OECDは、子どもの国際学力テスト(PISA調査)、及び大人の国際学力テストともいえる成人スキル調査(文科省の命名では国際成人力調査、略称はPIAAC調査)を実施しており、ともに国際的な関心のまととなっている。 後者の成人スキル調査については、これまで、以下の図録で結果を紹介した。
両親の学歴で知力に差があれば社会階級の間で流動がなく、階級は固定的であるということになるし、差がなければ生まれがどんなでもその後の知力獲得に差がなかったことになる。社会階級の固定性は、両親の所得階級別の子ども世代の所得格差を調べるのが王道であるようにも考えられるが、同じことが両親の学歴と子ども世代の知力の間の関係からもうかがわれる筈である。 結論からいうと、上表のように、両親のいずれもが高卒未満といずれかが大卒以上の間の得点差から見て日本の格差は、読解力で23か国中20位、数的思考力で22位と最低に近く、先進国の中で日本はもっとも社会階級が流動的であると判断できよう(日本より得点差が小さいのは読解力ではキプロス、エストニア、オーストラリア、数的思考力ではキプロスだけである)。 逆に、得点差が大きい国は、読解力でも数的思考力でも1位が米国、2位がドイツであった。この2カ国では、両親の学歴がいずれも高卒未満の者の知力得点は際立って低く、低学歴世帯の子ども世代は非常に厳しい状況にあると考えられる。米国は貧富の格差が拡大しているためであろうし、ドイツは公教育の中で早期にその後の職歴コースが選別されるためと思われる。あるいは、図録3929で見たように両国はかなり以前に高学歴化が進んでしまっており、低学歴世帯が移民を含む落ちこぼれ層として社会の底辺層に沈んだままだからかも知れない。 米国、ドイツだけでなく、主要先進国の中ではフランスや英国も階級差が大きい。 最後に、両親の学歴による知力格差が全体の知力レベルにどの程度関係しているかを両者の相関図で確かめておこう(下図)。 両者の間の相関度は低いが、両親の学歴格差が大きいほど、すなわち社会階級の流動性が低いほど、全体の知力レベルも低くなる傾向が認められる。日本や北欧諸国では階級差が小さく知力レベルは高くなっており、逆に、米国、英国、フランスでは階級差が大きく知力レベルも低くなっていることが特に数的思考力で明らかであろう。 親の社会的な地位と子どもの学力との関係でも同様のことがいえる点については、PISA調査の結果を分析した図録3939d参照。 対象23カ国を読解力の図の順に掲げると、日本、フィンランド、オランダ、オーストラリア、スウェーデン、ノルウェー、エストニア、ベルギー、チェコ、スロバキア、カナダ、韓国、英国、デンマーク、ドイツ、米国、オーストリア、キプロス、ポーランド、アイルランド、フランス、スペイン、イタリアである。 (2019年6月24日収録)
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