政府が11月22日の臨時閣議で決定した「新たな経済対策」によると「賃上げと投資がけん引する成長型経済への移行を確実なものにする」として、▽賃上げ環境の整備などを通じた日本経済・地方経済の成長▽物価高への対応▽国民の安心・安全の確保を柱に掲げている。 主な事業としては、▽来年1月から電気・ガス料金の補助を再開し3月まで行うことや▽住民税の非課税世帯を対象とした給付金の支給▽能登半島地震の被災地のインフラ復旧や生活再建の支援策などを盛り込んでいる(NHK、2024.11.22)。 (岸田内閣の2023年11月の総合経済対策) 政府は11月2日午後の臨時閣議で賃上げ・国内投資の促進を盛り込んだ総合経済対策を決めた。物価高対策として所得税と住民税の減税や低所得者向け給付を入れた。国と地方自治体、民間投資をあわせた事業規模は37.4兆円程度、減税と裏付けとなる補正予算を含め17兆円台前半になる。財源の裏付けとなる2023年度補正予算案の一般会計は13.1兆円ほどを計上する。11月中にも提出し、臨時国会中の成立をめざす。 (岸田内閣の2022年10月の総合経済対策) 政府は10月28日、物価高への手当てを中心とした総合経済対策を閣議決定した。当初は補正予算案を25兆円程度とする方向で調整していたが、自民党内から増額を求める声が噴出し、新型コロナ・物価高対策予備費と「ウクライナ情勢経済緊急対応予備費(仮称)」の新設で計4兆7000億円を積み増したという(東京新聞)。 (岸田内閣の2022年4月の物価高に対する総合緊急対策) 政府は2022年4月26日、原油高や物価上昇に対応するための「総合緊急対策」を決定した。ガソリンへの補助金など原油高対策に1.5兆円を充てるなど、国費の負担として計6.2兆円を計上。金融機関の融資や民間の投資も含めた事業規模は13.2兆円を見込む。ロシアによるウクライナ侵攻などに伴う物価上昇や長引く新型コロナウイルス禍の影響緩和を図るものとされている。 (岸田内閣の2021年11月のコロナ経済対策) 政府は2021年11月19日の臨時閣議で、新型コロナウイルス禍の長期化などに対応する新たな経済対策を決定した。 「国・地方の歳出と財政投融資を合わせた財政支出は過去最大の55.7兆円に上り、民間支出などを含む事業規模は78.9兆円。岸田文雄首相が「成長と分配の好循環」を掲げる中、18歳以下への10万円相当の給付や事業者支援策などが盛り込まれ、規模が膨張した(事業内容は下図参照)。 対策の経済効果について、内閣府は実質GDP(国内総生産)を5.6%程度(30兆円強)押し上げると見込む。岸田首相は臨時閣議に先立ち開かれた経済財政諮問会議で「コロナ禍で傷んだ経済を立て直し、社会経済活動の再開を後押しし、経済を一日も早く成長軌道に乗せていく」と強調した。 国費は43.7兆円で、財源は赤字国債の発行などにより2021年度補正予算案や22年度予算案で確保し、「16カ月予算」として一体的に編成する。鈴木俊一財務相は臨時閣議後の記者会見で「国債がどの程度の規模になるか申し上げる段階ではない」と述べた。補正予算案は一般会計で31.6兆円、特別会計で0.4兆円を計上し、年内成立に向け今月26日の閣議決定を目指す」(時事通信2021.11.19)。 (菅政権の2020年12月の追加経済対策) コロナ対策の追加措置とコロナ後(ポストコロナ)の経済構造の転換と国土強靭化の3本柱からなる2020年における追加の経済対策が12月8日の臨時閣議で決定した。一般会計や財政投融資など財政支出は40兆円、金融機関の融資などを含めると事業規模は73兆6千億円にのぼる。月内に閣議決定予定の2020年第3次補正予算案と21年度当初予算案に、国費として計30兆6千億円を計上する。 (新型コロナ感染症に対する安倍政権2020年4月〜5月経済対策) 首相が「世界でも最大級の経済対策」と強調する「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」が4月7日の臨時閣議で決定された。補助を受けて民間企業が支出すると見込んだ額、納税・社会保険料猶予額などを含む事業規模108兆円、補正予算額規模16.8兆円はいずれも過去最大。収入が減った低所得世帯には30万円、売り上げが急減した中小企業には最大200万円、個人事業主や小規模事業者には最大100万円が給付される。 閣議決定後の見直しは極めて異例ながら、4月16日、与党自民党・公明党の要請で「収入が減った低所得世帯には30万円」が「一律1人10万円」の給付へと補正予算の組み替えが進められることになった。財政規模は約4兆円が12兆円に膨らむこととなった。 さらに、5月27日には、追加経済対策として第2次補正予算31.9兆円を閣議決定した。必要な財源は全額国債。 (消費税引き上げ後安倍政権2019年12月経済対策) 景気低迷への対処としての経済対策という意味合いが余り感じられない中、「海外経済の下方リスクに備える」(西村経済再生担当相)という趣旨で打ち出された今回の経済対策は、通常予算との区別も余りつかず、消費税引き上げのマイナス効果や東京五輪後の落ち込みを恐れるだけの予防的な性格のものとなっているといえよう。 図の補正予算には次年度予算を含めた国費7.6兆円が示されているが、下図のように、一般会計のほかに、東日本大震災の復興にあてる「復興特別会計」などからも1兆5千万円が支出される。 事業規模全体の中には国費のほか、国の財政投融資、地方自治体の拠出分、民間の支出分がさらに含まれている。地方自治体の拠出は一部の公共事業などに都道府県や市町村も資金を出す分である。国の財政投融資は国が低利で借りた資金を民間などに低利で又貸しして事業を行わせる分であり、民間自体の支出は国の補助金で事業を行う場合の民間での負担分である。こうした分を合わせて「政策によって動くであろう金額全体を「事業規模」と呼びます。ただ、実際に企業が動くかは分かりません。16年に発表した前回の経済対策では事業規模28兆円超と発表しましたが、政府は実際に動いた額を調べていません。株式市場などを意識し、政策を大きく見せる数字にすぎないとの批判があります」(東京新聞「経済Q&A」2019.12.14)。 (参院選勝利後安倍政権2016年8月経済対策) 政府は2日夕、経済対策を閣議決定。リニア中央新幹線の整備を最大8年前倒しするなどのインフラ整備や、年金の受給資格の25年から10年への短縮などを盛り込んだ。安倍首相が参院選で訴えていた通りの「アベノミクスを最大限ふかす」ための中核とするため、財政投融資などを合わせた事業規模は28.1兆円に上り、過去3番目の規模。経済対策は「未来への投資を実現する経済対策」と銘打ち、国と地方の直接の歳出(真水)7.5兆円を投入する。国の支出は6.2兆円となる。複数年度の執行となり、4兆円を2016年度の2次補正予算案で、残りを17年度の予算案や特別会計で編成する。赤字国債の発行は見送り、公共事業などに使途を限る建設国債を4年ぶりに発行して財源を賄う。民間企業への融資にあたる財政投融資は6兆円を投じる(日経新聞2016.8.2夕など)。 今回の事業規模を過去3番目としているのは2008年8月と10月の経済対策を一本化して捉えているからである。 (アベノミクス解散後安倍政権2014年12月経済対策) 政府は12月27日の閣議で総額3.5兆円の経済対策(消費増税で冷え込んだ消費の喚起、地方経済の底上げの対策)を決定。自治体向けの交付金新設など地方の消費や生活を支援する施策が柱。実質国内総生産(GDP)を0.7%程度引き上げる効果を見込む。地方創生の5カ年計画である「総合戦略」も閣議決定し、地方で若者の雇用を30万人創出するなど2020年までの数値目標を設定した(毎日新聞2014.12.28)。 (安倍政権2013年12月消費増税による景気腰折れ防止対策) 2014年4月に消費税率を5%から8%に引き上げるのに備え、経済への悪影響を緩和する総額5.5兆円の経済対策を閣議決定。財源は、2013年度の税収増2.3兆円、12年度予算の使い残し2.8兆円などで確保し、新たな国債発行はしない。消費増税の影響を緩和する給付として、市町村民税を課税されていない低所得者に1人1万円を支給する「簡素な給付措置」に3400億円、増税後の住宅購入者に最大30万円を支給する「すまい給付金」に1600億円、児童手当を1カ月分拡充して子育て世帯を支援する給付措置に1500億円を支出(毎日新聞2013.12.6)。 (安倍政権2013年1月対策) 補正予算規模総額10.3兆円の「緊急経済対策」を1月11日に閣議決定した。第2次安倍政権が発足してわずか2週間余りのスピード策定。実質4.7兆円の公共投資。12年度1年分に匹敵する額を補正予算で新たに追加する形。新たに5.2兆円の国債発行。 (08〜09年度の緊急経済対策基金の使い残し) 2008年度〜09年度補正予算で単年度で終わらない特定事業を実施するため設けられた都道府県などの基金の使い残しが約6割もあることが会計検査院の調査で分かった。「検査院は43都道府県の約2500基金を調査。10年度末時点で、基金を取り崩した額を国からの交付額で割った執行率は、08年度に設けた基金で47.8%、09年度の基金は32.4%、計約3兆4千億円のうち、使われたのは約1兆4千億円だった。」(東京新聞2011.10.18)「主な事業では、地域医療再生事業12%▽社会福祉施設耐震化事業28%▽高校生修学支援事業31%▽緊急雇用創出事業45%−−しか使われていなかった。」(毎日新聞2011.11.17) (菅政権2010年10月対策) 菅政権は2010年10月8日に「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」のステップ2として2010年度補正予算案に盛り込む「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」を公表した。 