以下、毎日新聞10月29日記事による比例選挙の結果速報のまとめである。 「比例代表で自民党は前回2021年から533万票(26.8%)減の1458万票に落ち込んだ。連立を組む公明党も114万票(16.2%)減の596万票となり、両党とも1996年の比例代表導入以降で衆院選としては過去最少の得票数にとどまり、苦戦ぶりが浮き彫りになった。 自民は近年、比例代表で1800万〜1900万票を獲得していた。得票率26.7%は政権復帰後で初めて3割を下回り、旧民主党へ政権交代した09年衆院選と同水準の低さだった。全国11ブロックのうち9ブロックで最多得票だったものの、北海道ブロックでは立憲民主党に第1党を奪われた。公明は近年「比例800万票」を目標に活動を展開してきたが、今回は比例代表導入以降で初めて600万票を割り込む歴史的な結果になった。 立憲は全体の議席数では躍進したが、比例代表は1156万票で前回選からほぼ横ばいだった。大きく伸ばしたのは国民民主党で、前回の259万票から617万票へ約2.4倍に。北関東、東海ブロックの計3議席は名簿登載者が足りず、他党へ議席を譲る結果となった。 日本維新の会は近畿ブロックでは自民を上回り「比例第1党」の地位を保ったものの、全体では前回から294万票(36.6%)減の510万票と振るわず、国民民主に「野党第2党」の地位を奪われた」。 日経新聞によれば今回若者の投票行動が変化し、少数党に多くの票が集まったという(注)。「与党が大敗した衆院選は特に若い世代の投票行動が一転した。出口調査のデータを前回2021年と比べて分析すると、自民党に投票する傾向があった若年層のほうがシニア層より新たな選択肢に流れた実態が浮かぶ。比例代表で与党から逃げた票が野党勢力に広く分散した背景になった。今回の衆院選で際立つのは比例代表の得票数で上位5党以外が2割を超えたことだ。現行の小選挙区比例代表並立制になった1996年以降初めてで、投票先の分散を象徴する。自民、立憲民主両党以外の第3党以下が全体の半数を上回った。国民民主党やれいわ新選組が票を集め、参政党や日本保守党が初めて衆院選で議席を得るなど新興勢力が伸長した」(日経新聞2024.11.2)。 (注)年齢別の比例投票先の変化からそれがうかがわれる−図録5232a参照。
〇2022年参議院選挙
参議院議員選挙は7月10日に投開票され、憲法改正に前向きな自民・公明・維新・国民の4政党の議席が全体の3分の2を超える177議席に到達。与党勝利が大々的に伝えられる結果となった。 一方で、2021年10月31日に実施された衆議院議員選挙と、今回の参院選で、政党や政治団体などに票を投じる比例代表の得票を見ていくと、違った傾向も見えてくる(以下、11日配信のハフポスト日本版を参考にした)。 強固な支持基盤を固め選挙運動を展開する自民党と公明党は、全体の得票率では微減だった。自民党の得票数も減っており、奈良県での応援演説中に凶弾に倒れた安倍元総理の弔い合戦的な色彩は余り感じられない。 減少ぶりが目立つのは立憲民主党。野党共闘を旗印に掲げて臨んだ衆院選と違い、今回は与野党一騎討ちの構図を十分に作りきれなかった。 選挙前勢力から議席を積み増した日本維新の会は、全体の得票率も微増だった(得票数は微減)。 国民民主党は改選7議席から、選挙後は5議席と減らした。しかし全体の投票数が衆院選と比べて減ったのにも関わらず、比例票は増加。割合も4.5%から6%へ増やすなど明るい兆しを残した。 社民党は、比例代表の得票率が2%を上回らないと公職選挙法上の政党要件を維持できない選挙だった。党首の福島みずほ氏も当選となり、支持層の危機感が反映された可能性がある。 参政党は170万を超える比例票を獲得。YouTubeやTiktokなど、SNSを通じた選挙戦略が奏功したとみられる。
○2021年衆議院選挙
図に見られるように旧民主党の立憲民主党と国民民主党は合計しても前回衆院選の民進党の比例獲得票を大きく下回った。自民党の比例獲得票はむしろ上回っており、自民党が単独で絶対安定多数を獲得する勝利につながった(小選挙区情勢は図録5235参照)。 こうした比例票の動きの大きな要因として指摘されるのはやや無理があった野党共闘である。岸田首相による短期決戦の仕掛けに対して急遽具体化が進んだ野党共闘は、213選挙区(無所属候補者等も含めると217選挙区)で候補者一本化を果たす「形」を整えた。しかし問題はそこから先で、共産党による「限定的な閣外協力」という政策合意の将来像を共有できないまま、一部には共産アレルギーを抱える立民コア支持層の躊躇と混乱を抱えた状態で野党共闘は選挙戦に突入することになったのである。 躍進した日本維新の会は、近畿圏以外でも比例票を積み上げ、30議席増の41議席を獲得した。吉村洋文大阪府知事のコロナ対策などが改革イメージとして評価されたことに加えて、「自民党にも野党共闘にも投票したくない層」の受け皿となることに成功したことも勝因だろう。この選挙からグラフに日本維新の会の比例票の動向を加えた。
