当図録では戦後の体格の変遷(図録2200)や肥満度の国際比較(図録2220、2222)、やせ過ぎ女性比率の国際比較(図録2205)と様々な角度から体格について扱ってきたが、都道府県別の肥満度については信憑性の高いデータが得られず悔しい思いをしてきた(これまでこの図録番号で政府管掌保険事業における健診事業の結果を図示してきたが、各県の肥満度を十分に把握しているとは言えなかった)。 厚生労働省の国民健康・栄養調査(国民栄養調査)は日本人の身長・体重を戦後一貫して毎年調査しており図録2200ではこの結果をグラフにしている。しかしサンプル数の関係であると思われるが都道府県別のデータは公表されていない。同調査の5年分のデータを解析し、しかも年齢構成の違いによる影響を取り除いた研究結果が食育白書に掲載されているのを見つけたので、この研究結果から都道府県別の男女の肥満比率を図録化した。(同じ研究結果から運動量と肥満の関係を図録2242に示した。) その後、2010(平成22)年の国民健康・栄養調査の報告書に男性の2006〜10年データが掲載されたので、同時に示した(同じ資料による所得別分析を図録2218に掲載)。こちらの資料には女性のデータはない。 図の肥満比率については、男女とも、都道府県によってかなりの違いがあることが分かる。 01〜05年に関しては、男の場合、トップの沖縄県では46.7%が肥満であるのに対して、最下位の島根県では19.6%と肥満比率は沖縄県の4割程度となっている。女の場合もやはりトップの沖縄県は39.4%であるのに対して、最下位の石川県は15.8%であり、やはりトップの4割程度の水準となっている。06〜10年男に関してもトップと最下位との差は同様に大きい。 地域的な分布の特徴としては、おおまかにいえば、沖縄が男女とも肥満比率がトップである点、また女性の場合東北で肥満比率の高い県が多い点、さらに大都市圏では肥満比率の高い県がない点などが目立っている。 男女別に上位5位と下位5位の都道府県ランキングを以下に表に整理した。 肥満が多い県としては男女共に沖縄がトップである点は目立った特徴である。しかし、2位以下では男女の共通点は余りない。岩手が男女とも5位以内に登場するので肥満県と言えるぐらいである。また2000年代前半と後半とで共通なのは、沖縄が共通してトップである点を除くと、宮崎が2〜3位で高い点ぐらいである。 肥満比率ランキング
女性の場合は、沖縄の他、東北地方の諸県、そして鹿児島、高知、徳島といった西日本の太平洋岸の諸県で肥満度が高いという傾向がある。 逆に、肥満の少ない痩せの多い県については、男性と女性で5位までの県がすべて異なっており、また男性の2000年代前半と後半とでトップ5に福井を除いて共通県がなく、法則性を見てとることが困難である。東京圏、大阪圏など大都市圏では肥満が少ないとはいえる。 男性の岩手と秋田、徳島と香川、宮崎と鹿児島、また女性の富山と石川など隣接した県の肥満比率の大きな差が認められる。理由は不明である。 2006〜10年の男性の肥満度が発表されたのを受けて、トップの沖縄県と最下位の山口県に報道が取材を行ったが、両県の肥満問題担当者は、自らの県の肥満者の多さ、少なさの理由に明確な心当たりがないといっているのは興味深い。沖縄県健康増進課「脂肪分を取り過ぎるのは以前から認識しているが、正確な理由はわからない」、山口県健康増進課「生活習慣に特徴は思い当たらない。少し意外な結果でした」(産経新聞2012年2月14日) 沖縄の肥満度トップについては基地文化の影響とする意見もある。「「沖縄は今、肥満と糖尿病の人が増えて大変なんだよ」。沖縄県糸満市の総合病院の診察室で、泌尿器科医の我喜屋(がきや)宗久さん(51)は訴えた。臨床の現場に立って20年以上。白衣姿に専門医の風格が漂う。(中略)沖縄は20〜60代の肥満率が全国1位となり、糖尿病による死亡率も上位で、「基地文化の弊害」と指摘する。戦後、米軍統治下にあった沖縄は、ファストフード1号店が本土より7年早い63年にオープンした。「子供の頃から脂っこいアメリカンフードを食べている我々の世代が一番危ない。本土も10年後は今の沖縄のようになる」と警鐘を鳴らす。」(毎日新聞2012年4月3日夕刊) (2006年4月4日収録、2008年10月28日全面更新、2012年2月2日更新データ追加、2月14日コメント改訂、4月3日沖縄コメント追加)
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