母親といつまでも仲が良いとその息子はマザコンなどと呼ばれたりする。古い調査だが、子どもから見て母親はどういう存在かを、米国と日本各地の中学三年生を対象に、出だしの文章の続きを完成させる方法で調査した結果を掲げた(調査は対人関係の多くの問からなっているが、ここでは母親のみの結果を抜き出し)。

 「楽しい」「甘えたい」といった肯定型の反応の割合がおおむね過半数を占めているが、米国の白人男女と沖縄の男子のみは5割を切っているのが目立っている。米国でも黒人はむしろ男女とも8割近くと多くが肯定型であり、母親に親しみを感じている割合が大きいので、米国白人の肯定型の少なさはなおさら際立っている。すなわち、米国の白人はマザコンからもっとも遠い。米国の白人にとってむしろ母親はけむたい存在である点が目立っている。それだけしつけも厳しいのだろう。

 日本の中で米国の白人と似ているのは、高知である。高知の反応は否定・受動型が男子では秋田に次いで多く、女子では日本で最多となっている。高知の中学生にとって母親はともかくけむたい存在であるようだ。この結果を資料の祖父江孝男「県民性」(1971)では「案外、母親の性格が強いことに関連しているかもしれない」(p.45〜46)とし、高知県で離婚が多いのは県民性によるものだという考え方のひとつの証拠としている。

 逆に男子で母親に対して肯定型が多いのは、米国の黒人のほか、日本では岡山と東京であり、これらの地域はマザコン地域といえるかもしれない。

 図録2428で見たように相談相手として日本人は配偶者を重視するが米国人は母親を結構重視している。ここで、古い調査結果を取り上げたのは、実は、米国人はマザコンだから母親と大事なことを相談する割合が多いわけではないことを示すためである。

(2019年1月13日収録、旧図録2430は図録2438へコード変更)


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