ここではイスラエルに対する諸国民の評価をグラフにした(時系列変化は図録8015)。 イスラエルに対する世界からの平均的評価は、プラス評価20%に対してマイナス評価52%とマイナス評価が大きく上回り、北朝鮮、パキスタン、イランと並ぶ悪評4カ国の1つとなっている(図録8014参照)。 世界の諸国民の中でプラス評価がマイナス評価を上回っているのは米国とガーナ、ケニアの3カ国だけである。ユダヤ人人口がイスラエルと同じぐらいであり(図録9038)、ユダヤ人が大きな政治的影響力をもっている米国ではプラス評価がマイナス評価を19ポイント上回っており、北朝鮮が中国に後ろ盾がないと危ういのと同様イスラエルは米国の後ろ盾がないと危ういという状況がうかがわれる。 他方、イスラム諸国の国民のイスラエルへの評価は大変厳しくなっている。特にトルコ、エジプトの評価は8〜10割がマイナス評価と極めて厳しいが、この他、インドネシア、パキスタンといったイスラム諸国でもマイナスがプラスを大きく上回っている。 ヨーロッパの中では、国内のユダヤ人が多くイスラエルに移住したロシアでは、プラスとマイナスが拮抗するなど評価が相半ばしているのが目立っている。パリはヨーロッパにおけるユダヤ人のセンター的な役割を果たしており、マイナス評価が大きい反面、プラス評価もロシアに次いで多い。 なお日本人のイスラエルへのマイナス評価は世界の平均程度である一方、プラス評価は3%と世界最低水準である。 ここでユダヤ人論を中途半端に掲載するのは気が引けるが、ひとつだけ言及しよう。最近翻訳されたユダヤ人歴史家の「ユダヤ人の起源 歴史はどのように創作されたのか」という書籍では、ローマ人の軍事占領によるディアスポラによって世界に散らばったユダヤ教徒は他民族のユダヤ教改宗者によって勢力を維持し、他方、ユダヤの地に残ったユダヤ人の多くがイスラム教に改宗し、現在のパレスチナ人となった歴史を書いているという(毎日新聞書評)。すなわち現在のイスラエルを建国した非ユダヤ人出身のユダヤ教徒集団が元ユダヤ人のパレスチナ人を迫害しているのが実態だという。ユダヤ教の正統性保持のため居残りユダヤ人を軽視してきたことからこうした構図が見えにくくなっているというのだ。 (2010年6月14日収録、2013年6月14日更新)
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