原油・天然ガスの価格動向→図録4714

 2008年の食料価格の世界的高騰以降、食料価格への関心が持続している。特に2020年2月以降、穀倉地帯であるロシアによるウクライナへの軍事侵攻によって穀物価格が高騰した。小麦とトウモロコシは過去最高を更新した。

 ここでは、主要穀物である小麦、とうもろこし、コメ(米)、及び大豆かすの国際価格の動きを示した。

 2007〜08年の歴史的高騰ののち、2008年9月のリーマン・ブラザーズの破綻を契機とした米国初の世界金融危機と世界的な景気後退の影響で大きく値が下がっていたが、その後、異常気象、新興国需要増大、投機資金の流入などで、再度、食料価格が高騰した。

 2012年7月には米国の日照りによりコメ以外の穀物価格が高騰した。大豆かずやトウモロコシは過去最高値を越えた。2008年の穀物価格高騰による世界的混乱の再来が懸念される状況となった。

 その後、2014年5〜6月以降には世界的な生産高の上昇と中国経済の成長率ダウンの見込みから穀物価格が下落している。2015年以降、世界市場で、穀物価格だけでなく、貴金属価格石油価格も下落している。

 2020年以降も新型コロナの影響もあり再度穀物価格等が上昇傾向にある。

(以下2008年価格高騰期のコメント)

 所得上昇にともなう中国等の途上国飼料需要の拡大を背景に、干ばつ、凶作や米国におけるバイオエタノール需要の急増、投機資金の流入などに影響され、主要穀物がいずれもかつてないほど高騰した。

 価格上昇のピークは、小麦は2008年の3月、コメは4月、トウモロコシは6月、大豆は7月であった。

 2007〜08年には、世界的な原油や穀物価格の高騰を受け、年度替わりに際して小麦やしょうゆ、食用油、牛乳、バター、ビールなどの食品や国内航空運賃や電気代など各種サービスなどの価格が一斉に引き上げられた。

 穀物高騰は、パンや納豆など、これら穀物等の直接の加工食品の他、大豆価格は油脂価格に影響を与え、とうもろこし価格は飼料価格を通じて酪農製品や食肉の価格に影響を与え、多くの食品の価格に及んだ。今回の値上げ局面で、先陣を切ったのは、07年6月、17年ぶりにマヨネーズを値上げしたキユーピーだった。「穀物などの原料と原油の高騰を吸収できなくなった」(同社)のが理由だ(毎日08/3/28)。

 パンやめん類の価格上昇を受け、相対的に価格が低下した米(コメ)への見直しが進んでいるといわれる(品目毎の物価上昇は図録4720、朝食はごはんかパンかについては図録0329)。小麦粉並みに粒子を細かくすることに成功し加工性能の向上した米粉をパン、めん等に活用する試みも進んでいるといわれる。

 コメの国内価格は安定しているが、国際価格は急騰している。インド、カンボジア、エジプト、ベトナムなどの主要輸出国の輸出規制やミャンマーのサイクロン被害などが市場価格を押し上げたと言われる。図にあるように3月に673ドル/トンだったタイ産米は、4月には1000ドルを越えてしまった。5月以降1000ドルは割ったがなお高値が続いている。

 世界的な穀物高騰は、アフリカなど途上国各国で抗議デモ、暴動等の騒乱を引き起こした(以下の表に事例)。

世界をおおう食糧騒乱



米国 バイオエタノール需要の増加に伴い、大豆から非食料用のトウモロコシに替える農家が増加。この結果、大豆価格が上昇。また、貧困層の生活苦に拍車がかかる
メキシコ トウモロコシをすりつぶし、薄焼きにした伝統的な主食・トルティーヤの価格が06年8月から半年間で約7割値上げしたため、街頭で数万人規模の抗議デモが行われた
ハイチ 中南米最貧国のため、食糧高騰の影響が庶民を直撃。抗議のデモ隊が警官隊と衝突
エルサルバドル 07年からの1年で小麦とトウモロコシの価格が倍に。その結果、農村でのカロリー摂取量が06年5月時点と比べて4割減少。学校給食が出せない日も増加
ブラジル 草地をエタノール用サトウキビ畑に替え、代替草地を求めてアマゾンの牧畜業者が奥地に入ったため、熱帯雨林の破壊が進む

イタリア パスタの原料のデュラム小麦粉の高騰を受け、消費者団体が07年9月13日、パスタの不買運動を実施した



エジプト パンの価格が急激に上昇。08年4月、北部で暴動が発生し、警官の威嚇射撃の流れ弾が当たった男子中学生ら2人が死亡。首都カイロでも激減した食糧を求めて人々が政府の補助金で運営される公営のパン販売所で安いパンを手に入れるため、長蛇の行列ができ、けんかによる死者も出ている
チュニジア 08年4月、食糧価格の高騰をめぐって民衆が警察官と衝突、20人以上が逮捕される
ケニア* 主食ウガリの材料であるトウモロコシ粉が1年前の1キロ20ケニアシリングがいま32シリング(約54円)に上昇。ナイロビ・キベラ・スラムの小学校で世界食糧計画(WFP)の支援で支給される給食を家族のため持ち帰る児童が増加。ケニア西部、穀倉地帯のエルドレトでは民族衝突や肥料高で自給穀物生産減。
ブルキナファソ* 首都ワガドゥグでは3月、コメ高騰に抗議するデモ参加者が暴徒化。水不足の同国ではコメをインドから輸入していたが、インドが自国のコメ不足・価格高騰で輸出を禁止。
カメルーン* 2月、首都ヤウンデなどで食糧と燃料の値上がりから暴動が起き、少なくとも7人が死亡
コートジボアール* 3月末、2都市で群衆と警官隊が衝突、十数人が負傷。牛肉価格が3日で3割近く上がったのがきっかけという
モーリタニア 食糧の7割を輸入に頼っているため、食糧不足に苦しむ世帯が増加、暴動も発生


アフガニスタン 07年初めから小麦7割高へ
バングラデシュ 07年、コメの価格が7割ほど上昇。貧困層の人たちの食生活に大きな影響。暴動も発生
カンボジア 07年、コメ価格の高騰で輸出業者が近隣諸国に売りすぎていたため、自給自足できていた国内でコメ不足に
フィリピン コメの輸出価格が08年に入って2倍強に高騰。その影響で庶民が安価なコメを求めて行列
インドネシア オイルパーム農園の拡大で熱帯雨林が縮小。また、わずか1カ月で大豆の価格が倍に急騰したため、08年1月から大規模な抗議デモが発生
(注)東京新聞大図解2008.5.4、(*)朝日新聞2008.5.4

(2008年4月3日収録、5月2日更新、5月4日騒乱一覧追加、6月10日更新、6月11日データ出所を農水省からIMFに変更、2008年7/11以後毎月更新、2015年11/9小麦銘柄変更、2018年5月2日データ出所を更新が停止しているIMF一次産品価格データからUNCTADのデータベースに変更、6月7日更新、7月2日更新、大豆かす追加、10月15日更新、11月17日更新、2019年9月16日データベースをIMFに戻して更新、10・31・12/3更新、2020年3/17・4/7・10/4・12/30更新、2021年10月14日更新、2022年4月9日データ出所を更新が停止しているIMFからUNCTADのデータベースに戻して変更、5/11・6/2・7/30・8/13・9/9・10/7更新、2023年2/20・4/29・7/23更新、12月26日データベースをIMFに戻して更新、2024年2/23更新)


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