○2019年参議院選挙
関心がもたれていた自民、公明、日本維新の会などの改憲勢力の3分の2越えは実現しなかったが、与党は改選過半数を確保し、参院での過半数を維持した。 図に見られるように旧民主党の立憲民主党と国民民主党は合計しても前回民進党の比例獲得票を下回った。自民党の比例獲得票も前回をかなり下回っており、合わせて主要与野党の退潮が印象的である。 国民民主党の比例獲得票(348万票)は日本維新の会の490万票、日本共産党の448万票を下回った。 その一方で、比例代表で消費税の廃止を訴えた「れいわ新選組」が比例獲得票228万票で2議席、NHK受信料を支払った人だけが視聴できるよう「スクランブル放送」の実現を公約として掲げた「NHKから国民を守る党」が98万票で1議席を獲得した。政党要件を持たない諸派が比例議席を得たのは現行制度の下で初めてだという。 都道府県知事経験者の参議院議員が、非改選を合わせて6名という記録的な数となったのも今回参院選の結果の特徴である。 元知事である当選者は、北海道選挙区選出の高橋はるみ(自民党)、神奈川県選挙区選出の松沢成文(日本維新の会)、滋賀県選挙区選出の嘉田由紀子(無所属・野党統一候補)、大阪府選挙区選出の太田房江(自民党)、岡山県選挙区選出の石井正弘(自民党)の5人である。 このうち、参議院選挙で当選経験がない新人は、高橋氏と嘉田氏の2人で、この2人が加わって、公示前の4人から6人に増えて、(公選の)都道府県知事経験者の参議院議員が過去最高となった。ちなみに、太田氏は、初当選した時は比例代表区だったから、大阪府選挙区での当選は初めてとなる。 そして、非改選の参議院議員には、長崎県選挙区選出で元知事である金子原二郎(自民党)がいる(土居丈朗「今回の参議院選挙で起きた珍事!?」ヤフーニュース2019年7月22日)。 ○2017年衆議院選挙
国難突破を訴える与党に対して、野党は民進党が希望の党に合流する判断を示し、希望の党からの「排除」を嫌って一部が立憲民主党を立ち上げるに至ったため、保守対中道対リベラルといった3極構造の選挙戦となった。 安倍政権の内閣支持率が低下していたので自民党への比例票は昨年の参院選時よりむしろ減少した。また、一方で、民進党が2派に分かれた受け皿となった希望の党と立憲民主党の比例票獲得数は、合わせると2000万票を越える大幅増となり、自民党を上回るに至った。にもかかわらず、小選挙区制度の下で野党が分裂したため、獲得議席では、自民党が前回並みの議席を確保することとなった(図録5235参照)。 ○2016年参議院選挙
与党はアベノミクスへの信任を争点として選挙戦に入り、野党は共産党を含む統一候補を立てて戦ったが、与党が改選過半数を大きく上回り大勝した。自民党の比例獲得票は郵政選挙以来最多の2000万票超となった。はじめて18〜19歳が選挙権を有する選挙となった点、また一票の格差是正のためはじめて鳥取・島根、徳島・高知で選挙区の2県合区が実現した点が新しい。与党は敢えて改憲を争点とせず、むしろ野党が今回の選挙を改憲危機ととらえる論戦を行ったが、結果として、与党など改憲勢力が衆議院とともに3分の2を超えた点も注目される。なお、女性候補は96人中28人が当選し、戦後最多を記録した(毎日新聞2016年7月11日夕刊などによる)。 ○2014年衆議院選挙
2014年12月14日投票の衆議院選挙は、アベノミクスなどこれまでの政権運営の信を問うとして安倍首相によって行われた衆議院の解散を受けて実施された。念のため解散などとも呼ばれ、総選挙実施の理由については政権の自己都合と批判され、また、選挙の争点がはっきりせず、野党が四分五裂で求心力をもたなかったため、、投票率も52.66%(小選挙区、確定)と過去最低となった。2012年の衆議院選挙と比較すると、投票率の低下にもかかわらず、比例票は自民党の場合6.2%増、民主党も1.5%増と得票を伸ばしている。民主党は比例票で維新に次ぐ3位から2位へと地位をアップしている。 ○2013年参議院選挙
