穀物等の国際価格の推移→図録4710 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2022年2月のロシアによるウクライナ軍事侵攻以降、原油や天然ガス、特に欧州がロシアに依存していた天然ガスの価格が高騰した。 (原油価格の動向) 2017年末から1バレル60ドル台と上昇傾向にあった原油価格は新型コロナウイルスの影響で需要が減る中で低下傾向を続けている。 OPECとOPEC以外との生産調整協議が整わず、サウジアラビアとロシアが増産を決定したため、新型コロナウイルスの影響による需要減も加わって、2020年3月末には原油価格は1ドル30ドルまで下落しており、下図のように中東諸国の経済の骨格は激変すると見なされている。 ロシアも2020年の予算編成の原油想定価格を42.4ドルに設定しており、予算不足は必至と言われる(東京新聞2020.4.1、以下同様)。ロシアは原油価格が予算編成時の想定価格を上回った場合、追加税収が「福祉基金」に入る仕組みとなっており、それでプーチン政権が大統領続投へ向け打ち出している生活水準の改善策(出生率向上のための支援や給与底上げなど)をまかなうものとされている。 このように原油価格が政権維持にも大きくかかわるため、ロシアはOPEC側と協調減産協議を再開する意向と見られるが、OPEC主要国のサウジアラビアは5月から輸出量を日量1600万バレルに増やし、需要減に対して価格競争に打って出てシェアを拡大することで危機を乗り越えようとしている。 新型コロナウイルスの影響にこうした産油国間の協調決裂が加わって、原油価格の一層の低下が予想され、産油国経済は大きな打撃を受けると考えられる。 さすがにまずいと考えたOPECとロシアなど非加盟国の連合体「OPECプラス」は4月12日日量970万バレルの原油協調減産で最終合意した。サウジアラビアの石油相は、この減産に加え、枠外の米国の生産抑制などを合わせ、原油供給量は世界生産の2割程度に当たる日量1950万バレル減るとの見方を示しているという(毎日新聞夕刊2020.4.14)。 原油価格がどの程度の減産で下げ止まるかで、新型コロナが及ぼす世界経済へのダメージの程度が推測できそうである。 原油相場に影響のあった主な出来事については末尾の表参照。 (天然ガス価格の動向) 2011年の東日本大震災に伴う原発事故以降、日本の輸入に占める天然ガスの割合は大きく上昇し(図録4760)、日本経済にとって天然ガス価格の動向は無視できないものとなっている。 天然ガスの価格動向については輸入価格の動きについて日本と海外を比較したグラフを図録4124に掲載し、2011年の東日本大震災に伴う原発事故以降、日本が割高な価格で買っていることを示したが、ここではIMFのデータで同様の動きを示した。 オランダ市場と日本における天然ガス価格は基本的には原油価格と連動して上下していることが分かるが、日本の場合、2011〜2014年の4年間、オランダ市場と比較しても非常に割高な価格だったことが理解される。2015年には、オランダ市場の価格にかなり近づき、2017年以降はほぼ同等のレベルで推移していることも分かる。 こうした価格動向には、2015〜16年に停止していた西日本の原発が相次いで再稼働したことが影響していると見られる。 なお、米国のスポット価格は、2008年の資源価格高騰までは、オランダ市場や日本の価格動向と同水準でより変動の激しい動きを示していたが、2008年秋のリーマンショック後は、オランダ、日本とは全く異なったずっと低水準の動きを示すようになった。その頃から米国等でシェールガスの採掘が本格化して影響が認められるのである。 (過去のコメント) 原油価格の低落が続いていた2016年1月には1バレル27ドルと2009年2月の水準を下回り、2004年来の水準まで低落した。原油価格下落の影響による産油国のファンドの株式市場からの資金引き上げにより株価も下落傾向にあるといわれた。 2014年6〜7月までは1バレル100ドル以上と高い水準が続いていたが、その後、世界経済の減速で需要が伸び悩む一方、米国などのシェールオイルの生産拡大で供給過剰との見方が強く、価格下落が続いている。中東などの産油国12カ国でつくる石油輸出国機構(OPEC)は11月27日、12カ国の生産目標をいまの日量3千万バレルで据え置くことを決めたため、原油価格はさらに急落した。原産の見送りは影響力の大きいサウジアラビアが静観の構えを崩さなかったためであるが、財政力に余裕のあるサウジなどが意図的に価格低下を放置し生産費用がかなり高いシェールオイルの生産の崩壊を待って、再度、値上げを図るためとのうがった見方も出ている。 1990年代に原油が1バレル=10〜20ドル台まで下落したため、国際石油資本(メジャー)や中東諸国は油田開発への投資を抑制した。一方、中国経済の拡大を中心に途上国の経済発展が原油需要を急拡大させたが、原油の供給体制の制約、製油所の能力不足や中東情勢の不安定からこうした急拡大する需要にこたえるのが難しい状況にある。このため、投機資金の流入もあって、一時期原油が著しく高騰した。 1990年代には1バレル20ドル前後で安定していた原油価格が、9.11同時多発テロ(2001年)、03年のイラク戦争開始の頃から持続的な上昇に転じ、2008年6月には6倍以上の134ドルに達したのだから大変な変化といえよう。 こうした中、石油消費国では、運輸、漁業等の石油多消費型産業において、消費者に価格転嫁できない中小企業を中心に業況が低迷し、ガソリン代の値上げで一般消費者にも悪影響を及ぼした。 その一方、原油を扱う石油会社は非常に大きな利益をあげ(図録5410)、ロシアを含む産油国の財政は絶好調となった。また原油代金を原資にした政府系ファンドの動きも注目された(図録5180参照)。 その後、6月〜7月をピークに原油価格は低下傾向に転じ、9月のリーマン・ブラザーズの破綻を契機とした米国初の世界金融危機と世界的な景気後退の影響で大きく値が下がった。しかし、2009年2月からは再度上昇傾向に転じ、再度、かなり高い水準になっている。
(2008年4月5日収録、5月14日・6月10日更新、6月11日データ出所を米国エネルギー庁からIMFに変更、2008年7/11以降毎月更新、2016年1月10日末尾年表追加、2018年5月2日データ出所を更新が停止しているIMF一次産品価格データからUNCTADのデータベースに変更、6月7日更新、7月2日更新、10月15日更新、11月17日更新、2019年9月16日データベースをIMFに戻して更新、10/31・12/3更新、2020年3月17日更新、財政均衡石油価格図、4月2日コメント補訂、4/7更新、4月20日天然ガス価格の動向、10/4・12/30更新、2021年10/14・11/5更新、2022年4月9日データ出所を更新が停止しているIMFからUNCTADのデータベースに戻して更新、5/11・6/2・7/30・8/13・9/9・10/7更新、2023年2/20・4/29・7/23更新、12月26日データベースをIMFに戻して更新、2024年2/23・5/22更新)
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