UNDEP(国連開発計画)によって毎年公表される人間開発報告書は世界の社会経済の健全な発達に関する貴重な情報源であるが、各国のUNDPによって各国版の報告書も定期的ではないが公表されており、その国の状態を示した図表が豊富である。

 「中国人間開発報告書2005」は中国の格差拡大を特集しており、その中で、各国の不平等や格差に対する意識調査(世論調査)の結果を引用しているので転載した。

 日本人は、中国や旧社会主義諸国、そしてヨーロッパ諸国と比べて、自国の不平等はそう大きくはないと感じている。但し、米国やオーストラリア、ニュージーランド、カナダといった欧州以外の英語圏諸国と比べるとやや不平等だと思っている。図録4650に示した実際の所得格差の状況と比較すると、英語圏諸国以外に関しては実態を反映してそう思っており、欧州以外の英語圏諸国に関しては、実態とは逆にそう思っている。さらに、そもそも不平等をよしとするかの意見、あるいは政府の不平等是正責任に関する意識についても、ほぼ、同様の状況を示している。

 ちなみに、資料とした「中国人間開発報告書2005」では、中国の不平等に対する世論について以下のように分析している。

「中国の改革は経済システムを変化させているだけでなく、国民のイデオロギーや平等の概念をも変えている。今日、生まれつきのものにせよ、所得や財産によるものにせよ、個人の能力の役割を評価する人が増えている。また平等な機会から生じる結果としての不平等に関してもそれを認める人が増えている。ここで機会の平等にはある程度公平の原理、及び効率性の原理が含まれている。

 それでは、普通の中国人は、他の諸外国の国民と比べて、どの程度、不平等を認め、また中国の不平等の状況について主観的にどう判断しているのであろうか。図には国際比較を示した。中国のデータは北京で実施された調査結果である。

 明らかに、中国や旧社会主義諸国の人々は、不平等をよしとする比率は低い。これらの諸国では90%以上の人が所得格差が大きすぎると信じている。また80%程度の人が自分たちの政府は所得格差を縮める責任があると見ている。両方の比率ともに欧米諸国に比して高い。こうした意見は数十年にわたる社会主義時代の文化やイデオロギーに由来している。中国の所得分配に関するジニ係数は米国とほぼ同等であるが、65%の米国人しか所得格差が大きすぎると感じていないのに、中国ではその比率は95%にも達している。旧社会主義諸国と比べると、この点に関する政府への中国人の期待は低く、約75%の人しか所得格差の是正に向けての政府の行動に期待をかけていない。しかし、この比率は欧米諸国一般に比して、特に米国に比して高くはなっている。」

 なお、国内の社会的格差と言うより、同じ職場の能力に応じた収入格差に対する意識の国際比較については、図録4675参照。

(2006年2月16日収録)


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