ネット選挙が解禁となり、アベノミクスという用語が氾濫する7月21日投票の参議院選挙は、改選議席の与党自民党・公明党の圧勝により、衆議院と参議院の与野党が逆転している「ねじれ状態」が解消した選挙ともなった。比例代表選挙における民主党の得票数は、713万票と過去最少となった。 ○2012年衆議院選挙
2012年12月16日投票の衆議院選挙は「民主党ダメだし」が基調の結果となり、民主党は公示前230議席から57議席への惨敗、一方、自民党は118議席から294議席への圧勝となった。第3極への結集はならず多党乱立のなか、小選挙区制のロジックに従って自民党が圧勝という結果となったのである。圧勝した自民党の複数の幹部は自分たちに風が吹いたからというわけではないと正直にコメントしている。識者の見方としては以下が妥当なところであろう。 「自民党の圧勝というより、民主党への国民の判断が非常に厳しかったという結果だ。マニフェストが実行できず、やろうとすること自体も変わってしまった。民主党がどうにもならないと思った時に、代わる政党が一つしかなかった。ただ、3年半前に政権交代せず、自民党政権のままだったら良かったかというとそうではない。民主党には、政権運営に携わった常識的で若い人材が残った。自民党に代わる選択肢になれるよう努力すれば、民主党も再生できるし、政権交代の意義も大きくなる。(中略)自民党が300議席に迫り、日本維新の会も第3党となったことで、諸外国からは日本が右傾化しているとの懸念が出るだろう。しかし、私はそう見ていない。民主党が敗北した、という結果だ。」(政権交代・私はこう見る:米コロンビア大(政治学)、ジェラルド・カーティス教授、毎日新聞2012年12月18日) ○2010年参議院選挙
2010年7月11日投票日の参議院議員選挙で与党民主党は10議席減の44議席と敗北、野党自民党が13議席増の51議席となり改選第1党となった(非改選を加えると民主党が106、自民84となお民主第1党)。 こうした自民党の勝利は選挙区、特に1人区の勝利によるものであり、比例獲得票数では、民主党の減少ほどではないが、自民党も減少しており、また民主党を上回った訳でもない。民主党の比例獲得票は2000万票を下回り自由党との合併以降最少となった。自民党の比例獲得票も1500万票を下回り2000年以降最少となった。みんなの党はじめ批判的な新規小党の躍進によるものであり、2大政党へ向かう動きには待ったがかかった状況である。 なおこの参議院選挙の結果については都道府県別の政党別得票率をあらわした時事トピックス(図録j002)参照。 ○2009年衆議院選挙
2009年8月30日投票日の衆議院議員総選挙で与党自民党は181議席減の119議席と大敗、民主党が193議席増の308議席と大勝、単独過半数(241議席)を大幅に上回る第1党に躍進した。 比例獲得票数では、民主党が2,984万票と、はじめて、ほぼ3千万票に達した。自民党は1,881万票と2005年郵政選挙と比べて大きく票数を減少させた。 今回衆議院選挙では、投票率が69.8%と1996年以降の小選挙区比例代表並立制発足以降最も高かったため、自民党と民主党の得票数合計は4,865万票と2007年の参議院選挙ばかりでなく2005年の郵政選挙を173万票上回った。 民主党は2007年参議院選挙でも大勝したが、民主党の比例代表の得票は2003年の衆議院選挙以降、2000万票台前半で高位安定的に推移していた。郵政選挙で惨敗した2005年衆議院選でも比例代表では2100万票とそれほど大きく落ち込んではいなかった。 逆に自民党は増減幅が大きく、「風頼み」の傾向が強くなっていたが、今回選挙では、政権交代の風が強く吹いて大敗につながった。 小選挙区制度の下で、こうした比例票の推移以上に、議席数の大変化、大逆転が生じているのが印象的である。 (2007年9月3日収録、2009年9月1日更新、2010年7月13日更新、2012年12月18日更新、2013年7月22日更新、2014年12月16日更新、2016年7月11日更新、2017年10月24日更新、2019年7月23日更新、8月2日コメント補訂、2021年11月2日更新、維新追加、2022年7月11日図のみ更新、7月12日コメント、2024年2月11日旧民主党変遷図、10月29日更新、11月4日結果速報まとめ、日経記事引用)
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