データとしては少し古いが1996年に全国都道府県の県民各900人を対象に行われたNHKの県民意識調査の結果を使用している。 祖先信仰、すなわち家の祖先との心のつながりを感じているかどうかについては、東北から北関東、山梨にかけての地域や中四国・九州に、かなり意識の高い県が広がっている。逆に、北海道、南関東(特に埼玉、千葉)や関西の大阪ではそうした気持ちを抱く県民が少なくなっている。 呪術的心性、すなわち神仏のご利益を信じるかどうかについても、祖先信仰と似たような地域分布になっている。ただし、祖先信仰では高かった福井、広島・島根、あるいは低かった埼玉、神奈川は平均的な割合となるなど、いくらか特徴的な地域は少なくなっている。 無常観については、かなり高い県は、北陸の石川、福井や四国の徳島、香川に限られる一方で、かなり低い県が関東・中部・西四国、南九州と数が多くなるなど、祖先信仰、呪術的心性とは分布パターンがかなり異なっている。同じ四国の中で、徳島・香川と愛媛・高知が正反対のパターンになっている点が目立っている。 死後の世界を信じるかについては、かなり高い県は、岩手、愛知、大分の3県のみとなり、かなり低い県も長野、愛媛、宮崎、鹿児島に限られるが、そのほかは、以上3つのパターンをミックスしたような分布となっている。 千葉は4つの信仰心すべてでかなり低いか低いになっている。長野、愛媛、鹿児島は、無常観と死後の世界の両方で、宗教的意識がかなり低い県となっている。 下には、参考までに、以上4つの信仰心について、各々の+2〜−2の採点を足し合わせた結果の分布図を示した。福井と大分が5点でもっとも高く、千葉が−7点でもっとも低くなっている。大都市が低いかというとそうでもない。東京は0、大阪は−2だが、愛知は+4とかなり宗教的な地域である。宗教的意識は必ずしも高齢者や農村部で高いとは決まっていないことも影響している(コラム参照)。
(2021年10月18日収録)
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