年齢構造による所得格差への影響を取り除いて所得格差の状況を見るためには、年齢層毎の所得格差の状況を調べればよい。そこで、ここでは、家計調査の拡大版である全国消費実態調査により世帯主の年齢階級毎の所得格差の推移をジニ係数を使って図示した。 2019年は全国消費実態調査を引き継いだ全国家計構造調査の等価可処分所得のジニ係数を掲載した。それまでと概念が大きく異なるので時系列変化については十分留意されたい。 結論から言うと、年齢層ごとの格差は、もともとは格差が小さかった若い層では、拡大し、格差が大きかった高齢者層では、むしろ縮小する傾向にある。 高齢者の所得格差縮小は、年金制度の確立など社会保障制度が貢献しているといえる。2009年以降、70歳以上の所得格差が平均を下回った。 若い層における格差拡大は、能力主義的な賃金制度、あるいはニート、フリーター、非正規労働者の拡大などが影響していると考えられる。2004〜09年には40歳代で格差が特に拡大した。2009〜14年には若年層の格差はやや縮小している。 家計調査と異なり全体での所得格差は近年(1999年〜2014年)でも拡大している。基本的には格差の大きな高齢層のシェアが大きくなっているためと考えられるが、格差を測るもととなる年間収入の取り方が、全国消費実態調査では、退職金や資産売却代金を除いているのに対して、家計調査では、そうした但し書きが調査票に記載されておらず、それらが含まれている影響もあると思われる。 図録7357では、同じ全国消費実態査により、都道府県別の所得格差を見た。 年齢階級別の所得のジニ係数の推移については、3年ごとの厚生労働省の「所得再配分調査」からも得られるので、それを以下に示した。上のデータとは税・社会保険料抜きの再配分所得である点、単身世帯を含む点が異なっている。年齢が高くなると所得格差が大きくなる点は共通であるが、30歳未満の格差が大きく、50歳代を上回っている点、総計の格差が低下している点、30歳代を除いて若い世代の格差も拡大していない点などが異なっている。 上の図と同様に、60歳代のジニ係数が低下しなくなったのは、同年代の現役化、すなわち年金受給年齢の上昇に伴ってその年代で年金を受給せず働き続ける者が多くなっている影響であろう(図録1339参照、図録4668参照)。 (2006年2月6日収録、2月9日修正、2010年12月28日更新、2016年10月31日更新、2019年9月12日所得再配分調査結果、2024年1月15日更新)
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