金、プラチナ(白金)、銀といった貴金属の国際市場価格の推移を田中金属工業のHPから掲げた。

 2023年末から24年当初にかけ1オンス2,000ドルを超える金の史上最高値更新が続いている。

 2020年に入り、新型コロナの感染拡大で世界経済の減速懸念が強まる中、「有事の金買い」が進み、金価格が上昇している。金価格は2020年7月には過去最高を更新し、その後、8月には1オンス1,969ドルまで高騰している。プラチナ価格や銀価格は金価格に比して落ち着いていたが、最近、銀価格も高騰をはじめている。

 5〜6年前には、金をはじめ貴金属価格の低下が目立っていた。世界経済の減速による影響という見方の反面、世界経済の安定化で危機の強い貴金属の価値が低下しているという考え方も。報道によれば、金価格の下落については、こう見られていた。「安全資産とされる金の先物価格が急落している。米景気の改善を見込み、株式などのリスク資産や通貨ドルに投資資金が向かったことに加え、新興国経済の減速や、米金融緩和の縮小観測で商品市場から資金が引き揚げられるとの観測が、下落圧力を強めている」(毎日新聞2013年6月29日)。

 特に2015年に入って金と比べプラチナの値下がりが目立っている。「中国の景気減速などで、使い道の大半を占める工業用の需要が減退。代表的な貴金属の金を下回る価格が続き、貴金属店ではプラチナの「延べ棒」を買い求める個人客が増えている。(中略)独自動車大手フォルクスワーゲンのディーゼル排ガス不正の発覚で、有害物質の浄化に使われるプラチナの需要も減るとの見方から、足もとでは値下がりに拍車がかかっている」(朝日新聞2015年10月3日)。英貴金属製錬大手ジョンソン・マッセイの調査では、2014年のプラチナ需要の6割は工業用で、宝飾用品向けは3割、残りが投資向けだったという(同)。

過去のコメント

(2011年当時の情報断片)

 原油や穀物などの資源価格と同様(原油は図録4714、穀物は図録4710参照)、2006年〜07年から従来にないレベルに価格が上昇し、2008年にピークを見た後、リーマンショックによる世界的な金融危機の勃発により年度後半に急落した。その後、2009年以降に再度上昇傾向にある。金や銀の価格は2008年のピークを大きく上回っている。投機資金の影響に加え、2010年のギリシャ、アイルランドなどヨーロッパの財政危機がユーロの信認をゆるがし、2011年には北アフリカ・中東独裁政権が崩壊過程にあり、米国や欧州の財政危機もあって、貴金属価格の上昇が激しくなっていると思われる。

 金価格は2011年8月には最高値を大きく更新した。過熱していた銀相場は5〜6月には下がったが7〜9月には再度上昇。10月には再度下がった。

 金とプラチナ、銀とでは、価格推移のパターンに違いがある。プラチナはピーク時と比べなお価格が低いのに、金や銀は過去のピーク時の価格を大きく超過しているのである。

 プラチナは宝飾品材料の側面の他、自動車の排気ガス浄化触媒など工業製品材料としての側面が大きいため、価格推移についても原油や穀物と同様のパターンを示していたものと考えられるにに対して、金の場合は、古来より、社会混乱、経済危機に強い価値保持貴金属としての側面が大きいため、リーマンショック後の世界的な経済不況や北アフリカ政変の中で需要が高まっており、価格も高値が維持されているものと考えられる。図からは銀が金よりもさらに変動が激しいこともうかがわれる。

(2009年当時の情報断片)

 世界銀行の総裁が「米国は世界の主要基軸通貨としてのドルの地位を当然視すべきではない」と発言したことが2009年9月27日に報じられ、金の国際決済機能が再度注目される事態が起こり、金価格の上昇が目立つようになった。時事通信の2009.10.7配信によれば「6日のニューヨーク商品取引所(COMEX)の金塊先物相場は、(アラブ諸国と主要国との間で)原油取引の決済をドル以外の通貨や金塊で行うことが検討されているとの報道をきっかけに急騰した。取引の中心となる12月物は、電子取引で一時1オンス=1045.00ドルまで上伸し、昨年3月17日に記録した取引時間中の史上最高値 (1033.90ドル)を約1年7カ月ぶりに塗り替えた」。

(2009年4月2日収録、9/14・10/7・11/10・12/2更新、2010年2/8・4/9・5/13・6/9・8/24・10/8・12/8更新、2011年1/6・3/8・4/8・5/6・6/8・7/8・8/3・9/5・10/4・11/4・12/7更新、2012年1/11・2/3・3/4・4/5・5/7・6/4・7/4・8/3・9/7・10/3・11/5・12/5更新。2013年1/9・2/4・3/4・4/2・5/5・6/4更新、6/29金下落要因報道追加、7/2・8/2・9/4・10/2・11/5・12/3.更新、2014年1/6・2/5・3/5・4/3・5/8・6/4・7/7・8/4・9/7・10/6・11/4・12/3更新、2015年1/6・2/4・3/3・4/3・5/6・6/3・7/5・8/5・9/2更新、10/3プラチナの値下がりコメント、11/3・12/3更新、2016年1/8・2/1・3/2・4/5・5/4・6/2・7/6・8/2・9/2・10/4・11/2・12/1更新、2017年1/6・2/2・3/7・4/3・5/6・6/4・7/4・8/4・12/24更新、2018年11月17日更新、2020年1月7日更新、4月24日更新、10月4日更新、2022年4月18日更新、6月22日更新、2023年4月30日更新、6月21日更新、9月4日更新、2024年2/23・6/29更新)


[ 本図録と関連するコンテンツ ]



関連図録リスト
分野 物価
テーマ  
情報提供 図書案内
アマゾン検索

 

(ここからの購入による紹介料がサイト支援につながります。是非ご協力下さい)