英国BBC放送が定期的に行っている世界世論調査では主要国に対する各国国民の評価(世界にプラスの影響を与えているか、それともマイナスの影響を与えているか)を調べている。同調査はBBCの委託を受け、民間調査機関グローブ・スキャン及び米メリーランド大学が実施したものであり、2013年調査では世界25カ国、約2.6万人(各国約1,000人)の成人を対象にアンケート調査を実施している。留意すべきは、評価する対象は国であるが、評価者は各国国民である点である(例えば日本国への評価であり日本人への評価ではない)。すなわち国家間の外交的立場を直接表現しているものではない。

 ここでは、世界のリーダー国であることを否定する人は少ない米国について、各国国民がどう評価しているかを図にした。

 世界全体では「プラス評価」が44%、「マイナス評価」が35%となっており、プラスがマイナスを9ポイント上回っている。概してプラスには評価されているもののはっきりとマイナスと考える者も多く、毀誉褒貶の多い評価といえよう。リーダー国としては善悪を越えてかなり思い切ったこともせざるを得ないからと捉えることもできよう。他国に比べ米国へのプラスとマイナスの評価がどちらも多い点については、図録8014を参照されたい。また米国の評判の時系列変化は図録8015参照。

 つぎに各国国民の米国評価の違いについてであるが、最もプラス評価が多いのは、アフリカのケニア、ガーナ、ナイジェリア、あるいは南米チリ、アジアの韓国といった諸国の国民である。

 ラテンアメリカについては、モンロー主義の時代から米国が各国の政権・政策に口出しすることが多く、米国人がグリンゴなどの蔑称で呼ばれるなど米国はもともと嫌われ者の国になっている。と私は思っていたが、この調査の結果では、隣国のメキシコを除くと、世界平均より評価が高くなっている。

 ヨーロッパでは、ポーランド人、フランス人の評価は比較的高いが、ドイツ人、トルコ人、ギリシャ人、ロシア人の評価は低い。

 ここで、以下に、「その他」の比率をあいまい回答比率としてX軸にとり、プラス評価からマイナス評価を引いた値をプラス超過度としてY軸にとった相関図を作成してみた。


 各国国民はプラス超過度が高いほど、あいまい回答比率が低いという右下がりの傾向が認められるが、これはまあ当然のことであろう。むしろ興味深いのはこうした傾向から乖離した例である。

 韓国人と日本人は、プラス超過度ではほとんど差がないが、あいまい回答比率はまったく正反対となっており、両方とも、方向は反対であるが一般傾向から乖離している。韓国人のほとんどは「プラス」か「マイナス」がどちらかを答えているのに、日本人はどちらともいえないというような回答が極めて多いのである。こうした傾向は中国に対する評価でも同様であった(図録8190参照)。白黒はっきりさせないと済まない韓国人と白黒をはっきりさせないで物事に対処する日本人という国民性の違いによるものと考えられる(日本は面接調査、韓国は電話調査の結果なので、調査過程の違いによる側面の可能性もある。図録8016参照)。日韓の「わからない」の回答率の差のその他の典型例は、妻は夫の親族を優先すべきか(図録2424)、海外買春をした知り合いがいるか(図録8026参照)という質問への答えに見られる(日本人の中間的回答好みについては図録9520コラムも参照)。

 北朝鮮の国境近くの山村で生まれ、日本に来て日本語学校に通い日本の大学で観光を学ぼうとしている権賢珍さん(21)はこう言っている。「居酒屋でバイトしている。時給1000円。韓国では300円から400円くらいなので日本はいい。私が間違えたときにも、日本人はよく「すみません」とあやまるので、「あっ、どうしよう」と戸惑う。」(東京新聞2010.7.13東京発)あやまっているのでなく、分かっている筈のことをことさら指摘するのはあなたを尊敬していないようで悪いんだけれど、といっているだけであろう。日韓の国民性の違いはこんなところにもうかがえる。

(2010年7月5日収録、7月14日コメント追加、2013年6月14日更新)


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