国際共同意識調査であるISSP調査の2009年は格差がテーマとなっている。ここでは、格差是正が政府の責任かどうかについての意識の国際比較をグラフにした。

 格差是正について政府の責任だとする意見が多い国としては、トルコ、ポルトガルやウクライナ、ロシアなど旧ソ連諸国が目立っている。

 逆に政府の責任ではないとする国としては、米国、ニュージーランド、オーストラリアなどアングロサクソン系諸国が目立っている(フィリピンも米国の影響か政府の責任ではないという意見が多い)。また、ノルウェー、スウェーデンなどの北欧諸国や日本もこれに近い意識となっている。

 東アジア諸国の中では、格差が大きい中国では格差是正を政府に求める意見が81.4%最も多く、韓国は75.1%で、これに次ぎ、逆に、台湾、そして日本は、それぞれ、66.4%、54.4%とむしろ英米系諸国に近い意識となっており、かなりの差がある。これらの国における「治国平天下」といった儒教の考え方の共通性より、実際に所得格差が大きいかどうか、また市場経済主義の浸透度合いの影響による差が大きいと考えられる。

 関連して、同じISSP調査が調べた社会保障(高齢者生活維持や医療供給)に対する政府責任については、図録2799参照。また、調査年次は異なるが中国人が格差に対する政府の責任を大きく考える意識が、数十年にわたる社会主義時代の文化やイデオロギーに由来していると見なしている国連の報告書を図録4680で引用したので参照。

 これまでの格差是正や社会保障への政府責任に関するISSP調査の結果を日本についてまとめると次の通り。格差是正や社会保障について日本国民は概して余り国に期待していないことが分る。また、格差是正について、13年間に日本の評価点は0.30→0.46→0.55へと0.25上昇していることも分る。まさにこの時期はリストラ進行期、小泉政権下改革期をはさんだ時期であり、格差についての意識が大きく高まった時期なのである。しかし、世界でも格差への政府責任意識が高まったので日本の順位は余り違いがない。

政府責任かどうかの評価点順位
項目 調査年次 調査国・地域数 評価点の低さの日本順位 評価点(-2〜+2)
日本 対象国計
所得格差是正 1996 26 8 0.30 0.54
高齢者生活維持 1996 26 7 1.28 1.50
医療供給 1996 26 4 1.27 1.54
困窮者向け住宅提供 1996 26 2 0.20 0.92
所得格差是正 1999 27 6 0.46 0.79
高齢者生活維持 2001 30 1 1.02 1.60
子どもの保育 2001 30 11 0.77 0.93
高齢者生活維持 2006 33 3 1.18 1.54
医療供給 2006 33 2 1.12 1.60
所得格差是正 2009 38 9 0.55 0.86
(注)4段階評価(格差解消は「どちらともいえない」を含む5段階評価)を-2〜+2で採点した結果。評価点が高いほど政府責任だとする程度が大きい。
(資料)ISSP調査

 1996年調査における上表4項目を含む全11項目の経済社会対策についての結果については図録5184参照。

 なお、以下には、調査国・地域のすべてを掲げたランキング表を掲げておく。

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(2012年12月3日収録、2015年4月27日政府責任関係ISSP調査まとめ表追加、5月14日1996・1999年調査結果を追加、5月15日ランキング表追加)


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