ここでは、ウプサラ大学のオスロ国際平和研究機構(PRIO)*が取りまとめたデータベース、および世界銀行報告書(「世界銀行アトラス 人間の安全保障はどう守られているか 」)をもとに部族間抗争や虐殺を除く国家が関与した武力紛争の戦死者数の第2次世界大戦後の推移を図録にした。 *Uppsala University/International Peace Research Institute, Oslo (PRIO) 戦死者数には戦闘員だけでなく激しい交戦に巻き込まれて死亡した民間人も含まれるが、戦争によって引き起こされた病気や飢饉による死者や、非武装民間人を計画的に殺害した数は含まれない。またこの研究の用語では年間1000人以上の戦死者が出た武力紛争のみを「戦争」と呼び、25人未満の戦死者の場合は「武力紛争」にカウントしていない。またカウントは信頼できる情報源によって記録されているものに限られる。(このように基準が厳しいので必然的にこのデータは実際の戦死者数より少ない数値となっている。) グラフを見れば、大きくいえば、国家が関与した武力紛争による戦死者数は長期的に減少してきていることが分かる。 1950年のピークは朝鮮戦争によるものである。1968〜1972年のピークはベトナム戦争関連の戦死者数である。1980年代にはイラク・イラン戦争で多くの人命が失われた。 地域的には、1970年代までは、圧倒的にアジアにおける戦死者の多さが目立っていたが、1980年代は中東やアフリカにおける戦死者数が増加し、1990年代には、アフリカにおける戦死者数が依然多く、他方中東が減少した一方で、ソ連崩壊後、冷戦の終焉ともに、旧ユーゴスラビアなど東欧の紛争が増え、ヨーロッパにおける戦死者数が増えた。 ○戦死者数の多い戦争(当図録) 1.ベトナム戦争 209万人 2.朝鮮戦争 125万人 3.中国内戦 120万人 ○犠牲者数の多い戦争(図録5228) 1.朝鮮動乱 300万人 2.ベトナム戦争 236万人 3.ビアフラ内戦 200万人 戦争による戦死者数と犠牲者数を比較すると、朝鮮戦争やビアフラ内戦では戦争による間接的な民間犠牲者が多い。戦死者数では2位の朝鮮戦争が犠牲者数では戦後最多となっている。 武力紛争の戦死者数とは別に、非武装民間人を計画的に殺害した数(ジェノサイド)による死者数の推移を図録5228dに掲げた。 以下には、「暴力の人類史」(原著2010年)から同様の定義で20世紀における戦死者数をあらわした図を掲げた。第一次世界大戦と第二次世界大戦における戦死者数が、その他とは比較にならないほど多かったことが一目瞭然である。さらに長期的な主要な戦争等の犠牲者の推移については図録5228b参照。 (2010年5月17日収録、2016年10月15日20世紀推移図)
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