何れの国でも、1番多い答えは「夫婦」(結婚していないパートナーを含む。以下同様)である。「夫婦」という回答の割合は日本が一番高く、唯一、半数を越えている。 2番目には、日本を含め、「友人・知人」が来る場合が多い。ただし、上海、インド、ベトナム、米国は「母親」、台湾は「きょうだい」が2番目となっている。 日本人は深刻な相談事をする場合は、もっぱら夫婦相互に依存するという体質が明確に見て取れる。日本人は夫婦の緊密さが世界一なのである。この夫婦関係の緊密さは高齢者の心の支えについての意識調査でも日本人の特徴であった(図録1307参照)。離別者・死別者の自殺率が高いのも同じ理由だろう(図録2750)。 こうした結果を、日本人の夫婦は仲良しで好ましいと感じるか、あるいは夫婦以外の人間関係が希薄で社会の絆の強化の必要性を感じるかについては、見方が分かれるだろう。 職場や地域や親せきとの関係が希薄となる一方で家族が一番大切という意識が強くなっている点は図録2412を参照。日本の場合は、この傾向が行き過ぎとなっている可能性がある。2011年の東日本大震災がこの点について反省する機会となったことは記憶に新しい。 日本人がもっとも夫婦で依存し合うのは何故だろうか。私も「ワカンナイ」状態が続いたが、日本の家制度の影響であるのではないかと思いついた。この点については、巻末のコラム「夫婦が同志なのは家制度の影響か?」参照。 「父親」については、相談相手として低い回答率である場合が多い。父親が相談しにくいというのは世界共通なのだと分かる。なかでも日本は1.5%と韓国とならんでもっとも低くなっており、父親との疎遠さが目立っている。日本、韓国に次いで父親の値が低いのは香港、シンガポール、台湾の順であり、やはり、儒教国における父親の近寄りがたさがあらわれていると思われる。もっとも北京や上海は父親の比率が低くなく、母親との差も小さい。儒教発祥の地である中国では周辺儒教圏とは父親の位置づけが異なっているといえよう。 母親については、ベトナム、米国、インドで15%を超えて高いのが目立っている。儒教国の低さがむしろ特殊なのであろう。日本も母親に関しては普通の水準である。 米国で夫婦の割合が他国と比べ最も低く、母親の割合が相対的に高いのは、夫婦関係が大切なだけに、重大な相談事を話し合ったために夫婦関係が壊れることを恐れ、むしろ、関係がもっとも壊れにくい母親に相談する割合が多くなっているのではないか、という解釈については図録2307参照。実際、図録2430で見たように、米国の白人は母親をけむたく思っている割合が多く、母親に親しみをもっているから母親に相談するのが多くなるわけではないことが分かる。 きょうだいは国による違いが余りないのが特徴といえる。 相談相手がいないという回答率は、シンガポール、韓国、香港が6〜7%台とやや高くなっている。日本は2.5%とそう高くない。夫婦が相談相手になりうるからだろう。 相談相手が夫婦といっても、男から見たパートナー(妻)と女から見たパートナー(夫)では、位置づけが異なることも考えられる。従って、冒頭の図の夫婦の値のみを男女別にあらわしたグラフを上に掲げた。
これを見ると夫婦を一番大切な相談相手と考えている者は、日本の場合、男の方が10%ポイントほど多くなっている。昔ながらの夫唱婦随という言い方から女の方が夫に相談することが多いという見方は誤りで、男の方が女に依存しているというのが日本人夫婦の実態であるようだ。しかもこの男女差の値は日本が図中の国の中で米国を除くと最も高いのである。 なお、多くの国で男は女に依存しており、女の男依存が目立っているのはインド、及び北京、上海である。米国の場合も男の値が女を上回っているが、これは、男性の女性依存というより、まず妻の意向を聞いてからでないとというレディーファーストの考え方に基づくものかもしれない。
(2013年3月27・28日収録、2014年5月20日・21日コラム追加、6月7日夫婦についての男女別結果追加、2018年1月11日更新)
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