内容は新成長戦略、雇用対策もあるが、地方自治体によるインフラ整備などを後押しする「地域活性化交付金」(約3500億円)など公共事業中心となっており、参議院与野党逆転のねじれ国会を踏まえ、自・公案「丸のみ」と評価されている。 (菅政権2010年9月対策) 民主党代表選の論戦において対立候補の小沢氏が予備費の2兆円を何故全額使わないのかという批判があるなか、菅政権は2010年9月10日に「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」のステップ1として「円高、デフレ状況に対する緊急的な対応」を公表した。 内容は家電エコポント、住宅エコポイントの延長や重点分野での雇用創造事業の拡充などである。 事業規模は9.8兆円であるが、国費は9,150億円であり、経済危機対応・地域活性化予備費を活用するとされている。 (鳩山政権の緊急経済対策) 鳩山政権は2009年度の第2次補正予算の編成へ向けて、7.2兆円規模の「明日の安心と成長のための緊急経済対策」を決定した(2009年12月8日)。 財源として、国民新党の財政支出規模拡大要求を受けた上積み1,000億円を賄う建設国債を含めて国債発行3.1兆円、及び麻生政権の1次補正予算の執行停止分2.7兆円を充てている。現政権は、1次補正予算に基づく公共事業約4,800億円を事業停止したが、今回の経済対策には、地方の公共事業を支援する交付金として5,000億円を計上した(毎日新聞2009.12.9)。このため、当初、「コンクリートから人へ」という鳩山カラーが薄められた上、公共事業への実際の支出時期が、来年の補正予算案議決後に延長され、年末に向けての直近の効果が見込めないというリスクがあるので、むしろ1次補正の執行停止の解除を優先せよと野党自民党は批判している。 (麻生政権「経済危機対策」) 戦後最大の経済危機を乗り越えるための追加経済対策(経済危機対策)と財政出動は、事業規模56.8兆円、補正予算規模15.4兆円と、1998年小渕内閣時の緊急経済対策24兆円超、補正予算規模で7.6兆円の2倍以上の空前の規模となる。 追加経済対策の裏付けとなる2009年度の補正予算は実に本予算の一般歳出約51兆円の3分の1に近い規模である。 今回の経済対策の空前の規模は、経済危機の深刻さをあらわすと同時に、衆議院の総選挙を控えた政府・与党としての起死回生のための対策であり、また、ロンドンで開かれた先の金融サミット(G20、4月2日首脳宣言)で合意された来年までの各国景気刺激策総額5兆ドル(約500兆円)の先駆けとして日本が世界をリードしていきたいと考えたためでもある。 金融サミットで各国のGDPの2%の財政出動を提案したIMF提案に欧州は消極的であり、総額を打ち出すに止まった。欧州各国は税負担率が日米と比べて高く(図録5100、5107)、すでに景気悪化と連動して自動的に減税対策を行っているに等しいためであると考えられる。貯蓄率の低い米国では国債の増加発行を海外に頼らざるを得ず、ドルの信認の面で余り巨額な財政出動はやりにくい。そこで日本の出番ということであろう。 財源については、建設国債と赤字国債に頼らざるを得ない見通しであり、ただでさえ膨らんでいる政府債務残高の増大は避けられない(図録5103参照)。財政再建を優先させて経済の悪化が加速し、税収の大幅減に結びつけば財政再建そのものが危うくなる。しかし一方で「機関投資家の国債購入は増えているものの、ひとたび長期金利の上昇を招けば、企業の資金繰りを圧迫する。景気の底割れを防ぐ対策は、「もろ刃の剣」の要素も抱えている。」(東京新聞2009.4.9)金利上昇は国債の償還にも悪影響を及ぼすので、企業の資金需要が本格回復したら財政再建へ転じる必要がある。いずれにせよきわどい金融財政政策が迫られているといえる。 (2009年4月9日収録、4月11日更新、12月9月更新、2010年9月11日更新、10月9日更新、2011年10月17日基金使い残しコメント、2013年1月19日更新、12月6日更新、2014年12月28日更新、2016年8月2日更新、8月3日補訂、2019年12月6日更新、12月15日財源解説、2020年4月8日更新、4月17日補正予算組み替えの動き、4月21日補正予算案見直し、5月28日追加経済対策、12月9日追加経済対策、2021年11月20日コロナ経済対策、2022年4月28日総合緊急対策、10月30日総合経済対策、2023年11月2日新しい経済対策、2024年12月1日新経済対策)
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