢層に違いがある。

 ビジネス誌としては日経ビジネスと週刊東洋経済を取り上げたが、30代〜50代の割合が高いのが特徴であり、働き盛りの男性の読者が多い雑誌である。SPA!や週刊プレイボーイとは異なって女性の読者も一定数ある。

 年齢層のかたよりに加え、週刊文春、新潮、朝日の3誌を例外として、男性向けか女性向けかという読者層のかたよりが週刊誌の特徴となっている。スポーツ新聞やタブロイド新聞も同様の特徴をもっているが、一般の全国紙や地方紙の新聞はこうした年齢、性別による読書層の違いというより、政治姿勢や地域性で特徴を出しているのと対照的である。

 参考までに以下に週刊現代と週刊新潮の新聞広告や表紙を掲げた。

 週刊現代の記事内容は高齢者の資産として重要性をもっている「株」の話題、若い頃から親しんでいる映画俳優の話題、若者より投票に行く可能性が高いことを反映した選挙の話題、そしてお決まりのセックス記事とヘアヌードから構成されており、オジサン雑誌の本領発揮というところである。男が女に比べて性生活に関心が強いことは下に掲げた毎日新聞と埼玉大学の共同調査の結果からも明らかである。そして最近は身近に迫る「死」の話題が多い。「70過ぎたら”死ぬのが楽しみ”」や「夫婦はどちらかが先に逝く「最後はひとり」に備える」といった記事には、高齢者心理のある意味では盲点になっていたようなところにここまで突っ込んでいくのかとやや驚ろきを覚える。


 週刊文春の方は、似た傾向があるが、女性読者を考慮してか、性や女性の裸は取り上げず、せいぜい女優や女性歌手の話題にとどまっている点に違いが認められる。「ガンにならない食べ方」といった健康記事が入っている点、また「孤独と欲望の陥穽」という表題で京都殺人妻事件を大きく取り上げている点は高齢者読者の関心事に沿った誌面構成を感じさせる。

 こうした記事内容である理由は性別・年齢別に特化した読者層をもっているためだと理解すれば、電車の中吊広告など公共の場にこうした記事内容が露出していることからこれが国民一般の関心事なのだと誤解してしまうことがなくなるだろう。


(2014年12月8・9日収録、12月25日老後の性生活意識について図を追加、2018年10月5日更新、2019年2月10日篠田氏引用、11月18日更新、2020年冒頭に篠田氏要約の最近の動向、2021年2月24日最新週刊現代表紙、2023年1月25日更新)


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