そこで、OECD諸国と若干それ以外の国について、図録9020よりデータ年次を新しくするとともに、移民一般ではなくEU外からの移民と自国生まれの出生率の差を図録に掲げた(ヨーロッパ以外の国は移民一般との差だが)。 対象国の自国生まれの出生率は1.5前後、あるいは高くても1.9とそれほど大きくないが、移民の出生率の方は3以上から1以下まで大きな差がある。そこで、自国生まれの出生率との差も大きなプラスからマイナスまでかなり幅がある。 出生率についてのEU外移民との差が最も大きいのはキプロスであり、フランス、ポルトガル、ドイツと続いている。25か国ではプラス、すなわち移民の出世率の方が高いが、エストニアからハンガリーまでの7か国では逆転している。 ヨーロッパ以外の移民一般との差でも大きなプラスのコスタリカ、米国、カナダに対して、オーストラリアと日本はマイナス、すなわち移民の方がむしろ出生率が低くなっている。 主要先進国で移民との出生率差が大きいのは、フランス、ドイツ、イタリア、米国、カナダなどであり、英国は比較的小さく、日本では逆転している。 国による移民との出生率差がこのようにプラスからマイナスまでかなり幅があるのは、図録1170eで見たような移民出身地の違いが影響していると見られる。 なお、この点を具体的に確認するため、以下に特定国について、移民出身地別の出生率をかかげた。移民の出身地がEUやアジアでは自国生まれとの差が小さく、中東・アフリカ出身の移民では差が大きいことが分かる。 さらに、中東・アフリカ出身の移民でも2011年から2021年にかけて出生率は低下しており、自国生まれとの差も縮まっている点も重要である。かつてほど移民との出生率の差は大きくないのである。移民出身地自体で出生率が下がっているのと移民の出生行動が移民受け入れ国に同化してきている(いわゆる文化変容)といる2側面からこうした傾向が生まれていると考えられる(この点は下のコラム参照)。
図で取り上げた国は、移民女性との比較では、フランス、デンマーク、ノルウェー、英国、スウェーデン、オランダの6カ国、外国籍女性との比較では、フランス、イタリア、ベルギー、スペイン、オーストリア、スイスの6カ国である。 (2024年3月30日収録、コラムは図録9020を引き継ぐ)
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