図では、2005〜2014年に継続して調査対象となっている11か国平均の各国評価の時系列変化グラフを掲げた。対象国には高所得国から低所得国まで人口の多い国が含まれているので概ね世界の評価と等しいと言っても良かろう。公表はその年の春であり、前年の終わりから当年のはじめぐらいまでの時期の意識をあらわしている(例えば日本について、2013年は前年12月22〜23日に1560人対象、2014年は1月18〜19日に1522人対象、いずれも20歳以上の面接調査)。 値は、「それぞれの国が世界に対して与えている影響は概してプラスですか、それともマイナスですか」という問に対して、概ねプラスという回答率から概ねマイナスという回答率を引いた値である。プラス値ならプラス超過、マイナス値ならマイナス超過である。 2014年の動きとしては、米国、日本、EU、ロシアが昨年に引き続き評判が低下しているのが目立っている。ただし、調査の時期は、おおむね、ソチオリンピック(2月)と重なり、クリミアのロシア編入(3月)の前であるので、ロシアの評価はそれほど下がっていないと解することができる。南シナ海の領有権問題の顕在化(5月)はなおさら中国の値にまだ影響を与えていない。 日本への評価は2年継続して低下しているが、どのような国の国民の評価が特に低下しているのかを見るため、2013年から14年にかけての評価点(「プラス回答率」マイナス「マイナス回答率」)の変化から探ってみよう(下図参照)。 日本評価の悪化は、アジア太平洋地域、ラテンアメリカ、アフリカで見られ、ヨーロッパやロシアでは悪化していないことが分かる。アジア太平洋地域の中でも、米国、カナダは3〜10ポイントの悪化であるが、尖閣をめぐる対立が生じた中国の28%ポイント減は例外としても、アジア地域の韓国、インドネシア、インドでは20%前後のマイナス変化となっている点が目立っている。もっともオーストラリア、パキスタンではむしろプラス変化と同じではない。もっともインドネシアはかなり高い水準からの低下にたいして、韓国、中国はかなり低い水準のさらなる低下という大きな違いがあることも図から読み取れる。
EU評価の低下は日本より1年早くはじまっているが、この点については図録j017参照。 過去を振り返ると、2013年の動きとしては、日本、中国、インドの低下と英国の上昇が目立っている。評判の低下については、日本は新しく政権についた安倍内閣のナショナリズムに傾斜した対外姿勢、中国は、日本の評価低下と共通する尖閣問題、及び国内の汚職問題、インドは女性に対する処遇のスキャンダルが影響していると考えられる。英国の評価上昇は、オリンピック効果が影響していると考えられる。 2012年の動きとしては、「最悪の傾向にあるイラン、パキスタン、北朝鮮。マイナス圏を低迷する中国、ロシア(ただし中国は最近は改善傾向)。マイナスからプラスへの回復目立つ米国。もともと評価の高い日本、ドイツ、カナダ。2012年は欧州の債務危機の影響によりEUやドイツ、フランスなどEU主要国の評判が低落」といったところであった。 米国の一時期の評判の悪さと評判の回復は、2003年にブッシュ大統領がイラク戦争をはじめ、2008年のオバマ大統領就任、2010年イラク戦争の戦闘終了宣言、2011年12月米軍イラクから完全撤収という流れが影響していると考えられる。 なお、この調査の2010年ほかの結果については、どこの国の国民ががどこの国に対してどう評価しているかを以下の図録で詳しく取り上げているので参照されたい。
(2012年2月24日収録、5月11日更新、2013年6月11日更新、2014年6月4日更新)
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